気持ちだけでは起きられない!「ヒト」それぞれの眠りのリズム 肥田 昌子

気持ちだけでは起きられない!「ヒト」それぞれの眠りのリズム 肥田 昌子

眠る事は好きですか?

すべての動物は眠ります。人は,1日のおよそ4分の1にあたる時間をつまり,人生の4分の1を眠って過ごしているのです。あたたかい布団の中でぬくぬくと過ごす幸せなとき。そんな時間をもっと大事にするために「眠り」について考えてみませんか。

突然ですが,みなさんに質問です。小学生の頃に比べて,朝早く起きるのがつらくなってきたな……と感じる人はいませんか? もしそうだとしたら,それは気のせいではありません。じつは,高校生にあたる10代後半が「生物的に最も夜型化している」時期なのだそうです。いったい,どういうことなのでしょうか。

学年が上がるにつれて夜型化する高校生

朝起きて,昼間活動して,夜に寝る。私たちのからだには,朝・昼・夜のくり返しを感知して,一定のリズムを刻むしくみ「体内時計」があります。ヒトのからだを構成する約40兆個の細胞ひとつひとつに時計が備わっており,そのすべてが,脳の視床下部にある「視交叉上核」内の細胞にある「親時計」から出る信号によって時刻合わせをしています。朝起きて光を浴びると,目から入った光のシグナルが「親時計」に届いてリズムが調整されます。さらに「親時計」の信号が各細胞の時計に行き渡り,からだ全体で一定のリズムを刻むようになるのです。

P07_wakeupじつは,体内時計がつくるヒトの生体リズムは,年齢を重ねるごとに変化していくことが知られています。たとえば,個人の寝起きのタイミング—眠くなる時刻や目覚める時刻(朝型・夜型)も変化します。生まれてからどんどん夜型化していき,20歳頃をピークにその後は少しずつ朝型に戻っていくのです。お年寄りに早寝早起きの方が多いことにもうなずけますね。高校生は,生物的に最も夜型になっている年代にもかかわらず,学校の始業時間が早いというギャップがあり,朝起きるのが一番つらい時期ともいえるのです。

体内時計の周期を知るには?

とはいえ,同じ年代でも朝型の人がいたり夜型の人がいたりします。このように「体内時計には個人差があります」と話すのは,国立精神・神経医療研究センターの肥田昌子さん。

体内時計のリズム(周期の長さ)が,朝型か夜型かを決めています。周期が長いと夜型,短いと朝型になる傾向があります。つまり,自分の体内時計の周期に合わせた生活をしているときが,最も健康状態がよいときだといえます。これまで,ヒトの体内時計の周期を正確に知るためには,体内時計をコントロールする作用のある血液中のホルモン「メラトニン」の濃度を測る方法が用いられてきました。ただ,この方法では24時間にわたって採血をする必要があるなど,大きな負担がかかるのです。

しかし,肥田さんらが開発した方法なら,体内時計の周期をもっと簡便に調べられるようになるかもしれません。まず,周期を調べたい人から皮膚切片を少しだけ採取し,細胞を培養します。培養した細胞に,体内時計の周期に合わせて発光する遺伝子を導入し,その発光シグナルを分析すれば,その人の皮膚由来の細胞がもつ時計の周期を調べることができるのです。この方法を使って被験者17人の体内時計の周期を調べてみると,22時間の人もいれば25時間の人もいて,大きな差があることがわかりました。また,被験者の実際の生活リズムと比較したところ,時計の周期が短い人は朝型傾向が強く,周期が長い人は夜型傾向が強いという相関が見られました。

気持ちだけでは起きられない!

最初の質問で「朝起きるのがつらくなってきた」と答えたあなたのからだは,夜型なのかもしれません。肥田さんは,「みんなそれぞれ,自分に特有の体内時計があることを知ってほしい」と話します。「意思が弱いから朝起きられない」というのは,すべての人に当てはまるわけではないのです。

そうは言っても,毎日,朝はやってきます。自分の時計のリズムを知ったうえで,それでも「朝すっきり起きたい!」という人は,次のことを試してみましょう。朝,起きたら光を浴びること。夜は逆に,浴びる光を少なくすること。光は,からだの時計をリセットしてくれます。

さあ,明日も遅刻しないように早起きしましょう! (文・吉田 拓実)