研究職として民間企業で働くなら特許資産について抑えておきましょう

研究職として民間企業で働くなら特許資産について抑えておきましょう

理系に進むとやはり自分の専門性を武器に研究職に就きたいと思うものです。私自身は電気電子工学科出身なのですが、学部生時代はやはり電機メーカーへの就職くらいしか視野に入っていませんでした。

当時は、SONYだったり、いわゆる名の知れた企業にばかり目が行っていたのですが、知名度だけに目を奪われていても理想とする職業に就けるはずはありません。

今日紹介するのは、2013年における、日本企業の持つ特許資産ランキングです。出典:Patent Result

以下に主だったものを抜粋。

【自動車メーカー 特許資産規模ランキング】

順位 前年
順位
企業名 特許資産
規模
(pt)
登録
件数
1
1
トヨタ自動車 160,158 5,710
2
2
本田技研工業 89,544 3,478
3
3
日産自動車 54,590 1,815

 

【繊維・紙・パルプ業界 特許資産規模ランキング】

順位 前年
順位
企業名 特許資産
規模
(pt)
登録
件数
1
1
東レ 28,603 824
2
5
クラレ 9,851 268
3
2
東洋紡 9,478 312

 

【ゴム製品業界 特許資産規模ランキング】

順位 前年
順位
企業名 特許資産
規模
(pt)
登録
件数
1
2
ブリヂストン 23,141 1,028
2
1
横浜ゴム 17,521 597
3
3
住友ゴム工業 15,400 469

 

【食品業界 特許資産規模ランキング】

順位 前年
順位
企業名 特許資産
規模
(pt)
登録
件数
1
2
味の素 5,028 133
2
7
日本たばこ産業 4,166 62
3
3
サントリーホールディングス 3,860 78

 

【医薬品 特許資産規模ランキング】

順位 前年
順位
企業名 特許資産
規模
(pt)
登録
件数
1
1
F. HOFFMANN LA ROCHE 7,797 200
2
17
塩野義製薬 7,487 45
3
23
田辺三菱製薬 5,906 41

 

【情報通信 特許資産規模ランキング】

順位 前年
順位
企業名 特許資産
規模
(pt)
登録
件数
1
1
NTT 39,795 1,697
2
2
NTTドコモ 24,841 1,022
3
3
MICROSOFT 18,261 582

 

【化学 特許資産規模ランキング】

順位 前年
順位
企業名 特許資産
規模
(pt)
登録
件数
1
1
富士フイルム 68,474 2,311
2
4
花王 29,709 1,245
3
2
積水化学工業 24,673 453

 

【全業種 特許資産規模ランキング】

順位 前年
順位
企業名 特許資産
規模
(pt)
登録
件数
1
1
パナソニック 275,170 8,094
2
2
東芝 184,305 4,674
3
3
三菱電機 170,790 4,738

 

【大学・研究機関 特許資産の規模ランキング2013】

順位 前年 機関名 特許資産規模 登録件数
1
1
産業技術総合研究所 120,632 9,223
2
2
科学技術振興機構 55,851 3,045
3
8
東北大学 25,638 794
4
4
東京大学 22,444 714
5
3
物質・材料研究機構 20,375 1,599
6
10
東京工業大学 18,273 707
7
7
鉄道総合技術研究所 18,214 1,245
8
5
農業・食品産業技術総合研究機構 15,792 1,176
9
11
名古屋大学 15,348 461
10
16
大阪大学 14,777 510
11
12
岡山大学 14,773 266
12
9
理化学研究所 14,660 726
13
15
九州大学 13,618 339
14
6
慶応義塾 13,015 360
15
18
電力中央研究所 12,204 748

 

1位の産業総合技術研究所は、セラミック向け超微粒子やナノチューブ、有機薄膜材料などの「ナノテクノロジー」分野のほか、遺伝子や微生物、触媒などの分野に多くの特許を保有しています。共同出願の多い企業としては、シャープ、住友電気工業、パナソニックなどがあります。

2位の科学技術振興機構は、遺伝子や有機低分子化合物、材料分析などの分野に強みを持っています。共同出願の多い企業としては、NEC、日油、三井製糖などがありますが、産業総合研究所や物質・材料研究機構など研究機関との共同出願も多く見られます。

3位 東北大学は、カーボンナノチューブや金属ナノワイヤなどのナノテクノロジー分野や、半導体の材料、製造装置関連技術などに強みを持っています。また近年に注目度が大きく上昇している分野としては、デジタルカメラなどに利用されるイメージセンサに関する技術などが挙げられます。

順位を大きく上げた6位の東京工業大学は、画像処理や触媒、有機低分子化合物などの分野に多く登録特許を保有しています。そのほか、災害現場などに用いられるクローラーなどに関して、注目度の高い公報を保有しています。

