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科学的に実現する有機農法で、自給率100%を目指す 久保 幹

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図1:有機肥料の分解過程のイメージ
図1:有機肥料の分解過程のイメージ

私たちが、年に一度の健康診断で体の異常を見つけ、治療や生活改善を通して健康な体を維持するように、土壌の健康診断ができないか?それが、立命館大学 久保幹教授の考案した、SOFIX(Soil Fertile Index)のコンセプトだ。長年の経験と勘が必要とされる有機農法を、数値と明確な手段で実現できるとして、大きな注目を集めている。

SOFIXで数値化される「肥沃度」

 これまでにも、土壌分析の手法は開発されてきた。pHや、代表的な栄養素として知られる、窒素、リン酸、カリウム、そしてその他の着目する化学物質の含有量を、高速液体クロマトグラフィーやガスクロマトグラフィーなどの分析機器を用いて解析する。既に、全農や各種受託検査機関がサービスとしても導入されている。これに対してSOFIXでは、土壌の微生物総数とその代謝活性を数値化した生物指標を加えることで、「土壌肥沃度」という総合的な分析が可能となった。すなわち、農家は長年の経験や勘に頼らずとも、これら土壌の総合的な評価結果に基づいて、その時々で適切な有機肥料の施与など対処できるようになるのだ。

重要なのは、微生物数とその活性

 SOFIX構想のきっかけは、数年前に手がけた「石油に汚染された土壌を、バイオレメディエーションにより回復させる」という研究にあった。スクリーニングを繰り返し、石油分解能の高い菌を同定し、いざ土壌での実証実験に臨む。しかし、なかなか想定する結果が得られなかった。あるとき、その理由が土壌中の微生物総数が少ないことが原因であると気づく。つまり、その有用微生物単体では住みにくい環境であったために代謝効率が低く、十分な石油分解能を発揮することができなかったのだ。実際、複数種の微生物を組み合わせて導入することで、石油分解能が大幅に高まることが確認された。

図1:有機肥料の分解過程のイメージ
図1:有機肥料の分解過程のイメージ

 この石油分解の研究に着想を得て、農業に適用したのがSOFIXだ。どんなに有機肥料を施肥しようとも、適切に分解する微生物の総数が足りなければ、植物に必要な栄養成分とはならない(図1)。微生物の総数は、培養過程を経ずに、直接DNAやRNA量を比較できるeDNA(environmental DNA)を指標とした。さらに、微生物による有機肥料の分解過程『アンモニア態窒素(NH4)→亜硝酸態窒素(NO2)→硝酸態窒素(NO3)』の代謝を、アンモニア酸化活性と亜硝酸酸化活性の2つの指標で評価。これら3つ指標から、土壌の窒素循環活性を可視化することに成功したのだ(図2)。

図2:3つの生物指標のバランスをみることで、土壌の窒素循環を可視化できる。
図2:3つの生物指標のバランスをみることで、土壌の窒素循環を可視化できる。

世界の歯車を、農業から回す

 「目標は、自給率100%ですよ。大きな目標ですけど、絶対にいけると信じています!」と力強く語る久保教授。すでに、企業や自治体と連携した実証実験がスタートしており、総合的な分析結果を診断書(図3)として活用し、「キャベツの収穫量が2倍に増えた」、「トマトのリコピンやグルタミン酸含有量が2倍に増えた」などの成果が報告されている。今後は、SOFIX分析に基づいた有機肥料の添加で、栽培種毎に異なる土壌の最適化に取り組むという。さらに、土壌の分析と普及を行うための中立的な機関として社団法人を立ち上げたり、分析結果を正しく読み取り有機農法を促進できる人材育成を行ったりと、SOFIXの社会実装を展開している。研究室を飛び出したSOFIXは、勘に頼らない科学的な有機農法の基盤となるだろう。

図3:土壌肥沃度(SOFIX)による診断結果例
図3:土壌肥沃度(SOFIX)による診断結果例

研究者情報

  • 〒525-8577 滋賀県草津市野路東1-1-1
  • 立命館大学 生命科学部生物工学科生物機能工学研究室
  • 久保 幹 教授
  • [教員室]077-561-3901(TEL・FAX)
  • [研究室]077-566-1111(代表) 8468(内線)

本件に関するお問い合せは株式会社リバネスまで

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