〔リバネスセンシズ〕研究のプロセスを探求するひと(後編)
リバネスセンシズでは、リバネスメンバーのインタビューを通して、そのパッションを紐解き、実現しようとする個々の未来像をお伝えします。
西山 哲史(にしやま さとし)
博士(理学)
専門分野:分子生物学、発生工学
(聴き手:佐野 卓郎)
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佐野:西山さんは、研究が大好きですよね。研究のどこに面白さを感じますか?
西山:私が研究を好きという感覚は、もしかしたら他の研究者たちのそれとはちょっと違うかもしれません。
研究には「解明していくプロセス」があって、私は、それを考えるところに面白さを感じています。極論すれば、私自身が世界初の発見をしなくてもよいと思っているんです。
私は、「サイエンス・テクノロジー」と「研究」の面白さを別のものとして捉えています。中学生の頃の私は、「サイエンス・テクノロジー」にとても興味をもっていました。様々な現象を知ったり、あるいはまだ解明されていない事象があること自体を知ったり。エンタメ的な要素もあってとても面白いですよね。
その後大学で研究するようになった私は、そこに世界初を解明するプロセスがあることを知りました。研究には歴史があって、時代ごとに様々なアプローチの仕方が存在します。特に現在は、目覚しく技術が進歩していますから、昔扱われていたテーマに対して、全く新しいアプローチで研究することだってできるわけですね。だから、論文に載ってる研究手法を知るのも非常に楽しいわけです。
佐野:近年、様々なものが自動化されたりしていますが、そうなると研究のあり方もやっぱり変わってくるんでしょうか?
西山:そうですね。つい最近までの研究では、未知の世界をたくさんの研究者が人海戦術で塗りつぶしていくようなことをやってきました。世界は未知なることに溢れていて、どこを塗りつぶしていくべきかも何となく見えていると思います。
ただ最近、人工知能などの技術が目覚しく進歩していますよね。これまで人海戦術でやっていた部分は、AIとそれに制御されるロボットみたいなものが担っていくとしたらどうでしょう。研究者のあり方も、もしかしたら変わっていくかもしれません。
研究テーマを設定し、そこに対するアプローチの仕方などのプロセスをしっかりと構築できれば、その先にある発展の形は予測ができます。そこまでできたら、あとは機械化すれば良いのかもしれません。
佐野:そうなると、研究者は、テーマやプロセスなどについて豊かに発想できることが重要になりそうですね。
西山:はい。だからこそ、研究者はコミュニケーションを図り、コラボレーションすることが求められるんだと思います。お互いの考えをぶつけ合って、イノベイティブな発想を創出する。実際に、異分野でコラボレーションした論文もふえていると言われていますし。
そういう意味でも、研究者間において、リバネスが行うサイエンスブリッジコミュニケーションは本当に重要だし、今後益々求められていくと思います。
佐野:最後になりますが、これからどんなことを仕掛けていきたいですか?
西山:2009年頃、まだインターンに参加していた私は、世界中の人たちにサイエンスの面白さを共有したいと考えていました。サイエンスは純粋に面白いですし、それを理解する人が増えれば、社会は発達していくだろうと考えていたんです。だから私にとって次世代教育の事業はとても重要な取り組みです。
現在はそれに加えて、新しい研究開発のカタチを創っていきたいと考えています。
今私は、海底探査技術開発プロジェクト(DeSET)のプロジェクトリーダーをやっていますが、その中で、新たな海底探査技術の開発に向けて、これまで混じり合うことがなかった研究者・技術者・町工場や企業の方々と共に合宿を行い、研究チーム形成を行いました。文化も専門性も違う人たちですから、私たちリバネスが間に入りコミュニケーションを促します。まったく新しいやり方で作られたチームは、個々がバラバラになることはなく、巨大なコンソーシアムを形成するわけでもなく、それぞれの持ち味を共有できるネットワークを作り上げることとなりました。このやり方で果たして研究として飛躍できるのかどうか、まだチャレンジ中ではありますが、非常に楽しみです。
異分野でチームをつくり、課題に対して新しい研究アプローチを創出したい。そしてそこに、予想もしなかった共同研究を生み出していきたい。きっと、リバネスの価値もそこにあるのだと考えます。