橋の安全を守る技術に研究者の新しい知恵を

橋の安全を守る技術に研究者の新しい知恵を

日本橋梁工業株式会社 営業部部長

中村 博 (なかむら ひろし)さん

 

日本橋梁工業株式会社は、道路橋梁用の補材、伸縮継手 ( ジョイント ) の開発や販売、施工を行う会社だ。 ゴムと鋼板の組み合わせでできる同社の製品は、使われ始めて約 30 年。一緒に更に機能性を高めたジョ イントに進化させ、世の中に送り出してくれる研究者を同社営業部長の中村博さんは求めている。

橋の安全を守るジョイント

日本の全国各地に張り巡らされている 道路橋。この道路橋が鉄道の線路と同じ く、伸び縮みすることをご存じだろうか。 道路橋も線路と同様、気温が高くなれば 膨張し、低くなれば縮小する性質を持つ。 そのため一般道の上部を通過する高速道 路や、橋梁には線路と同じく隙間があい ている。この隙間によって伸縮の影響か ら道路が損壊することを防いでいるのだ。 しかし、隙間をあけるだけでは、歩行者 や自動車がその隙間に足を取られ、事故 に繋がる可能性が出てくる。道路の伸縮 性を受けとめ、さらに上を歩行者や自動 車が通行する際の荷重を支持する隙間の 補材、ジョイントをつくるのが日本橋梁 工業株式会社である。これまでに、首都 高速道路などの高速道路や、東京港連絡 橋、いわゆるレインボーブリッジのジョ イント部分を手掛けた、日本でも 20 社ほ どしかない数少ない会社の1つだ。

ゴムと鋼板が分かれて可能になること

ジョイントはゴムでできた伸縮部分 と、荷重に耐える鋼板の部分に大きく二 分される。同社の製品の他社との違い は、この組み合わせの構造の違いにある と中村さんは言う。「他社でも同じ伸縮 のゴムジョイントはありますが、ゴムの 中に荷重を支持する鋼板が内包され一体 化しています。弊社ではこの部分がゴム と鋼板とで分かれているのです」。分離 されることによる利点は 2 点ある。1 点 目はジョイントの寿命を延ばせること。他社の製品では荷重支持板である鋼板は ゴムに包まれているが、その厚さは 3 ~ 5mm 程度しかない。車が橋のジョイン ト部を通過する際に、タイヤに擦られて ゴムは次第に摩耗し、鋼板が外部に露出 することになる。露出した鋼板は雨に降 られると錆びるため、ジョイント部分の 寿命が短くなるのだ。同社の製品は、ゴ ムと鋼板が分かれた構造であるため、ゴ ムが厚く、長寿命が期待できるという。 2 点目の利点は設置作業を軽減できるこ と。ジョイントはサイズによって重さが 違い、最小で 50kg 程度、最大で 200kg を超えるものもある。他社の場合と比べ てゴム部分と鋼板が別々に分けることが でき、作業的に一度に重いものを設置し なくても済むため、 負担が減るのだ。女性が現場に出ること も珍しくない現代。 設置の際の負担軽減 は重要な利点の1つになる。

ジョイントの再発明を求めて

優れた点を持つ 同社のジョイントだ が、中村さんはジョ イント自体がこの 30 年間に大きな変化が ないことを気にして いると言う。そこで 現在、ジョイントに 関して研究者との新 しい出会いを求めている。中村さんが特に興味を持っている のが、ゴムの摩耗と、荷重支持板の新素 材だ。現在、使用するゴムは耐年数20 年。ジョイントに使用するゴム耐年数は 長ければ長いほど良い。耐年数が長けれ ば、ランニングコストの軽減に繋がるか らだ。耐年数は発注の参考材料になる可 能性があるという。また荷重支持板の新 素材についても挑戦的だ。「現在の荷重 支持板の材料は鋼板だが、同強度の新素 材はないだろうか。そうすればより軽く なり作業性も増す」。単に材料の話だけ ではなく、研究できれば橋の構造を変え るかもしれない開発に繋がりそうだ。皆 さんの研究の成果を求めている町工場が ここにある。 (文 南場敬志)

中村 博さんプロフィール

同社は昭和 53 年より道路橋梁用の伸縮継手 ( ジョイント ) の 製造販売、施工を行っている。平成 8 年入社以来「手間をかけ なければ、いい仕事はできない」同社代表の言葉を胸に、首都 高速、阪神高速などのジョイント事業に携わってきた。ただ製品を販売するだけではなく、工事が完了するまでが仕事と捉 え、日々真摯に仕事と向き合う。

 

*アイデアのある方は http://eng-ga.com/contact までお問い合わせください。