宇宙に生命体はいるのか?〜東京大学の関根康人先生の研究結果が発表されました

以前ビクセン主催リバネス企画で行った

教員向け研修会「宇宙を見上げて授業をしよう」にてご講演いただいた東大の関根康人先生の最新の研究結果が発表されました。取材当時も木星だけではなく、惑星の氷衛星についてお話をしていただきました。今回その成果の発表です。

活動の概要はコチラ

以下に当時の取材記事を掲載します。


木星を見上げて授業をしよう

木星の衛星に生命体はいるか!?

秋から冬にかけて、夜空を見上げると黄色く明るく輝く木星が見えます。天体望遠鏡でのぞいてみると観察できる、木星の周りをまわる4つの小さな衛星(ガリレオ衛星)の一つ「エウロパ」は生命の存在が期待され、研究が進められています。

氷の大地と水の海

地球の約318倍もの巨大な質量をもつ木星は60以上の衛星を従えています。それぞれの衛星は木星からの距離で重力や磁場など様々な影響を受け、異なる環境をもっています。ガリレオ衛星の中でも2番目に木星から遠いエウロパは主に岩石でできていますが、表面付近は水の氷に覆われ、青白く輝いています。一方、内部では木星や他の衛星の重力を受け氷の大地が潮汐を起こし、摩擦による熱エネルギーが生まれています。この熱により、氷の一部が解け氷の下に水を主成分とする海が存在していることが1995年に開始したガリレオ探査機の調査で明らかになりました。液体の水と熱エネルギーの存在は、生命を生むきっかけとなる化学反応の進行に重要なため、エウロパの海には生命存在の期待が高まっています。実際にエウロパの海には生命の源となる物質は存在しているのか。これが次なる研究です。

エウロパに生命の源は存在するか?

エウロパが誕生したころ、岩石や氷からなるたくさんの小天体が衝突しました。小天体には、有機物を作る上で欠かせない炭素の源であるメタノールの氷も含まれています。衝突した際にメタノールが分解せずに残れば、海に溶け、炭素が生命の前駆物質として使われる可能性が高まります。一方で、衝突の衝撃が大きいと一酸化炭素と水
素に分解し、炭素は宇宙空間へ逃げていってしまいます。東京大学の関根先生はエウロパが誕生した条件を実験室で再現し、小天体の衝突のスピードとメタノールの分解の関係を明らかにしようとしています。

直接「海」を探査する日を夢見て

実験室ではメタノールの氷に、金粒子の弾丸をレーザーを用いて高速で衝突させ、メタノールが分解するかを調べています。その結果、衝突のスピードが高速であるほど、メタノールは一酸化炭素と水に分解することが分かりました。一方でエウロパに衝突したと考えられる小天体の速度(2km/秒程度)では、メタノールは分解せずに残
ることが明らかになりました。この結果から、エウロパの海には炭素が溶け出している可能性が高いことが考えられます。 「地上での研究と探査による調査が両輪となれば地球外生命体に関する研究は進むでしょう。」と関根先生は語ります。エウロパの氷の厚さは平均でも10km。探査機を飛ばして水を採取し成分を観測することは非常に困難です。その際先生の研究結果は探査計画を進める後押しにもなります。この冬はぜひ星空を見上げ、まだ見ぬ友を想像してみてはいかがでしょうか。

(記者:百目木幸枝)

(上記取材当時の情報となります)

 

LV.1 木星を見つけよう!

夕方~真夜中にかけて東~天頂付近に一番輝いて見える星が木星です。

LV.2 大赤斑を見つけよう!

天体望遠鏡を使って木星を観察してみましょう。何本かの縞模様が観察できると思います。そのうちの目立つ太い2本の縞の一方に、赤みがかった茶色の楕円形の模様が見えるかも知れません。それが木星の大赤斑です。

LV.3 衛星を見てみよう!

木星の縞模様の横に比較的明るい星が1~4個見られるかもしれません。それが木星の4大衛星「ガリレオ衛星」です。この中に生命の存在が期待されるエウロパが  あります。一番内側のイオは約20時間で反対側へ移動します。その時に木星に衛星の落とした影を観察できるかもしれません。