日本で唯一の自動車ベンチャー!科学者とともに世界をアップデートする自動車を創りたい

日本で唯一の自動車ベンチャー!科学者とともに世界をアップデートする自動車を創りたい

2万点以上の精密な部品で構成される自動車は「世の中の技術の 全てが関わっている」と言われる日本の代表的な基盤産業だ。だが一方で、自動車業界の産業構造は硬直化しており、新しいベン チャー企業が生まれづらい環境がある。そんな中で大手メーカー各社とともに共同研究を進めながら、積極的にオープン・イノベーションを推進する、新しい自動車づくりのかたちをつくっているの がAZAPA株式会社だ。

さらなる進化のために科学者との連携を推 進する狙いと夢を代表取締役社長の近藤康弘さんが語る。

 

100655-003

AZAPA株式会社 代表取締役社長 & CEO 近藤 康弘さん

|近藤 康弘 さん プロフィール|
2008年7月AZAPA株式会社設立。情報と自動車の2つの分野で先端技術に携わることで、多角的な技術領域と共感力を持つ。 現在、産学連携やオープンイノベーションなどを牽引する国家プロジェクトにも属し、こどもの教育や成長支援、平和的活動にも熱心に取り組む。

第21回リバネス研究費 AZAPA賞

 

 

日本で唯一の 自動車ベンチャー

「自動車のベンチャーって珍しいで しょ?」と笑う近藤さんがAZAPA株式会社を設立したのは2008年。元々トヨ タ自動車株式会社でエンジン制御シミュ レーションを一手に担うエンジニアだっ た彼は、同社では欠かせない存在だった。自動車業界は自前主義に対する意識が強 く、その心臓部と言われるエンジンは各 メーカーにとって秘中の秘とされる。そ の結果、外部との連携には消極的になっ てしまった業界にイノベーションを起こ したい、との想いから、数人の仲間とと もに起業した。AZAPA株式会社はエン ジン制御理論や、発生するエネルギーを タイヤに伝えるためのパワートレーンと呼ばれる機構など、「エンジンがわかる」 という極めて明快かつシンプルな強みを もとに、自動車制御を実現することがで きる唯一のベンチャー企業として、存在 感を放っている。

「高度な技術力と、豊 かな発想力で平和と豊かさに貢献する」 という理念のもとで研究開発を推進し、 現在では社内の60%以上が修士号を保 持。博士率も18%と高い専門性を持つ 技術者集団へと成長している。

 

SF世界を実現したい

「人工知能つき自動車とか、SFや特撮映画に出てくる未来の車をかたちにする ことが目標です」と真剣に語る近藤さ ん。人体や運動の解析に強みを持つ、東 京大学発のベンチャー企業、株式会社ジースポートとのコラボレーションがその本気度を表している。両社が共同で研 究開発している「“バイオ・コネクテッ ドデバイス”によるクルマの協調制御システム」では、搭載したウェアラブル端末によって、ドライバーの運転時の行動やストレスを計測することができる。例 えば、運転の荒いドライバーと判断でき るようなデータが集まれば、危険区域で の走行を自動車側から制限することも可能となるのだ。このシステムの実用化が 進めば、従来の「人が自動車を制御する」 という考え方に加えて、ドライバーの特性によって、「自動車が人にフィットす る」というイノベーションが起こるだろ うと、近藤さんは考えている。「既に世の中にあるイメージを取り払って、自動車の未来ってこうなるんじゃないかって 想像するだけでわくわくしますよね」。

 

エンジンがわからないと、業界にイノベーションは起こせない

視線情報や脈拍、脳波など、生体情報 と連携する自動車のアイデアを実現する には、センシングしたデータから人の行 動やストレスを定義する必要があり、ヘ ルスケアや心理学に関する専門性が不可欠である。しかし、忘れがちなのが、そ れらの入力情報に対し、「どのように車を動かすか」という部分での専門性だ。 そもそも自動車を動かすためには、エンジンにおける燃料と空気の圧縮や着火タ イミングをはじめ、非常に多くのノウハ ウ・技術が詰め込まれており、その情報は実際にそれを扱っている業界の専門家 しか持っていない。制御のエキスパート が集まり、小回りが利く同社と組むから こそ、この業界にこれまで参入できな かった外部の専門家が、新しいテーマを切り開くことができるのだ。同社では、自らの制御技術と様々な外部の専門家と 連携することで、ドライバー個々人の特徴に合った、車両制御を実現しようとし ている。

 

サイエンスと自動車の 融合を目指して

2014年9月1日、AZAPA株式会社はオープン・イノベーションに対する取り組みをさらに発展させるため、「リバネ ス研究費AZAPA賞」を設置した。テー マは、「次世代モビリティに関する研究」 だ。近藤さんが申請者に期待するのは、科学者の自由な発想だという。プロダク トとしての実現性から逆算をしてプロ ジェクトを設計するエンジニアからは出 てこない「純粋な問いから生まれるアプ ローチ」が求められる。「サイエンスとは考えること、テクノロジーとは実現すること」と両者の違いを彼はこう表す。科学者の考え抜かれた発想を繋ぎ、実現するための技術と人が同社にはそろって いる。 「募集テーマは制御技術に留めるつも りはありません。僕らは日本中の自動車 メーカーともつながっています。だからこそ、自動車という極めてすそ野の広い 産業におけるあらゆるチャレンジを実際 に進めることができる。自動車に関わる あらゆる研究アイデアを待っています」。 未来の自動車を創りだすパートナーとしての知恵を、近藤さんは科学者に求めて いる。

 

第21回リバネス研究費 AZAPA賞