〔リバネスセンシズ〕地球と人との共存を追求する環境と文化を創出するひと(後編)

〔リバネスセンシズ〕地球と人との共存を追求する環境と文化を創出するひと(後編)

リバネスセンシズでは、リバネスメンバーのインタビューを通して、そのパッションを紐解き、実現しようとする個々の未来像をお伝えします。

神藤 拓実(じんどう たくみ)
博士(工学)

専門分野:機能性色素化学、結晶学

(聴き手:鈴木 愛斗)

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鈴木:神藤さんは、プロジェクトを起こすのが好きな印象がありますよね。

神藤:そうですねぇ。中高校での学校祭も常に中心でリーダーをしていました。応援合戦とか・・・。昔から、人を巻き込んでプロジェクトを行うのが好きでしたね。大学院では、研究の傍で横浜市の自治体や学生・先生方と環境改善のためのプロジェクトも進めていました。

鈴木:人と一緒に何かをするのが好きということですが、一方で「研究」は一人で集中して実験をこなしているイメージがあります。研究についてはどうでしょう?

神藤:研究はもちろん、しっかりとやっていましたよ。でも好きっていう感覚よりも、凝り性なんですよね。丁寧に集中して作業をして・・・それって、楽しいとか好きっていう感覚よりも「まだ、先がある」と思いながら続けていた気がします。一方で、環境活動のようなプロジェクトは好きで、趣味のように続けていましたが、徐々に、僕の生き方はまさにこれなのではないかと感じはじめました。ラボで集中して実験をするような、研究一本ではない、多くの人たちとコミュニケーションを取りながらプロジェクトを起こしていくような生き方。それが、リバネスではできると考えてリバネスに入社しました。

鈴木:入社後、どんな仕事に就きましたか?

神藤:入社したばかりの僕は、まずは国際開発事業部に所属することになりました。日本と海外をつなぐような仕事です。

鈴木:そういえば、海外に留学した経験がありましたよね?

神藤:はい、博士2年の時にベルギーに留学しました。当時は、とにかく留学してみたい気持ちがありました。国際学会などへ参加するたびに、僕のわからない言語で会話がされているのがすごく嫌で、とにかく英語が話せるようになりたかったんです。
留学したことで英語は話せるようになりましたし、色々な価値観を知ることができました。ただ、留学先で参加した新たな研究プロジェクトをやり切れず、いまだに悔いが残っています。いまでもリベンジしたいと思っていますね。

鈴木:国際開発事業部ではどんな仕事をしましたか?

神藤:海外のベンチャーと日本の町工場をつなぐようなプロジェクトに参加したため、入社してすぐにフィリピンへ行きました。フィリピンは整備が進んできた都市ですが、そうは言ってもまだ未成熟です。食事は肉や米がほとんどで、肥満や糖尿病の人も多く、環境や健康などに課題がありそうでした。また、優秀でポテンシャルを持った人がいるのに、それを活かせる場がない現状があると、現地に行って肌で感じました。

鈴木:海外での経験は、日本で暮らす私たちに色々な気づきを与えてくれますよね。

神藤:はい。そのほかにも、タイに行ってベンチャーと町工場の架け橋をするような経験をしました。町工場の言い分とベンチャーの言い分を、それぞれに膝を付き合わせてよく聞き合う。もちろん、国を跨げば文化の違いもあるし、性格の違いだってあります。明瞭かつ深掘りをするコミュニケーションが求められました。大変でしたが、とてもよい経験ができました。

鈴木:様々な経験を経て、やりたいことなどに変化はありましたか?

神藤:「環境のために」と、今でも思います。でも、自分の中で変わってきたのは、現実的な方法を考えるようになった点ですね。「なんとかしたい」と漠然と思うだけじゃなくて。アカデミアにいた時の自分には、その知見が足りなかった・・・至らなかったのだと思います。自分の目の前の基礎研究と、実現したい世界とが結びついてなかった。だから、研究をやっていても辛いという思いが少しあったのだと思います。
価値観としてのビジョンがあって、そのために自分は何ができるか、仲間とともに何をすべきかを考える。今では、周りにいる人、技術などを組み合わせていける場にいます。

鈴木:環境という視点から考えると、人類は今後、地球とどう付き合っていくべきなのでしょうか?

神藤:よく「地球と人類」という言い方がされます。地球全体で起きていることや環境問題などは実感が持ちにくいものですが、一方で、衣食住や乗り物を使うなど、僕たちの日常生活の裏側で、実は地球規模でつながる、ひとつのシステムがあります。人類が営んでいくためのシステムがこの地球の一部にあり、ダイナミズムの一部となっている、ということです。ただ、僕らが盲目であるがゆえに、自分の利益だけを追求してみたり、自分たちが生きていけなくなるのではと不安を感じてみたりするわけです。別に、このシステム自体をどうこうしようとは思いませんが、もっと理解していくことが重要ではないかと僕は考えています。
特にアジアの国々に行けば、ものすごい渋滞と自動車の数。不自然な経済のあり方が、地球に負荷をかけるのかもしれませんし、もしかしたら、物を売る企業側に課題があるのかもしれません。人類が発展を目指すのに、別の方法はないのか。もっと地球について学び、科学技術を理解し駆使しながら、それを追求していくような環境と文化をつくっていくことが大切だと思います。