夢の素材「カーボンナノチューブ」を当たり前に! ナノサミット株式会社

1991年、NEC中央研究所の飯島澄男博士によって構造が明らかにされたカーボンナノチューブ(CNT)は、そのカイラリティや層構造の違いにより強靭さ、軽さ、柔軟性、導電性、半導体特性など多くの優れた特性を示す素材として脚光を浴びた。しかし、現在もCNTは普及しているとは言いがたい。実用化に向けて解決すべき課題は多いが、とりわけ重大なのがCNT同士の分子間力相互作用による凝集である。

25年越しで実現した 孤立分散化技術

CNT自体の性能がどんなに優れていても、凝集した状態では十分に活かすことはできない。界面活性剤 や超音波を駆使して1本1本を分散させても、その孤立した分散状態を維持することが困難であり、安価で大量に安定的に扱える分散技術が求められていた。そんな課題を解決したのが、ナノサミット株式会社CTO古月文志氏(東京大学特任教授を兼任)だ。1分子中にプラスとマイナスの両方の電荷を持つ両性イオン分子(※)を分散剤として用いることで、CNT 凝集体の表面で両性イオン分子膜(self-assembled zwitterionic monolayer: SAZM)が自己組織化的に形成されることを利用している。
分子間の結合の強度が CNT-CNT < SAZM - SAZM < CNT−SAZMという関係になっていることで、CNT全てが孤立するまで自発的に分散し続けるのだ。

いよいよ始まる実証試験

CNTの特徴は、軽さ、強さだけに着目してもあらゆる製品部材にとって代わる可能性がある。また導電性や高い比表面積に着目した電極や触媒への適用は、二次電池や燃料電池の性能を各段に高めるに違いない。電線やモーターにおいても、大幅な軽量化、小型化が実現できるだろう。他にも、ダイオキシン類などベンゼン環骨格をもつ有害物質を選 択的に吸着する性質に着目したフィルターなども考えられている。 CNTの孤立分散化が工業レベルで実現したことで、従来用いられている金属材料やエンジニアリングプラスチックといった素材同様に、様々な場所で活用されるようになるはずだ。
ナノサミット株式会社では、発見から25年にしてようやく実現した工業レベルでの孤立分散化技術を武器に、多方面でのCNT実証試験を開始した。夢の素材と言われた CNTが世に広がる未来が、ここから始まる。

※例えば3-(N,N-ジメチルステアリルアンモニオ)プロパンスルホネートや2-メタクロイルオキシホスホリルコリン(MPC)とn-ブチメタクリレート(BMA)のコポリマーで孤立分散を確認している。

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