小さなからだに隠された,精密時計 寺内 一姫

小さなからだに隠された,精密時計 寺内 一姫

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生命科学部 生命情報学科 寺内 一姫 准教授
単元に関係するキーワード 科学と人間生活「生物と光」,生物「生命現象とタンパク質」



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電気のついた部屋にいても夜になれば眠くなり,暗い寝室で寝ていても朝になれば目が覚める。私たちが,外を見なくても朝と夜を認識できるのはからだの中に「体内時計」を持っているからです。顕微鏡を使ってやっと見ることができるほど小さいシアノバクテリアにも,その機能が備わっていることが報告されたのは,1986年のことでした。27億年も前から地球上に存在していたとされる最古の光合成微生物が,どうやって「24時間」を認識しているのか?なぜ体内時計を持つ必要があるのか?そこには大きな謎がいくつもありました。
寺内先生は,体内時計の候補と考えられていたKaiA,KaiB,KaiCという3つのタンパク質を使い,試験管内で再現した体内時計を詳細に調べることで,その秘密のひとつを解き明かしています。これらの物質が体内時計の候補ならば24時間周期で何らかの変化が起こっているはずです。調査の結果,KaiCが,24時間周期でリン酸基を取り込んだり放出したりを繰り返していることがわかりました。さらにKaiAとKaiBはその働きを助けていることもわかりました。たった3つのタンパク質が連携することで起こる化学反応,それが体内時計の元になっていたのです。
では,なぜシアノバクテリアに体内時計が必要なのでしょうか。実は,その理由はまだ明らかにされていません。先生は,昼間に行う「光合成」と夜間に行う「呼吸と窒素固定」を効率よく行うため,体内時計を発達させたのではないかと考え,さらなる研究に挑戦しています。
生命科学部 生命情報学科 寺内 一姫 准教授

Message

シアノバクテリアは小さくて単純な生きものですが,2 7億年以上前から地球に住み,環境の変化に適応しながら進化してきたおもしろい生きものです。その生き残り戦略のひとつが体内時計なのかもしれません。生命はとてもふしぎで,研究を通してどんどん新しいことがわかっていきます。それを自分の目で見ることができるなんて幸せですよね。