国内ドローン開発状況

国内ドローン開発状況

海外メーカーが注目されることの多いドローンだが、国内メーカーによる開発・販売も進んでいる。ユニークな事例とともに、その概要について紹介する。

ハードウェアメーカーとソフトウェア開発者がタッグを組む

現在、日本において、積極的にドローンの販売にのりだしているのは、ラジコンヘリメーカーだ。ホビーユースとして開発・販売を続けることで蓄積したノウハウをもとに、業務用ドローンの設計・開発を行う企業が多い。これらの企業は、自社だけで製造・販売を行うのではなく、用途やビジネスモデルに応じ、主にソフトウェア開発を担う企業や大学とタッグを組んで開発・販売を行う。連携事例が増えているのには理由がある。そもそもラジコンヘリコプターは操縦に訓練が必要など操作が難しく、誰もが気軽に扱えるものではない。ドローンを広めるためにはより簡便で直感的に操作できることが求められており、それを実現するためには、用途に応じた機体と人の関係性のなかで最適な制御系を構築する高度な技術が必要となる。

最先端をいく日本発ドローン

ミニサーベイヤー

千葉大学発ベンチャー 株式会社自律制御システム研究所

ミニサーベイヤー

ミニサーベイヤー

日本のドローン開発の第一人者である千葉大学大学院工学研究科 野波健蔵氏が立ち上げた千葉大学発ベンチャー、株式会社自律制御システム研究所が開発するミニサーベイヤー「MS-06LA」。野波氏の呼びかけにより、NECやソニー、IHIといった日本企業85社とコンソーシアムを組み、オールジャパン体制で開発した。MS-06LAは、原子炉建屋内での調査を想定して、最大径1,020m、約4kgの計測機器を搭載して約10分間飛行できるように設計されている。MS-06LA以外にも、空撮に適したものや農薬散布に適したものなど、用途に応じていくつかの種類を揃えている。他のドローンに比べエネルギー効率が格段に向上しており、本体重量より大きな重量のものを運ぶことができるのが大きな特徴だ。トンネルや橋などのインフラ点検や災害現場などでの活用も期待される。年間200機の生産を目指し、日本国内のみならず海外の市場にも参入する予定。

ドローンのユニークな応用事例

ホバーボール

東京大学大学院情報学環 暦本純一 教授

ホバーボール

ホバーボール

ヒューマンコンピュータインタラクションの第一人者である暦本教授が開発するホバーボール。ボールの中心部に直径90mmの4つのローターを持つドローンを搭載し、空中に浮きながら人を追尾したり避けたりできる。現在のシステムでは、部屋に配置したモーションキャプチャーカメラで人間やホバーボールの位置を把握し、無線を通じてホバーボールに指令を出す。「相手を避ける」という指令を出せば、投げたホバーボールは相手に届かずに自分の方に戻ってくる。「相手を追尾する」という指示を出せば、相手が動いても自動的に追いかけて手元に収まる。その様子は、まるで自然界の物理法則が変わってしまったかのような錯覚を覚える。中心部のドローンの開発は、暦本教授が副所長を務めるソニーコンピューターサイエンス研究所との共同研究によるものだ。

子どもや高齢者、身体に障害を持つ人でも、体力や運動能力の差を感じずに楽しめる身近なスポーツとして利用することを目指している。ドローンを活用して人間が仮想的に空中を飛行するというプロジェクトも進行中。まるで仮想空間のような人とボールの関係が現実となる日は近い。

■その他のドローン開発・販売状況

機体名 社名 特徴
K&S Multicopter K4-H 株式会社ケイアンドエス 1988年に設立されたラジコンヘリメーカー。「K4-H」は飛行性行性能向上と空撮時におけるカメラの映り込みを考慮した引き込み脚仕様が特徴的であり、フレームはオールカーボンモノコック構造、脚回り以外はフレームを接着剤で組立する仕様となっている。プロペラとバッテリーを装着する前の重量は2.5Kgと軽量なのも特徴だ。
Zion(ザイオン)マルチコプター 株式会社エンルート 2006年に設立されたラジコンメーカー。シンプルな構造でメンテナンス性に優れ、15分から50分以上の飛行時間と、10Kmから30Km以上の観測飛行を実現したモデルや、プロペラガードを機体構造物とし山岳地の斜面からの離発着や水上での離発着を可能としたモデル、カメラや、センサーを搭載した空撮、観測飛行を目的としたモデル、農薬散布に特化したモデルをはじめ、固定翼からマルチコプターまで、様々なドローンを自社開発している。
FAZER ヤマハ発動機株式会社 産業用無人ヘリコプターのニューモデル。従来モデルのRMAX TypeIIGと比較して、新型エンジンの出力が約25%アップ。積載能力が16kgから24kgへと50%向上した。積載能力が増えることで、農薬散布業務において薬剤の補給などによる離発着回数を減らすことができ、作業効率の改善につながる。また、排気ガスのクリーン性をアップさせており、ガソリンの消費量を20%の削減と燃費性能も大きく向上させている。
Auto Pathfinder CX-20 株式会社クエストコーポレーション ホビーユースのマルチコプターを販売中。30×30×20cmというサイズ感で、1回10分程度の飛行が可能。機体にとりつけたLEDの点滅とブザーによりバッテリーが少なくなった際にはアラームを出す機能を搭載し、安全性を確保している。
マルチコプターNINJA400MR 日本遠隔制御株式会社 レーシングマシンのような外装と、操縦を楽しむことを目的としたマルチコプターだ。モーター回転を瞬時に切り替え、固定ピッチでのアクロバティックなフライトを可能としている点が特徴だ。