フィールドで天敵と闘った日々

フィールドで天敵と闘った日々

私は、自然の中で写真を撮るのが好きだ。調査をしながら、時間を見つけては珍しい草花や動物の写真を撮りためていた。今日は、久しぶりにタイで調査をしていた時の写真を整理するためにDVDに焼いたファイルを見返していた。写真をみながら思い出したことがある。フィールド調査での苦労だ。今日は、そんなテーマでブログを書いてみる。

どんな調査をしていても苦労はあると思う。また、その苦労があるからこそ成功した時には嬉しさがこみあげ、達成感も一際なのだと思う。私の『ラボ』はオーストラリアのユーカリ林や、マングローブ林にタイのジャングルと野外がメインだった。そのため、コントロールできることは殆どない。私は、鳥の繁殖期の行動を調べるため、巣を探すために歩きまわるのがファーストステップだった。鳥も天敵に見つからないように巣を作るのだから見つけるのは難しい。そのため、知らないうちに上手に尾行するテクニックが身についているかもしれない。因みにジャングルで巣を見つけるのは非常に難しくて8時間歩いて3つ巣が見つかれば万々歳といったスローペースが当たり前だ。

巣が見つかってようやくデータを集めるための準備は整った。しかし、必要なデータを集めるためにはまだまだハードルがある。巣作り、産卵、抱卵、孵化、育雛、巣立ちとすべての過程をフォローすると1か月近く好条件が整っていないといけない。一番ショックなのが、育雛期に入り、もうちょっとで巣立ちだという時期に捕食に合うこと。しかも私は、その捕食の瞬間を目の前で繰り広げられたことが3回ある。1回目は、カササギの夫婦によって仲良く2羽の雛を1羽ずつ食べられてしまったとき。2回目は、ブタオザル。観察をしている私をあざ笑うかのようにこちらを見ながら、巣に飛び移りムシャムシャと卵をおいしそうに頬張った。3回目は、小さめの猛禽類。この時もあっという間に巣に降り立ち、私のデータは食物連鎖の一部となり、振り出しに戻るということを繰り返した。東南アジアは捕食率も高く、巣の進捗を確かめるためにチェックに行くと失敗しているということは頻繁に起きた。

こんなことなら、鳥を飼って研究したほうが良いと思ったが自然の中で調査を行っていると珍しい現象やワクワクすることに出会うのでついつい続けて博士号まで取ってしまった。壁にぶち当たっても、諦めずにコツコツと続けるこの性格は、研究をする時にも役だったが今も役立っている。