〔リバネスセンシズ〕数学の価値と魅力を伝え広めるひと(後編)

〔リバネスセンシズ〕数学の価値と魅力を伝え広めるひと(後編)

リバネスセンシズでは、リバネスメンバーのインタビューを通して、そのパッションを紐解き、実現しようとする個々の未来像をお伝えします。

岸本 昌幸(きしもと まさゆき)
修士(理学)

専門分野:位相幾何学

(聴き手:佐野 卓郎)

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佐野:数学の研究者って、大学院を出たらどんな仕事をするのが一般的なんでしょうか?

岸本:私の周りには、就職する人たちもたくさんいました。銀行に就職したり、教師やSEをやっている人もいます。
一方で、アカデミアに残ろうとする人たちもいます。結構大変ですけどね。
私自身も数学の研究が大好きなのですが、地方の大学院に進学したら、先輩から「こういう研究やりたいんだったら、もっと良い大学に行かないとダメだ」と言われてしまいました。周りを見ると、好きな研究をやっている人は皆、アルバイトをしながら生活していたんです。お金の付きにくい分野ですから仕方がないのかもしれませんが、私はこうした研究者の姿に何となく違和感を感じていました。

佐野:インターンシップに参加していましたよね?

岸本:はい。1年半ほどやっていました。一番最初は、「理科の王国」で「味覚のふしぎ」をテーマに実験教室をやりました。「かき氷の味って、色が違うだけで、実は全部一緒なのでは?」という素朴な疑問をテーマに実施したんです。それまで小学生に関わることがあまりなかったので、とても新鮮でした。ちゃんと伝えれば、しっかり伝わるものなんだって実感しましたね。

佐野:実験教室を一緒にやりましたね。

岸本:はい。中高生対象の実験教室でしたが、うまく伝えればちゃんとリアクションが返ってくる。難しかったですが、とても価値を感じました。

佐野:入社して間もないですが、今はどんなことに取り組んでいますか?

岸本:数学の研究体験教室をやろうと計画しています。「結び目理論」をですね。

佐野:ぜひ分かりやすく!

岸本:紐が絡まったものが2つあって、それが同じ絡まり方をしているのか、全然違う絡まり方をしているのかを見極めるという話なんです。どんな絡まり方をしているのか。それは解くことができるのか。あるいは、輪ゴムをグニュグニュと手で揉んだときのように絡まって見えるだけなのか。
紐の両端を固定した状態にしたとき、紐が重なっている部分のその上下関係が絡まり方を決めている。つまり、交差点の空間の情報が結び方の特徴を示しているわけです。

佐野:頭の中でイメージするのは難しいですが、手作業をして体験しながら考える企画にすると興味を持つ人も増えるかもしれませんね。
将来的には、岸本さんはどんなことを目指していくのでしょうか?

岸本:数学の魅力や有用性を社会にもっと伝えていきたいと思います。数学といえば小難しいイメージがありますが、気象予報などは現象を数式化して未来の予報を実現していますし、コンピュータも2進法で数学。電気信号の有無の組み合わせでできているわけです。個人情報などを暗号化して守っているのも数学ですし、暗号が安全であると保証しているのも数学なんです。
今は自分で魅力に気が付いた人だけが、数学に携わっていくのですが、もっと広く、多くの人たちに数学について身近に感じて欲しいと考えています。