前年の16位から10位まで6ランクアップした大阪大学は、遺伝子や結晶材料などの分野に多くの登録特許を保有しています。そのほか、有機低分子化合物や触媒などの分野にも注目度の高い特許が見られます。

そのほか、上位15位の大学の中では、名古屋大学、九州大学が前年度に比べて順位を上げています。

各業界の動向はこのような形でした。

さて、業界別に情報を見ていると、大躍進を遂げている組織があることが分かります。各分野の上位及び躍進した企業の技術について以下にまとめました。

  • 三菱電機は「産業ロボットなどに使われる数値制御」や「通信制御」「空調制御装置」「インバータ装置」。
  • 本田技研工業は、「金属・空気二次電池」や「燃料電池車両の通信・制御」など
  • 富士通は「移動通信システムの基地局」など
  • クラスターテクノロジーは「DNAチップや、プロティンチップ等に用いるアモロファスカーボン基材」など
  • トリケミカル研究所は「半導体などに用いるハフニウム系膜を効率良く形成できる技術」など
  • インテリジェント ウェイブは、「コンピュータへの不正監視プログラム」など
  • デジタルデザインは、「データベース利用におけるレスポンスタイムを短縮する技術」など
  • メディネットがは、「患者個人の組織・細胞を材料として培養・加工し、治療する細胞医療」に関する技術
  • 野村マイクロ・サイエンスは、「効率よく有機酸に分解して紫外線照射による電力消費量および処理コストを低減する水処理装置」など
  • ミマキエンジニアリングは「インクジェットプリンタの印刷品質向上」に関する技術など
  • 新コスモス電機は、「ガス検知感度が良好なガスセンサチップ」に関する技術など
  • フクダ電子は、「優れた装着感と防水性を両立した生体電極」に関する技術など
  • 京セラドキュメントソリューションズは「長期間にわたり安定した性能を維持できるプリンタなどの現像装置」や「張り音の発生を抑えつつ速やかな搬送動作を実現する給紙機構」に関する技術など
  • 帝人は、「肌との密着性が良好であり保形性にも優れた下着」や、「ポリ乳酸からなる、強度、耐熱性、耐熱収縮性に優れた繊維」など
  • 日産自動車は「より広い運転領域にわたって空燃比を高精度に制御する技術」に関する技術や「永久磁石型電動機のロータやステータに配設する界磁極用磁石体の製造方法」に関する技術など
  • 日本精工は、「電動モータとコントローラを接続するときの組み付け性を向上させた電動パワーステアリング装置」や、「モータ回転角の検出に異常が発生したときに、操舵トルクに基づいて運転者の意図にあったモータ制御角を連続的に決定する技術」など
  • 旭硝子は「フラットパネルディスプレイなど多数の板状体を平積みした場合でも板状体の品質に影響を与えることなく板状体を収納することができる梱包パレット」や「軟質ポリウレタンフォームよりもバイオマス度が高く、かつフォーム物性および外観が良好な軟質ポリウレタンフォーム」に関する技術など
  • 藤倉ゴム工業は「プリンタやファクシミリのなどの高速化に対応可能な現像ブレード」など
  • 明治は「風味物質が添加されたポーションタイプの表面熟成軟質チーズ」など
  • キリンビールは「積み重ね用機能と、積み重ねた場合の回り止め機能を有するスタッキングボトル」
  • カルピスは「乳酸菌の菌体を有効成分とするT細胞のアポトーシス誘導剤」
  • J-オイルミルズは「油脂加工澱粉」など
  • 大林組は「アクチュエータを保護しながら制振対象物の振動を抑制することが可能な制振装置」や「作業空間における作業員の安全を確実に確保することができる付着物除去方法」に関する技術など
  • 大阪ガスは、「劣化原因ガスによる劣化を回復することができる燃料電池の運転方法」や「導電性と透明性とを両立できるカーボンコイルを用いた導電性組成物」など
  • F. HOFFMANN LA ROCHEは、「細胞間情報伝達分子となる微量生理活性タンパク質に対するヒト抗体の生産、使用方法」に関する技術や、「DNA解析の分野において検出精度を高めるための蛍光信号の結像方法」に関する技術など
  • 塩野義製薬は「服用時の苦味がない、感染性腸炎治療の経口用錠剤」に関する技術など
  • 田辺三菱製薬は「口腔内で速やかな崩壊性を示し、従来の製造設備で生産可能な新規の口腔内速崩壊性錠」など
  • 楽天は、「クレジットカードなどの契約者に対し、カードが使用されたことを迅速に通知するシステム」など
