小学生男子のなりたい職業で研究者は何位?
実は、ベネッセの総合教育研究所で調査した子どもの進路希望では、小学生男子のなりたい職業ランキングで研究者は4位に入っている
(これは企業も含めているのか、アカデミアだけなのかがわからないが、「技術者エンジニア」という項目もあるから主としてアカデミアの「研究者」のイメージだと思われる)
インキュビーでアカデミア研究者に関する特集を組んだときにこのデータをみて、結構衝撃だった。あ、そんなに人気なんだ、と。いや〜自分の目指していた進路を卑下していたな。そして5年後の調査では上がっている。
しかし、これは男子の話。女子ではランキング外。今でもランキング外。私個人の体験からも(山口県私立の進学校、中高一貫。理系クラスの女子は10名!)同じ理系のクラスで「理学部にいきたい」とか、「研究がしたい」と言う女子は私とあと1人くらいだったかと思う。みんな「薬学部」や「医学部」や「看護・医療系学部」で将来は医療関係で人の役に立つことを目指していた。
実際、田舎の高校生にとって研究者は雲の上の存在だったし、目指そうにも具体的なイメージが持てなかった。私の憧れは「二重らせんの私」を書いた柳澤桂子さんだったのだけど、女性研究者の草分けみたいな人だったので、時代が違いすぎた。。。「大学の先生」以外に職業としてどんな道が存在しているのか(ポスドクとか助教とかややこしいことはきちんとわかっていなかった気が。)見えてなかった。みんなは「医療の現場」で「薬剤師」や「医者」という明確な場所が存在している中で私だけ迷子なような気がした。
ベネッセ教育総合研究所 第2回子ども生活実態基本調査報告書(2009) より
その当時の気持ちや、リバネスのインターンシップで子どもたちと接する中で、私がリバネスに入社したモチベーションは「研究者という夢をもった人をピアニストやスポーツ選手を育てるようにサポートしたい。もっとみんなにどうやってなれるか知られるべきだ」ということだった。
今回、理研のSTAP細胞の発見で研究者の人物像の方をマスコミが過剰報道をしたことで、当人である小保方さんから自粛を求める声明がでていた。スター性を持ちそうなロールモデルの登場は喜ぶべきことだと思うでも今回の発見はあくまでもスタートライン。本当にノーベル賞をとれる研究になるかはこれからだから、小保方さんはびっくりしてしまったのではないだろうか。もうノーベル賞をとったかのような報道ぶり。もう少し人物像の紹介とともに将来の可能性やこれからの課題についてもバランスをもって発信していくことが必要だったと思う。なぜそれができなかったか。研究者という仕事を理解するには、「やっていること」がわからない、ということがやはり大きな課題なのだと今回の報道で改めて認識した。
ピアニストや野球選手なんかと比べたら研究者の成果はわかりにくい。小学生から中学生で研究者のランキングがぐっとさがるのは「小学生までは理科好き(実験好き)」だけど、「中学校に上がると抽象度が増す&なかなか実験ができない」ことが原因により、「理科離れが起こる」とされる、私たちが長年見てきたデータに関連しているのかもしれない。だからこそリバネスは「やっていること」についてきちんと正確に伝えて行きたくて、高校生向けのサイエンスメディア『someone』で最先端の科学を伝えてきているし、マスコミには「かわいさ」「リケジョ」押しで頑張ってもらったとしても、しっかりサイエンスの面白さも、伝えたい。そのように伝えられる人を育てていきたい。
もう一つ、研究者をピアニストや野球選手と同じように育てたい、というには「資金」がついてくることが大事だが、 それについても新しい試みをリバネスは始めている(詳しくは吉田の記事で)。だけど、やっぱり「野球選手」ほどにいたる策にはまだなっていない。(野球選手の相場感がなぜあんなに高いのか詳しくはしらないので「野球選手」ほどにすることがゴールではないとは思うけど。)楽天のまあ君(田中投手)がアメリカに行くお金を聞いてみんな衝撃だったと思う。マスコミは1球あたりの金額を換算してた。もちろん、国際的に活躍しているコンサルタントやビジネスマンだって、なかなかあそこまでの額にはいかないのかもしれないけど、一握りの人が世界に上り詰めることができる職業にしては資金は動いていないのかもしれない。研究は人類の運命を変えるような発見をするかもしれないが、あまりに長期的で不確定なことが多いからだろう。国の資金だけに頼っていては限界だろう、という空気感が何となくみんなの中にある気がしている。これからもっと「資金」の動かし方についていろんなチャレンジがされると思うので、私達もいろいろ実験しながらみなさんに発信していきたいと思う。
今回は原点を振り返ることのできる話題だったので取り上げてみた。