日本でも活発になってきた創薬のオープンイノベーション/セミナー情報も
アメリカ食品医薬品局(FDA)が新しい薬として認めたもののうち、世の中に出回っている薬とは異なる効き方で治療効果があると認められた新薬の出所をたどると、50%以上が大学やベンチャー企業のものだったと報告されています(Nature Review Drug Discovery 9: 867, 2010)。これは持続性のある新薬開発のエコシステムを考えた時に、新規の薬や創薬技術のシーズを生み出す大学やベンチャー企業の存在意義の大きさを表しているといえるでしょう。
海外ではすでに大手製薬企業である英国グラクソ・スミスクラインや米国イーライ・リリーが、研究者の持つシーズを自社の研究プラットフォームで評価するといったコラボレーションの戦略をとって、成果をあげつつあります。さらに、社外の研究シーズへの投資の仕組みも積極的に運用し、世界中のシーズを取りにいく動きとして現れています。例えば、クラウドソーシング型のオープンイノベーションのプラットフォームとして世界中の研究者が登録しているInnoCentiveは、もとをたどると2001年にイーライ・リリーの社内ベンチャー。こうした世界の動きの中で、日本でも製薬企業の中での閉じた創薬から、社外にシーズを求める動きが活発化してきています。2007年に始まった塩野義製薬株式会社の「シオノギ創薬イノベーションコンペ」、第一三共株式会社の「TaNeDS」、アステラス製薬株式会社の「a-cube」など、製薬企業が大学・研究機関に対して求める研究シーズの公募を出し、日本中に眠っている将来の創薬につながる種を育てる動きが活発化してきています。
こうした動きの中で、さらに新しい取組みを第一三共が先陣を切って開始しています。大学発ベンチャーがシーズをもとにIPOを目指す場合、多額の研究開発費、長期にわたる研究開発期間といった問題は避けることができません。こうした中で、事業が立ち行かなくなる企業も多く存在します。第一三共が始めた新しいオープンイノベーションのプロジェクト、OiDE(Open innovation for the Development of Emerging technologies)は、事業化が見込める研究シーズに対してOiDEファンドが投資を行ない、ベンチャーを立ち上げた後に、第一三共が全面的な研究支援(ノウハウや設備の供与)を、OiDEファンドに参加する三菱UFJキャピタルが経営支援を行ない、シーズを育成するという取組みです。ベンチャーで獲得された成果が目標に達していれば、第一三共が買い取り、事業化していくという仕組みを取っています。IPOを目指すより短期で目標達成の評価や、投資回収ができ、シーズを持つ研究サイド、投資サイド、事業シーズを求める製薬サイドのいずれにもメリットがでるように設計された新しい仕組みと言えるでしょう。これからの展開が注目されます。
4月22日には、OiDEプロジェクトの担当者を招いたセミナーが開催されます。関心のある方はぜひいらして下さい!!
イベント:第2回BioGARAGEセミナー オープンイノベーションの新潮流
日時:4月22日(火)18:30〜20:00(開場18:00)
場所:株式会社リバネス知識創業研究センター(東京都飯田橋下宮比町1-4 飯田橋御幸ビル4階)
定員:50名
参加費:学生・ポスドクは無料/社会人は2,000円(大学スタッフ含む)
講演者:佐野毅氏(第一三共株式会社)、長谷川宏之氏(三菱UFJキャピタル株式会社)、瀬尾秀宗氏(株式会社カイオム・バイオサイエンス創業メンバー、現・東京大学研究員)
スケジュール:
18:00 開場
18:30 開始
18:30-19:30 オープンイノベーションセミナー(講演者:佐野毅氏、長谷川宏之氏、瀬尾秀宗氏)
19:30-20:00 若手研究者プレゼンテーション