次世代デバイスのディープ・データで、私たちが唸るような研究アイデアを

次世代デバイスのディープ・データで、私たちが唸るような研究アイデアを

「JINS PC」など常識を覆すメガネで新市場を開拓してきた株式会社ジェイアイエヌが今年5月、眼電位の情報から「自分を見る」ことができるウェアラブルデバイス「JINS MEME(ジンズ・ミーム)」を発表した。そしてこの11月、取得したローデータを研究者に提供する「JINS MEME ACADEMIC PACK(アカデミックパック)」の発表と同時に、JINS MEMEの持つ可能性を引出し、より社会に役立つウェアラブルへと発展させるため、リバネスと連携した研究者向けの助成制度「JINS MEME ACADEMIC AWARDS」も設置された。企業が組織の外にデータを提供する、珍しいこのチャレンジは研究者にとって何を意味するのか?JINS MEME公式ホームページ:https://www.jins-jp.com/jinsmeme/

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株式会社ジェイアイエヌ 代表取締役社長 田中 仁(たなか ひとし)さん/高校卒業後、前橋信用金庫(のちの しののめ信用金庫)、雑貨メーカーを経て、1988年、有限会社ジェイアイエヌを設立。2001年より「JINS」をスタート。2006年大証ヘラクレス(現JASDAQ)へ上場。2009年、レンズの追加料金0円の「NEWオールインワンプライス」を導入。次いで「Air frame」で軽量メガネ市場を創出。2011年「JINS PC」を発売、2013年には東京証券取引所第一部に上場を果たす。


丸 幸弘(まる ゆきひろ)/東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程修了。博士(農学)。 リバネスを理工系大学生、大学院生のみで2002年に設立。日本初の民間起業による科学実験教室を中心に200以上のプロジェク トを同時進行させるほか、2012年12月に東証マザーズに上場した株式会社ユーグレナをはじめ、15社以上のベンチャーの立ち上げに関わる。株式会社リバネス 代表取締役CEO

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「自分を見る」世界初のメガネ
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: 今回のJINS MEMEは大きなチャレンジですよね。最近、色々なところでバズワードになっている「ウェアラブル」とか「IoT (Internet of Things)」という分野で、多くの家電メーカーを飛び越えて、メガネメーカーとして製品をリリースした。まずはどういう製品かお話いただけますか?

田中:JINS MEMEは、眼電位センサーを通じて眼球の動きやまばたきの情報を取得し、内蔵した通信機能によってスマートフォン等のアプリと連動させ、眠気など、これまで測ることのできなかった自分の内側に関する情報を可視化することができるセンシング・アイウエアです。

:実際にはどんな技術が使われているんですか?

田中:眉間部分と両方の鼻パッドの3点に眼電位センサーがついています。これまでの眼電位センシング技術は4点式が主流で、計測には大掛かりな装置が必要でしたが、この「三点式眼電位センサー」により、眼電位が簡単に、そして自然に計測できるようになりました。さらに六軸(加速度・ジャイロ)センサーも搭載しています。

:同じようなメガネ型デバイスとして、多くの人がGoogle Glassをイメージすると思いますが、コンセプトが根本的に違いますよね。

田中:そのとおりです。メガネを表示デバイスとして使うのではなく、インプットデバイスとして使う点で異なります。また、メガネ以外にも、世の中で今注目されているウェアラブルの多くは、それ専用のデバイスをわざわざ身につけなければならない上に、ログが取れるだけ。私たちが作りたかったのは、普通にかけられて、データのログだけではない、一歩進んだ情報を手に入れられるデバイスです。複数の大学との共同研究により、眼電位というデータから有益な情報を抽出し、提供できるようになりました。例えば眼電位の波形から、オフィス作業時の疲れや集中度を可視化したり、ドライブ時の運転サポート技術として眠気を測ったり。だからこそ私たちはJINS MEMEから取得できる情報を「ビッグ・データ」ではなく「ディープ・データ」と呼んでいます。まさに、「自分を見る」という世界初のアイウエアを生み出すことができたのです。

研究者との連携でメガネに圧倒的なアイデアをもたらしたい

:どういうきっかけでこの製品が生まれたんですか?

田中:4年半ほど前に、ある大学の教授から東北大学加齢医学研究所の川島隆太先生を紹介いただいたのです。定期的にディスカッションしていく中で川島先生から眼電位の話を伺い、そこから3点式で眼電位を検出できる技術開発が始まりました。

:今回発表した「アカデミックパック」は眼電位のローデータを開放する内容ですよね?

