畜産の経営管理にICTのメスを入れる 平田哲兵

畜産の経営管理にICTのメスを入れる 平田哲兵

雨の日も風の日も365日、家畜と向き合う畜産業において、日々の飼育データを管理し,いかに牧場運営に活かしていくかが経営を左右する。健康状態の把握に役立つ反芻行動の記録用センサーなど畜産分野で活用が進むICT技術を、牧場全体の管理や経営に活かそうと実証試験に取り組んでいるのが琉球大学工学部情報工学科の玉城研究室だ。

畜産の経営管理に活かされるICT

 玉城研究室の平田哲兵氏は、沖縄県多良間島のヤギをモデルとして家畜生産から加工、流通まで統合的な管理を実現する情報管理システム(略称、PINZAシステム)の開発と実証試験を2011年より行っている。その中で先行して開発を進めている家畜生産の分野では、給餌量や体重等の生育情報、泌乳量や乳成分などの個体データをスマートフォンを使って収集し,そこから乳量が見込めたり成長曲線が理想的であったりなど優良な形質をもつ繁殖用の個体を選抜することが可能になっている。このようにして日々の飼育データを牧場運営に活かすことができるのだ。

経営リスクを最小限におさえる

 昨年度は、東京農工大学農学部付属国際家畜感染症防疫研究センターと協動して多良間村のヤギ100頭について病気のスクリーニング検査を行い、個体の行動データと合わせることで感染症リスクのシミュレーションプログラムの開発を行った。このプログラムを使えば、感染症が発生した場合、数理モデルによって、その感染拡大の範囲や速度を予測し、ワクチン投与や隔離・淘汰、また母子感染の疑いがある場合は感染源となる初乳の消毒など早い段階で有効な防除プログラムを組み合わせて実行することができ、経済損失を最小限に抑えることができる。

沖縄の未来を担うPINZAシステム

 「ヤギは乳と肉を生産できるため、乳牛や肉牛、豚の生産でも活用できるプログラムの良いモデルとなります。多良間島でデータベースを作ることで、感染症リスクを抑え、長期的な生産計画を立てられるシステムを構築したい。重要なのは、集めたデータを解析して、膨大なデータの山に隠された経営のヒントを見いだすことだと考えます」と平田氏は語った。地元農家の方々でも活用しやすいプログラム確立するのが当面の研究のゴールであるが、将来的には開発したシステムを沖縄県が開設を進める東南アジア地区最大のデータセンターに導入したいと考えている。沖縄県が情報化する畜産業のアジアの中心地になるのだ。

※本研究は、平成23年度戦略的情報通信研究開発推進制度(SCOPE)の研究課題として採択を受けて行われました。