〔リバネスセンシズ〕テクノロジーで豊かな地域を創造するひと(前編)

〔リバネスセンシズ〕テクノロジーで豊かな地域を創造するひと(前編)

リバネスセンシズでは、リバネスメンバーのインタビューを通して、そのパッションを紐解き、実現しようとする個々の未来像をお伝えします。

石尾 淳一郎(いしお じゅんいちろう)
博士(工学)
専門分野:国際開発工学、心理生理学

(聴き手:鈴木 愛斗

石尾 淳一郎(いしお じゅんいちろう)さんは、独自の感性と強力なパッションを持ち合わせた、リバネスの中でも際立つ存在だ。途上国に赴いた経験から、豊かさとは何かを技術をもって追求し続けている。今回は、そんな石尾さんに話を聞いてみた。

鈴木:石尾さんといえば、「香川」に強い想いを抱いている印象がありますが。

石尾:私は、鹿児島で生まれて香川で育ちました。瀬戸内海と山の間を愛犬と走り回り、近所の夕飯の匂いを嗅ぎながら家に帰る生活が、子供時代のベストアクティビティだったんです。瀬戸内海に見える黄金色の雲の群れ。自然の中で五感に刺激を受けながら過ごしていました。
そんな中、小学校5年生の頃に環境活動家の講演を聞いて、深刻な環境問題について知り、それを解決する大人になりたいと思うようになりました。卒業文集には、「環境問題を啓発する写真家になりたい」と書いていましたね。

鈴木:結局、研究者を目指すようになったわけですが、その間に何があったのでしょう?

石尾:高校生になって、進路選択をするとき、「国語や社会は勉強しなくてもいけそうだけど、数学と理科は勉強しないとダメだろう」という勝手な思い込みで、数学と理科をしっかり勉強しておこうと思って理系に進んだんです。実は、祖父が研究者で、何となく「かっこいいな」と思っていましたから、理系も嫌いではありませんでした。でも結局、部活の剣道ばかりをやっていて、勉強はほとんどやらなかったんですけどね。浪人して東京工業大学に入りました。
大学に進学してからは特にやる気も起きなくて、早くに単位だけ取って適当に卒業しようと思い始めていました。ところが、4年生になって研究室に配属されると、「自分の興味のある研究テーマは何か」を問われました。そこで、幼い日に考えていたことが蘇ってきたんです。環境問題のこと。クリーンエネルギーの代表とも言える太陽光発電システムのこと。でも太陽光発電システムは、後に大量に廃棄物がでること。それを自分が解決しなければと思いました。興味があることに没頭する毎日。その楽しみを思い出した私は、1年では足りないと考えて修士課程に進むことを判断したんです。

鈴木:研究テーマは「太陽光発電システム」だったんですね。

石尾:はい。いくつかあるテーマのうちのひとつが、これでした。太陽光発電システムがどのように劣化、故障するのかのシミュレーションをして、経済的に最適な保全計画をつくることを目的に、博士課程2年までやっていましたね。

鈴木:それ以降は、研究テーマを変えたということでしょうか?

石尾実はもうひとつ、私が取り組んでいた活動があります。それが、国際開発サークルでの活動でした。途上国に赴いて、現地でフィールドワークしながら問題を見つけ、解決するためのプロダクトを開発するんです。アジアで活動していたら、「技術を根付かせるためには、地域の人を巻き込んで、主役をやがて地域の人にしていく必要がある」と強く感じるようになりました。そして徐々に、私の拠点でもある日本のことも意識するようになったのです。
そんなある日、福島に行くことになりました。太陽光発電システムの研究をしていたので、自治体や企業とともに、フィジビリティ調査をやることが目的です。そこで、地元の方から色々な意見を聴くことになりました。
「太陽光発電を並べるのは、本当にくらしの質をよくするのか。」「我々の想いを捉えているのか。」
世の中をよくすると思っていた太陽光発電システム。私は、技術ありきで思い上がっていたのかもしれない。信念が揺らぎました。人々の心にもっと寄り添う研究とは、一体どんなものなのか。心理的な活動の研究なのだろうか。それなら、アンケート調査だけじゃなくて、デバイスを活用して自律神経の挙動を測るのはどうだろうか。そんな風に思って、「ウェアラブル端末を用いた人の感情とストレスのモニタリング」という研究テーマに変わっていきました。人の暮らしをモニタリングすれば、暮らしの中でどのくらいストレスがかかっているのかが一目陵全になり、よりはっきりと困りごとの炙り出しができるはずです。プロダクト開発や、それによる生活の質の向上をしっかりと評価できる仕組みができると期待しながら取り組んでいました。

 

後編