[研究者たちのライフデザイン]研究キャリアを企業で活かす 銭谷聖子
今回お話しを伺ったのは、日本イーライリリー株式会社の銭谷聖子さん。
研究、ビジネス、臨床、そして患者の家族と、これまで複数の視点からがんに関わってきた。
柔軟な姿勢で仕事と子育ての両立を探りつつ自身の想いを貫いてきた、そのライフデザインを紹介する。
がんをキーワードに働く
銭谷さんにとって、20歳の時に母親ががんになったことが、ライフデザインの大きな岐路になった。悩み抜いた末にがん研究の道を選んだその時から、「がん」に関わる仕事をするという筋を通している。
大学・大学院では、抗がん剤の候補となる物質を探索し新規物質を発見したが、なかなか患者さんのもとに届かなかいことを実感させられた。自分の知識を活かして、がん治療に役立つ他のアプローチを考えていたある日、大学院の授業でアカデミアのシーズを活かして事業にする会社があることを知った。これだと思いアカデミアから飛び出した。その後、企業やNPO、研究機関と所属は移りつつも、医療システム立案、一般市民向けのがん情報サイトの構築、がんのMRに向けた教育活動など、がんに携わる仕事を一貫し続けている。
ライフステージに合わせた働き方
仕事に対し精力的な銭谷さんは2児の母親でもあり、ライフステージに合わせて働き方を柔軟に変化させてきた。例えば、乳幼児をかかえて出張が多い仕事をすることは非常に困難。働き方を変える必要性があると考えた。そこで、臨床の知識をつけその後のキャリアアップにつなげつつ、子育ての時間も確保しようと考え、出産を機に仕事を辞めて医学系大学院でヘルスコミュニケーションを学ぶことを選択した。
現在務めているイーライリリーでは、銭谷さんにとって働きやすい環境と言えるようだ。事前申請があれば在宅勤務が認められており、自宅にいてもスマートフォンやPCで会議に参加できるようなシステムが採用されている。「どこにいても仕事ができるのでとても気が楽になります」。場所にしばられないため、子供達が風邪で休みがちな冬の時期でも、仕事に支障がないようだ。
自分にとって重要なことを知ってライフデザインをする
銭谷さんのライフデザインのキーワードは、がんと子育ての2点。自身にとって重要なポイントを明らかにしたことで、問題点がクリアになり解決方法がみえやすくなったそうだ。銭谷さんの様に環境を変えることで、新しい働き方への視野が広がり、キャリアの選択が多様になることはいつでもありうる。重要な事を明確にすることで、誰しも少なからずストレスを感じる新しい環境への一歩も、楽しみながら踏み出せることを銭谷さんの多様なキャリアは物語っている。