田中:はい。実は、ローデータを研究者に開放しようというアイデアも川島先生からいただいたものです。研究者から話を聞いていると、ローデータを見たいという方が非常に多く、それならば、研究者に限定した上でローデータを開放するのがよいだろうと結論づけました。学術研究用に限定した上で、JINS MEMEでセンシングしたローデータを有償で提供します。

:ローデータをもらえるなら、研究者は論文が書けますからね。最近では研究者も論文を書くネタ集めに苦労しています。だからこそ、研究者はみんな企業が持つオープンになっていないデータに触れたいと思うのですが、企業にとっても最重要機密ですから、それにリーチするのは非常に難しい。オープンイノベーションがトレンドになっている研究開発の世界でも、画期的なアプローチですよね。でも企業としての重要なローデータを公開することに抵抗はなかったんですか?

田中:当社としては、抵抗はありません。なぜなら、身元の知れた研究者に限り公開するわけですから。我々が目指すのは、世界中のメガネをほしがる人に「JINSでないと」、といってもらえるようになることです。そのために、700年の間、機能があまり変わらないメガネの常識をひっくり返すくらい、圧倒的なアイデアを日々追求しています。JINS MEMEに関しても、社会問題に貢献できるオフィシャルアプリは当社でも開発していますが、我々は「研究」の世界ではプロではありません。だからこそ研究者の方々には、我々が「そうきたか」と唸るようなアイデアを期待しています。

:僕もメガネをかけることがあるのですが、JINS MEMEはかけるのに違和感がない、これまでの生活にとけ込む感じがとてもいいですよね。その上で様々な情報を取得できる。例えば、JINS MEMEをかけた状態の眼電位をセンシングして、目で見た情報とその時の感情をリンクできないか、とか合コンで全員がJINS MEMEをかけて、対面した段階でお互いの好みをマッチングできないかとか(笑)学校の先生も授業評価などで興味を持つ方も多いと思います。工学部の研究者は、JINS MEMEと何かを組み合わせて活用する研究などに興味があるでしょう。もちろん、医学系の研究者は生体との関係を研究したいでしょうね。

田中:おかげさまで、5月の発表以降、国内外の様々な方からお問い合わせをいただいていて、研究者の方からも問い合わせを受けることが多いのです。発表に先立って、すでに芝浦工業大学の加納先生や、慶應義塾大学の稲見先生、橋本先生とも共同研究を進めており、今後はAPIを公開し、そこから様々なアプリが開発されるようになることで、広く一般の方々にご活用いただけるデバイスにしていく予定です。基礎研究を行う研究所を持たないJINSが、研究者と深いレベルで連携することで、目の情報のプラットフォームになる。大きなチャレンジです。

「目は口よりもモノを言う」世界をつくる

:研究について全く専門外なのに、田中さんはいろんな研究者の人脈をもっていますね。研究者と仲良くできる秘訣があるんですか。

田中:確かに畑違いではあるのですが、私は自分にない能力をもっている人に魅力を感じます。先ほどお話したように、足を運んで研究者と実現したいビジョンを語っているうちに仲良くなってしまうのです。

:とてもおもしろいですね。多くの企業が産学連携をうまくできずに画期的な製品を作れないでいる中で、これまで、田中さんは「JINS PC」や「JINS MEME」など研究者と連携して次々と新しい役割をもった製品を開発しています。世界を変えるような発見・発明に興味があるのが研究者ですから、一緒にやりたくなるんでしょうね。

田中:世界中の人がJINSのメガネをかけてくれるようになるためには、これまでメガネをかけてこなかった方々がメガネによってできるようになることがあればいいな、と思っています。そのためには、視力が悪くない人にもかけてもらえるJINS PCしかり、これまでにないメガネを提案し続けなければならない。だからこそ、我々が持たないものを持っている、研究者やクリエイターとコラボレーションが必要不可欠なのです。

: このプロジェクトを通して、研究者がもっといろんな知恵を重ねていくことで新しいメガネとの付き合い方をする世の中ができる。みんなでその考え方をつくっていくところに、研究者の参加が求められているんですね。

田中:目は口ほどにものをいう、とよく言うように、目を通してわかることはものすごくたくさんあるのです。JINS MEMEが今後目の情報のプラットフォームになっていけたら、当社は今までにない新しい企業になる、と確信しています。

:私たちも数多く産学連携を支援していますが、研究者の専門用語を企業の方にもわかるように伝え、企業のビジョンを引き出して研究者に理解してもらえると、初めてうまくいく。ぜひ、今回のJINS MEME ACADEMIC AWARDSを通じて、多くの研究者にJINSの目指す世界観を共有し、世界を変えていきたいですね。

第24回リバネス研究費 JINS MEME ACADEMIC AWARDSの詳細はこちら

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