研究の世界のゴーストライター事情について

研究の世界のゴーストライター事情について

彼の人が世間を賑わせています。私自身は、全然知らない人だったのですが、有名な方だったんですね。

「全聾の作曲家」佐村河内守氏、別人が作曲

さて、何かをパブリッシュするという職業にはついてまわるのがゴーストライターです。書籍やこのような記事、脚本、そして音楽と、そのフィールドはいくらでも挙げられると思うのですが、研究者についても「論文」というものがありますので、当然ゴーストライターについてあれこれ出てくる訳です。

2007年:ゴーストライター

結果として、彼の修論は、100%完全に助手さんが作ったものとなりました。

2009年:ゴーストライターに論文を書かせる

論文を書くときに,著者として誰の名前を入れるかに頭を悩ませることがあります。他の人が書いた論文を見ていても,「どう考えてもこの人はこの研究に関係なさそうだけど,偉いから入っているんだろうな。」という例がたまに見られます。論文に貢献していないのに名前を連ねる著者のことを,オノラリーオーサー(honorary author)やギフトオーサー(gift author)と呼ぶのだそうです。

中略

また10年前の研究と比較すると,ゴーストライターは減っていたもののオノラリーオーサーは減っていなかったそうです。最近,「どの著者がどんな貢献をしたのか」を論文の中に具体的に書かなければならない論文誌が増えてきました。オノラリーオーサーは問題視され,対策が練られているということですね。

2010年:製薬会社ワイスのPremproに関する医学論文のゴーストライターについて

ファイザーに買収された製薬会社ワイスは、更年期ホルモン補充療法に使う Prempro を販売しているが、服用により乳がんになったとする患者から訴えられていた。

そして裁判資料などから、ワイス社が DesignWrite 社などの医療広報会社に依頼して、つまりゴーストライターに多額の報酬を支払って、乳がん発症リスクを意図的に矮小化した論文や、骨粗鬆症の予防に役立つなどの承認適応症外使用を推奨する論文まで書かせていたことが発覚した。

危ない研究指導者の害悪

研究指導できないのに研究せよと言って、部下を締め付けるというのは話した通りですが、実はもっとたちの悪い害悪があります。

「自分が研究指導できないので、研究のできる若手に指導させる。ひどい場合にはゴーストライターになれと言う」

Inoue Methods作成者はこれで、修士・博士論文のゴーストライターを強要された人を知っています。今の研究倫理基準からいえば逸脱もいいところ、そして権力をかさにきたパワハラもおまけにつきますね。

研究現場の場合、

  1. 製薬業界における論文のゴーストライティング
  2. どうにもならない学生の論文を周りが創りあげてしまうというゴーストライティング
  3. 共著という形でコミットメントの無い人の名前が入るというパターン
  4. パワハラが絡むもの

が挙げられるようです。

特に1については、問題は深刻で、論文によって薬が売れる訳ですから規制も必要になります。最近ですと国内ではゴーストライティングというよりは、捏造が話題になっています。

2については、研究室内で行われるというものと、調べてみると代筆業者がいるようで、既に商売にしている方も…

3については、オノラリーオーサー(honorary author)やギフトオーサー(gift author)と呼ばれる類。国内海外問わず、議論が成されています。

4については是非もとサイトをご覧になってみてください。→こちらです

今回の佐村河内守氏のようなものは、結果として多額のお金が動くということを考えれば1に挙げられるような歪曲した論文や、ねつ造に近いものとして考えられそうですね。特に、製薬業界が関わることが多い事もあり、動いている金額は桁違いに思えます。論文一本にかかる経費が、作曲のそれとは規模感が違いますね。