国産ドローン、空を飛ぶ
ドローンという言葉を一度でも聞いたことがある人は多いのではないだろうか。米国企業Amazon.comが、小型ドローンを用いた配送サービス「Amazon Prime Air」の運用を、早ければ2015年より開始するとしたニュースは記憶に新しい。さらに、Amazon.comを追随するかのように、欧米ではドローンにまつわる新サービスの試験運用が着々と進められている。出遅れたといわれる日本でも、成長戦略の一環として、政府が規制緩和や法整備等に向けた検討を視野に入れており、近い将来ドローンが解禁されるとにらんで大手企業の参入が始まった。今年は、我々人類の生活にドローンを取り込めるかどうかの分かれ道になるともいえるだろう。これからの動きに目が離せないドローンについて探ってみる。
ドローンとは一体何か
ドローンとは、無人航空機(Unmanned Air Vehicle;UAV)の別称で、翼の形状等により主に表1の3つに分類される。飛行機のような固定翼を持つもの、回転翼を持つものの2種類に分かれ、さらに回転翼をもつものはヘリコプターとして普及しているシングルロータータイプ、ドローンとして広く認知されているマルチロータータイプに分類される。
軍事から始まった無人航空機の歴史
航空機を無人化する試みは、第一次世界対戦の頃から始まっており、米国海軍が開発した飛行爆弾が最初の無人航空機であるといわれている。ジャイロを搭載して自動的に目的地まで飛行する現在の巡航ミサイルの元祖である。その後、自律誘導と無線もしくは有線により操縦者が操作する方式が発達し、第二次世界大戦の末期から実戦で使用されてきた。そして、1991年の湾岸戦争を契機に、偵察、監視、諜報を目的とするドローンは、重要な兵器体系の一部に組み込まれることとなった。軍事用途から始まった所以は、有人飛行に比べ突出した技量が不要で、操縦者が危険にさらされることがないからだ。2013年時点で、米国の軍需メーカー、ジェネラル・アトミック社の軍用ドローンが米国ドローン市場の20.4%のシェアを占めるように、いまなお軍事用としてもニーズが高い。しかし、近年、非軍事分野での用途が急増している。
非軍事分野に広がる用途
1980年代ごろから商業用等の非軍事用として、民間による無人航空機の利用が始まった。そのきっかけのひとつとして、2010年に仏国のパロット社が発売した「Parrot AR.Drone」がある。4つの回転翼をもち、スマホのアプリを通じて操作できるという利便性と、本体に搭載された小型カメラで空中撮影を楽しめることから話題になった。これを受けて、世界の企業が続々とドローンの開発に乗り出すことになる。イギリスでは、ドミノピザがピザの配達にマルチコプター「DomiCopter」を活用する構想を発表、試験を実施し、スイスのFlyability社はビーチボールのような形をした新型ドローン「GimBall」を開発し、災害現場における被災者の捜索に役立てる方針だ。日本では、ヤマハ発動機が農薬や種もみの散布に利用する無人新型ヘリ「フェーザー」の導入を2013年より開始し、NTT東日本は2015年3月を目処に、作業員が近づくのが難しい地点の設備点検やケーブル敷設に6機のドローンを投入する予定だという。農水省によれば、2013年度時点で既に日本の水田の30%がドローンにより農薬散布されているそうで、日本におけるドローン活用事例も増え始めている。
どう進む、日本の法整備と規制緩和
ドローンはこの10年で操縦が簡単になり、経験・技量がなくても運用可能になった。その結果、無茶な飛行が増加していることも事実だ。技術が進歩し、安全性も高まってきてはいるが、万が一墜落した場合の危険性は高い。これまでにも、名古屋のテレビ塔付近や、お台場のガンダム頭上、吉野川花火大会など、空撮中の墜落という事例が相次いでいる。現在日本では、国土交通省が定めている航空法が「人が乗っている」ことを前提としているため、ドローンはラジコンと同じ模型航空機という扱いを受けているようだ。模型航空機は、航空法施行規則の法律が適応され、航空路以外であれば水面から250mまで、航空路内であっても地上から150mまでであれば、申請等は特に必要ないとされている。今後、ドローンの用途を拡大するためには、機体自体の安全性を高めつつ、啓発活動も必要になってくるだろう。また、ロボット革命実現会議では、大型無人機の具体的な運用ルールについて、国際民間航空機関における国際基準改定の検討に参画し、2019年度までには国際基準を踏まえた国内ルール化を目指すとしている。あまりにも急激に普及したためルールや法整備が追いついていないドローンだが、いち早く拡散するために規制緩和を求める声もあがっている。今後どう進むのか注目したい。
ドローンはどこへ向かうのか
ネットでの購入が容易になり、あらゆる場所、場面で活用の兆しが見え始めたドローンの経済的波及効果は、米ビジネス雑誌「Fortune」によると米国だけでも2015年から2025年の間で約97兆円にのぼるといわれ、広大な農地や海での魚の監視、自動体外式除細動器として利用する救急医療システム、ワクチンや薬等の医療支援物資の配達など、新たな産業を生み出すことが予想されている。しかし、現状はアメリカ連邦航空局(FAA)による規制が厳しく、商業利用はFAAの許可が必要となっているため、米国のドローン産業は規制緩和が前提となる。一方、日本では、労働人口の減少に対応するためにドローンの活用が有効であると考えられており、千葉大学がつくったベンチャー企業に対して、NECやソニー、IHI等の85社もの日本企業が技術・資金提供を行い、日本発ドローンの開発を進めている。
後発国といわれている日本だが、近い将来、日本の技術で作られたドローンが世界中の空を飛んでいることを期待したい。
続く>国内ドローン開発状況