博士の底力

博士の底力

実験がうまく行かないときがあるように、キャリアがうまく行かないときだってある。基礎研究を続けて、新しい発見をし、論文を書く人生…それだけじゃない気もする。キャリアの選択は正解なんてないはずだから、自分の道は自分が決める。それが「博士の底力」。進路に対して自分なりの答えを出した今回のナビゲーターは……

ジーンフロンティア株式会社

研究開発部 博士(農学)  村上聡史さん(左)

取締役 最高執行責任者(COO)博士(工学) 海老原隆さん(右)

 

─業務内容を教えてください。

抗体作製や無細胞タンパク質合成キット、バイオ医薬スクリーニングで力を発揮するリボソームディスプレイなど、主力製品の改良と新製品の開発を行っています。

 

─どのような経緯で今のポジションに就いたのですか。

博士課程までは植物由来の酵素の研究をしていました。学位取得後は、先生の紹介で農学部から大学病院に移り、糖尿病の基礎研究をしていました。自分以外にポスドクが一人もいないようなラボにずっといましたので、もっと大きな研究所で働いてみたいと思い、その後、産総研に移ってポスドクをしていました。ポスドクの任期満了に伴い転職し、現在に至ります。テンプさんにはこのときに初めて登録しました。3月末に任期が切れる1月くらいの登録だったので、転職活動をする者としては遅かったかもしれません。しかし、すぐに自分の経験に合うお仕事を紹介され、書類の添削や面接の練習などもしていただきました。企業にエントリーするのは初めてでしたが、どういうところに気をつけるべきかというアドバイスもしてもらえて、安心して臨めた事を覚えています。

 

─いわゆるベンチャー企業でご就業されてみて、どうですか。

これまで3カ所で研究をしてきたのですが、何度か企業との共同研究があり、企業の研究は身近に感じていました。アカデミアに流れる「真理の追究」という意識よりも、スピード重視で期間内に何をどれだけ達成するかといったミッションのほうが自分にあっていたように思います。ですから企業への就職というのは、自分にとっては最もフィットする形でした。この会社以外に知らないので、ベンチャーであることを他の会社と比較できないのですが…(笑)研究を本気でやらせてもらえるということ、また任期を気にせずに思いっきり仕事に没頭できる環境は最高だと思っています。

 

─ご自身の博士の底力って何だと思いますか。

学位取得後、ポスドクではなく実験補助のアルバイトという雇用形態だった時期がありました。コンビニのバイトを掛け持ちしていたポスドクって多くないと思います(笑)。しかしながら、植物ばかりやってきた自分としては、バイトを掛け持ちしてでも別の研究分野の新しい技術や知識を習得する価値はあると思えました。せっかくベンチャー企業にいるのですから、次は経営や営業など他の領域にも、自分ができることからコツコツと携わっていきたいと思います。どんな環境でもベストを尽くすことが出来る、というのが自分の底力なのかもしれません。

 

─ところで、海老原様も学位をお持ちでいらっしゃると伺いました。

はい。ベンチャーの経営に興味があったので、ポスドクから投資会社に転職しました。ビジネスを学んだ後、投資先としてのジーンフロンティアに立ち上げから参画し、転籍して今に至ります。資本提携などのビジネスを率先してやれることってとてもエキサイティングな体験ですよ。

 

─博士からみて、博士の採用で判断しているポイントはどこですか。

コミュニケーション能力と頭の柔軟性を重視します。ベンチャーは特に、社内外とのコミュニケーションがより必要とされることと、日々、色々な問題や新しいことに対して対応していく必要がありますので。あとは前向きな方がいいです。就職活動に限らず…

 

─ありがとうございました。自分で路を拓く博士の姿がここにもありましたね!!

 

インタビュア:テンプスタッフ株式会社 研究開発事業本部 魚津理映 博士(農学)

 

 

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