【イベントレポ】社会に求められる博士人材ってなんだ!?

【イベントレポ】社会に求められる博士人材ってなんだ!?

第2回incu・beセミナー〜エッジ人材としての博士活用について考える〜イベントレポート

今回のレポーター、鷲見卓也です。現在、上智大学理工学研究科で博士後期課程2年に在籍している私も、そろそろ就活の二文字が脳裏にちらつくお年頃。果たして自分は博士課程での経験を企業で活かし、社会に求められる人材になれるのか、そんなことを自問自答しています。今回は、そのヒントを求めて『incu・beセミナー 〜エッジ人材としての博士活用について考える〜』にお邪魔しました。博士人材を登用している企業の方や人材活用について研究している人の話が聞けるらしい。3人の登壇者からヒントを得て、社会で博士を活かす方法をお届けします!

博士よ突き抜けろ

日本たばこ産業株式会社 人事部 次長 黒木豊さん

p12_kuroki-san「博士だからといって扱いづらいとは思わないし、特別扱いもしない。学部卒でも修士卒でも、博士卒でも入社時は同じゼロからのスタート」。日本たばこ産業株式会社の黒木豊さんは博士人材の可能性について語ってくれました。農学博士でありながら人事を担当する黒木さんは、年間2000人以上の学生と交流して気づきを与える日々を送っています。そんな彼は博士人材に期待するものを「ある分野で突き抜けた経験」と表現し、ある分野を極めた経験を持っていれば、他の分野、場所でも世界一になるための努力ができる、と言う持論を披露しました。博士号が自分の評価を高めてくれるんじゃない。博士号を目指す過程でこの分野で突き抜けるつもりで自分を高めようと強く想うことが何より大事だということ、結局、未来は今の研究経験の先にあるということに気づかされました。

「青黒い」人材になろう!

株式会社リクルートホールディングス
リクルートワークス研究所 主幹研究員 豊田義博さん

株式会社リクルートホールディングス リクルートワークス研究所 主幹研究員 豊田義博さん「イノベーションに必要なのは青黒さ」。豊田義博さんはイノベーションが起きる組織づくりの視点から博士人材を活かした企業の有り方について話してくれました。青黒さとは、商品やサービスが社会にもたらす変化を熱く語る「青臭さ」と、その思いを巧みにビジネスにつなげる「腹黒さ」を合わせた造語で、この両方を併せ持つ人材が社会で求められている博士ではないか、というのが豊田さんの主張です。そして、そんな個人を盛り立てる「師」や、「庇護者」、共に戦う「同士」に出会うこともイノベーションに欠かせない、という近年のイノベーション研究の結果もお話いただきました。個人として成長するだけでなく、しっかりと仲間を惹きつけることが重要なんですね。これは一人で研究することも多い博士が意識しづらい点かもしれません。

研究経験そのものに価値がある

株式会社リバネス 代表取締役社長COO 高橋修一郎

株式会社リバネス 代表取締役社長COO 高橋修一郎「研究ができる人間はビジネスでも活躍できる」と語ったのは社員の6割を博士が占めるリバネスの高橋修一郎さん。ビジネス経験ゼロでも、「1人1人に極めたいテーマがある」というリバネスでは、自らが持つ社会の課題を、科学技術の知識を武器に、どうビジネスとして成立させ、持続可能なかたちで解決していくかにチャレンジしています。「すべてのイノベーションは個人のQuestionから始まる」という考え方は、研究に取り組む過程と共通しています。だからこそ、「研究者の経験そのものがビジネスをする上でも価値になる」というのです。「博士号取得はスタートライン。博士だからといってメリットは特にない。必要なのはその後に無限に広がるフィールドに挑む覚悟」。ビジネスは夢や理想を具現化する手段の一つであり、その上で自分は何をするかを考え続けることが重要なんですね。

●むすびにかえて

sumi“博士人材”が求められている場所は確かにあるけれども、博士号を取ったからといって自分がそこで活躍できるとは限らない。自身をレベルアップさせられる博士課程というチャンスをどう活用するかを考えながら日々の研究に打ち込んでいくことが、私たち未来の“博士人材”に求められていると感じました。

社会における自分の活かし方を考える上で、こうやって社会で活躍している人の意見に触れる機会を持つこと、皆さんにもおススメします!

著者:鷲見卓也
上智大学理工学研究科博士後期課程2年