はじめ研究所リアルロボットバトル 優勝の軌跡

はじめ研究所リアルロボットバトル 優勝の軌跡

世界初となる、身長2mヒューマノイドロボットのバトル大会が開かれた。大学、企業などから集まった8つのチームが、最先端の技術を競いあった。頂点を取ったのは、大阪の町工場チーム。その軌跡を追った。

身長2mのロボットが戦ったリアルロボットバトル

ガンダムもマジンガーZもパトレイバーも遠くの未来のことだと思っていたが、案外、大型ロボットを自由に動かせる未来は近いのかもしれない。大学で工学を学び、企業で技術者として働く人々にはアニメに出てきたロボットに憧れた人も多いだろう。2013年末、日本テレビ系で放映された「ロボット日本一決定戦!リアルロボットバトル」では、こうした夢に向けて今の技術を結集するという試みが行われた。この大会は、日本全国から集められた8体のロボットが戦い、最強のリアルロボットを決定するもの。ロボットは身長150cmから200cm、重さ330kg未満という制限がある。各ロボットにはコアと呼ばれるセンサーが10個装着されており、相手より多くコアを破壊すると勝者となる。

壮絶を極めた世界初の戦い

ロボットバトル先進国アメリカでも、無線操縦の2m級ロボットが戦う例はなく、リアルロボットバトルは正真正銘、世界初の挑戦であった。参加チームは大学、高専といった教育・研究機関、大企業、町工場、さらには趣味でバトルロボットを作り続けている個人が参加することとなった。ロボットの特徴を別表にまとめたが、操縦系、駆動系、外装において様々な趣向をこらしたロボットが勢揃いした。優勝したのは、はじめ研究所チーム「HJM-47」。初戦では世界的工業部品メーカーTHKの「柊」と戦う。どちらも着実にパンチを打ち込むタイプで激しい打ち合いとなったが、僅差で破壊コア数が上回り辛勝した。2回戦の相手は東工大ロボット技術研究会の「狐火」。画像解析によるコア自動追尾パンチを持つ狐火は強敵だったが、狐火の動作停止トラブルにより判定勝ちを得た。決勝戦はマルファミリーの「キングカイザーZ」。マルファミリーはキングカイザーシリーズを作り続けているベテランで、キングカイザーZは高い運動性能を持ち、パンチの制御と威力のバランスのとれた対戦相手だ。制限時間いっぱいまで戦った結果、コア破壊数は同数で引き分け。サドンデスへともつれ込み、開始直後に動作がもたついたキングカイザーZに向けて素早く突進したHJM-47が勝利した。

はじめ研究所はなぜ勝利したのか

はじめ研究所のHJM-47の勝因はどこにあったのか。坂本さんは「出るからには勝ちたい。攻撃力、打たれ強い、機動力がある、そして完成していることが大事だと考えた」と後日の取材で明かした。坂本さんたちのチームは普段18mのガンダム作成を夢に掲げ、現在は4mの二足歩行ロボット作成プロジェクトを進行中だ。これまで1m、2m級ロボットを作った時は、町工場は頑丈すぎるくらいに仕上げようとし、それを坂本さんが思い切って軽量化する設計を考える。今回もそういった姿勢の結果か、できあがったロボットは出場チーム中もっとも武器・兵器の原則に則しており、故障が少なく、安定的な攻撃力を有していた。演出家からの「腰を入れてグッと打つパンチが観たい」という要望も取り入れ、モーションが大きくなるような軸配置にもこだわることができた。

そしてガンダムは近づいた

坂本さんは「今回は2m級ロボットを通じて、外装の素材やデザイン、新しいモーターなど様々なテストができた。今後は4m、8m、18mとスケールアップしていきたい」と語る。それぞれの段階の課題はまだわかっていないことばかり。さらに資金の問題も残っている。はじめ研究所では、研究やホビー用に今回のバトルに使った2m級をはじめ、最大4m級二足歩行ロボットを販売している。これらが売れれば、8mの開発費もどうにかなりそう、と坂本さんは言うが一筋縄ではいかないだろう。だが、坂本さんは一向にひるむ気配などなかった。ロボットバトルで得た自信を胸に、夢に燃えるエンジニアがそこにいた。