研究費の効率的な使い方を模索するということ

研究費の効率的な使い方を模索するということ

週末のニュースでもSTAP細胞の小保方博士が多く取り上げられていましたが、研究現場に注目が集まっているのでせっかくですから研究者の苦悩についても紹介しておきましょう。

出典は ScienceTalksの宮川剛先生のインタビューより。今回は研究者の効率的な使い方について取り上げていますが、前後の記事に書かれている内容も、研究現場を知るにあたってはイメージを沸かせる題材としてわかりやすいと思いますので是非御覧ください。

第4回  ウィン・ウィン関係を作る、研究費の効率的な使い方

大きな予算を基に、機材を導入した研究室が、その施設を利用する条件をみたす研究者に施設を開放しどんどん使ってもらう仕組みを作って運用しているという話です。

通常、自分の研究室以外の人が施設を使うと研究の進捗が遅くなるという事が考えられるのですが、宮川先生の場合はそこについてある条件を設けることでWin-Winの関係を作ることに成功しています。

施設開放のメリットについて

メリットですが、いろんなマウスが研究室にやってきますが、そうすると要は大量のデータを取ることができます。一種のビッグデータみたいなものになります。共同研究で色々な行動のテストをやりますよね、記憶・学習、社会的行動、そして感情、情動など。それを網羅的に型にはめると大量のデータが取れることになります。大量のデータが取れるとそれはもうひとつの大きな資産になります。まとめて解析できますので。現在では、すでに約10テラ、20テラ分のデータになっていると思います。

宮川先生のラボでは、共同研究によって様々なマウスの分析がなされているのですが、個別の研究内容としてのデータについては共同研究者が宮川先生のラボの施設を使って出して論文にしてもらい、宮川先生側としてはそこで得られたデータをひとまとまりにした大きなデータの塊を解析する事によって新しい知見を得ようというアプローチをする。

こうすることによって、研究費のオーバーヘッド(色んな人が自分の設備でデータを出すのでは、必要なデータに違いがあったとしても実は重なるデータを得ている場合が多くある)を解消することに繋がり、研究時間と研究予算が効率的に使われる事になるのだという。

現在の日本の研究費にある問題点の解決方法の一つとして有効であろうと考えられます。研究も、税金で成されていることが多いのですから、このように生データの共有資産化みたいな取り組みは、あったほうが良いかもしれませんね。

この他にも興味深い記事がありますので、サイエンストークスのサイトをご覧になってみてください。

宮川剛先生インタビュー目次

第1回  日本の研究の仕組みって、ダメだなぁ
第2回  研究をやらなくても問題のない日本
第3回  研究費は増えている、でもその実感が全然ない
第4回  ウィン・ウィン関係を作る、研究費の効率的な使い方
第5回  研究者すごろく
第6回  研究者評価の「見える化」を阻むもの
第7回  評価システムがなければ、フィードバックも起こらない
第8回  科研費はギャンブル
第9回  研究計画ではなく研究者の実績を元に評価する
第10回 「数値がすべて」ではなく、数値「も」評価に入れるべき
第11回  業績なんてない方がいい
第12回  インパクトファクター至上主義の弊害
第13回  高インパクトファクター雑誌至上主義が論文数低下の諸悪の根源