  • ヤフーは、「テレビ番組で紹介されたウェブコンテンツに対して、テレビ番組内で放送された広告と連動した広告を配信する技術」や、「音声検索における音声認識精度の向上」に関する技術など
  • NTTは、「位相変調された光信号を復調する光遅延干渉回路」に関する技術や、「現場での組立作業性に優れた光ファイバコネクタ」に関する技術
  • NTTドコモは、「LTE通信システムにおいて、高精度な干渉推定を考慮し、下りリンクのチャネル品質測定用参照信号を送受信する無線基地局、移動端末装置」に関する技術
  • 米MICROSOFTは幅広い分野への出願が見られますが、「デジタル計算機のユーザインターフェイス」や「計算機間の情報転送」、「TV信号の圧縮,符号化方式」などの分野に強み
  • 新日鉄住金は、「3次元形状の金型の表面を、深く、均一に加工するための技術」や、「めっきの耐食性と、露出した地鉄の保護作用とを連続製造プロセスで両立するめっき鋼板」に関する技術など
  • 住友電気工業は、「機械的特性と耐食性とを兼ね備えたマグネシウム合金部材」や「被膜から酸化アルミニウムの結晶粒が容易に脱落することを防止することにより、優れた耐摩耗性を有する酸化アルミニウム被膜を備えた表面被覆切削工具」に関する技術など
  • JFEスチールは「脱硫処理時に発生した集塵ダストを溶銑の脱硫剤として再利用した脱硫処理方法」や「水底の凹部における水の停滞に起因する青潮の発生や棲息生物の減少を抑制するのに有効な環境改善方法」など
  • コマツは、「ハイブリッド作業車両の製造コスト削減に貢献する技術」や、「機械の異常などを早期に発見できる作業機械の表示装置」に関する技術
  • 三菱重工業は、「潜水艦など水中を走行する乗り物に関し、位置測定の誤差を低減するための技術」や「バイオマスを有効利用してクリーンで高効率なガス化を行うことができるバイオマスのメタノール合成システム」など
  • ダイキン工業は「耐薬品性や燃料低透過性、リサイクル性に優れる燃料用タンク」や「空調機の多翼ファンにおいて、フィルタなどの圧力損失を低減し、十分な風を送ることができる技術」など
  • IHIは、「有価金属を高い濃度で効果的に回収するようにした燃焼設備の金属回収方法」や、「凝縮器に連結されるターボ圧縮機において、騒音を低減させる技術」など
  • 富士フイルムは、「低抵抗化と視野性の向上を両立できるタッチパネル用導電シート」や、「ネットワーク上にアップロードされた複数の画像の中から、被写体に関連する画像群を自動的に分類し、嗜好に応じて複数のユーザ間で共有する画像シェアリング」に関する技術など
  • 花王は「酸素や二酸化炭素、窒素などの各種ガスの透過を抑制するガスバリア用材料」や「トマトやキュウリ、イチゴ、ナスなどの果菜類の増収栽培方法」など
  • 積水化学工業は「車両や住宅内など臭気が問題となる閉空間等で用いられるアクリル系粘着剤」や「利用者に合わせて報知内容を設定できる地震報知装置」に関する技術
  • JSRは、「精度の高いパターンを形成することができるとともに、有機成分の熱分解性に優れ、かつ、焼成後に収縮の少ない感光性樹脂層を有する感光性フィルム」や「耐熱性、耐紫外線性、光透過性に優れ、かつ高い屈折率を有する硬化体が得られるシロキサン系組成物」など
  • パナソニックは、「車両に搭載されたカメラで運転者の顔画像を取得し、運転者の状態を検出する運転者監視装置」に関する技術や、「非接触型ICカードの通信を良好にする通信装置」に関する技術など
  • 東芝は、「書き込みと読み出し間の動作マージンを向上させることが可能な磁気ランダムアクセスメモリ」や「特性や信頼性に優れた不揮発性メモリ」に関する技術など
  • 三菱電機の注目度の高い特許には「環境負荷の少ない、安全で効率的な有害ガス処理装置および水処理装置」や「基板の反りによる影響を低減して、精度を向上した加速度センサ」 など
  • 産業総合技術研究所は、セラミック向け超微粒子やナノチューブ、有機薄膜材料などの「ナノテクノロジー」分野のほか、遺伝子や微生物、触媒などの分野に多くの特許を保有
  • 科学技術振興機構は、遺伝子や有機低分子化合物、材料分析などの分野に強み
  • 東北大学は、カーボンナノチューブや金属ナノワイヤなどのナノテクノロジー分野や、半導体の材料、製造装置関連技術などに強み
  • 東京工業大学は、画像処理や触媒、有機低分子化合物などの分野に多く登録特許を保有