ものづくりでこれからの職業をつくる 岩淵技術商事株式会社 株式会社ABBALab パートナー 岡島 康憲 さん
日本は「ものづくりの国」と言われてきたが、それを支えてきたのは高い品質を生み出す町工場や大企業。多くは長い歴史の中で活躍してきた企業が中心で、新しい会社が飛躍的に活躍する土壌は乏しかった。2014年11月にスタートしたばかりのハードウエア開発を目指すチームや個人のためのシェアスペース、DMM make Akibaはこの課題に切り込み、個人でものづくりを可能にする環境を整えることで、ハードウエアスタートアップのビジネスを加速させる仕組みを目指している。DMM. make AKIBAに入居し、ハードウエアスタートアップ向け育成プログラムを展開する株式会社ABBALabの岡島康憲さんに話を伺った。
これからのものづくりを変える場所
都会のオフィスに3DCAD、3Dプリンター、ボール盤など100近くの機材が並ぶDMM. make AKIBA。ここでは、これらの設備を個人単位で使用できるほか、未経験者に対して使用方法をレクチャーするサービスも行っている。ハードウエア製品の開発には常に高価な機械を必要とし、小さな会社や個人では難しかった。そこで、同施設ではそれらの設備と使用するノウハウを開放した。手のひらサイズのハードウエアであれば、数十台〜200台程度製造することができる。いきなり大量に製品をつくって売らなくても、クラウドファンディングで資金を集め、出資者分だけをつくってフィードバックを得ることもできるのだ。「インターネットは15-6年前にレンタルサーバーなど手軽に契約できる設備ができてビジネスがしやすくなり、それに従事する人がでてきた。同じように、これからはハードウエアビジネスの幅が広がり、新しい仕事が生まれるでしょう」と岡島さんが話すように、ものづくりが大きく変わる可能性をもった場所なのだ。今は、いくつかのスタートアップが製品開発を進めるほか、個人が趣味で使ったり、起業を目指す人が試作品づくりに訪れたりしている。
ソフトウエアからハードウエアへの転換
岡島さん自身は岩淵技術商事株式会社という会社の経営者として研究者のための実験用ハードウエアの企業を対象としたハードウエア開発のコンサルティグしながら同社にはパートナーとしてイベントの企画や起業家の相談役として関わっている。インターネットに興味を持ち、大学ではメディアアートを専攻して、人々のコミュニケーションを促す参加型のエンターテイメント作品の制作をした。大学院卒業後、インターネットプロバイダで企画職に携わる。「その会社の面接では、役員の方と、今の技術で攻殻機動隊のような世界をつくるなら、という話で盛り上がって。大企業の偉い人が絵空事みたいな未来を真面目に考えていることが面白かったんですよね」。Web Servicesの ンジニアに指示しながらつくっていくうちに、自分でも手を動かすことへの興味や、ソフトウエアを超えたプロダクトへの興味が強くなり、会社の仲間と自分の会社を立ち上げた。
何をやるか、誰とやるか
「何をやるかも大事だけど、誰とやるかも大事」という岡島さん。起業家への資金提供、企業経営のノウハウ共有、起業家同士のコミュニケーションやメンバー探しなどの支援も行っている同社に参加することにしたのも、リーダーに共感できたからだ。この仕事で今存在していない職業を子どもたちが選べる未来をつくりたいという代表の思いに共感したという。「今でも前の会社の人と話すし、また一緒に仕事ができたら何ができるかなって考える。もしかしたら将来はハードウエアビジネスでなくてもいいかもしれないし、また大きな会社に戻ってもいいかもしれない。自分がこの人たちとだったら仕事をしたいと思えるところを探す、というのも面白い仕事を見つける1つの選択なんじゃないかな」。進路を決めることは自分の中に人生の様々なカードを持てるということだという岡島さん。未来の仕事をつくる今にワクワクしながら、新しいカードが増えていく人生を楽しんでいる。
(文 環野真理子)
|岡島 康憲 さん プロフィール|
電気通信大学大学院修了。2006年、NECビッグローブ株式会社にて動画配信サービスの企画運営を担当。2011年、岩淵技術商事株式会社を創業し、企業向けにハードウェア商品企画のサポートを行う。2014年から「DMM.make AKIBA」や「ABBALab」をサポート。