〔リバネスセンシズ〕数学の価値と魅力を伝え広めるひと(前編)
リバネスセンシズでは、リバネスメンバーのインタビューを通して、そのパッションを紐解き、実現しようとする個々の未来像をお伝えします。
岸本 昌幸(きしもと まさゆき)
修士(理学)
専門分野:位相幾何学
(聴き手:佐野 卓郎)
今年入社した岸本 昌幸(きしもと まさゆき)さんは、数学の研究者だ。インターンシップとして実験教室に参加をしていたとき、ティーチングアシスタント(TA)で担当した班の中高生に、その魅力を訥々と語り、理科実験をする中で数学のファンを増やしていた。とにかく数学マニアである。今回は、そんな岸本さんに話を聞いてみた。
佐野:「数学」というと取っ付きにくいイメージがありますが、なぜ好きになったんでしょうか。
岸本:そうなんですよね。中高生の頃にあきらめてしまった人も多いと思います。実は私自身も、得意ではなかったんですよ。高校のとき、数学は赤点でしたから。
ただ、周りに数学をやっている人が多かったので、興味を持ったんだと思います。祖父は数学の先生。親戚には、数学で全国2位の実力者がいて。そんな人に数学を習っていたんです。
佐野:数学が、身近にあったんですね。
岸本:私は、よく分からないことをずっと考え続けるのが好きでした。祖父がその面白さを教えてくれたんです。一緒に悩みながら。
佐野:数学って役に立つものなんでしょうか。
岸本:役に立ってると思いますが、なかなか表面に見えてこないですね。実際は、ものを設計するときに利用したり、研究者が分析に利用したり。数学は手段ですから、実は色々なところで活用されているんです。
佐野:岸本さんは、どんな研究をしていたのでしょうか。
岸本:図形の分類について研究していました。
佐野:もう少し詳しく教えてもらえますか。
岸本:世の中には様々な形がありますが、それを分類しながら論理的にある図形を追求していくんです。たとえば、中身の詰まった地球みたいなものと、中が空洞のボール、そしてドーナツ。どれも丸い形ですが、全然違うものですよね。ボールとドーナツの違いといえばドーナツには真ん中に穴がありますが、一方では、結構似たような特徴もあります。こうした形を様々に分類していくことで、世の中にあるすべての「形」について理解する研究をしてきました。
一番重要なのは、この過程において、分析する手段としての数学の可能性を見出していくことにあります。新しい道具を鍛えて生み出していくイメージですね。
佐野:もともと別の企業に務めていましたよね。なぜリバネスにきたのでしょうか?
岸本:学部生のときに数学が面白いと思って大学院に進み、そこで位相幾何学を始めました。それは、知れば知るほどに、とてつもなく広い世界でした。少なくとも4〜5年は知識を蓄えないとスタートラインに立てない。そんな世界だったんです。
一方で、数学研究の価値は、社会においてあまり認められていないと感じていました。価値があるだろうけれども、それが社会に理解されていない。そこを橋渡しする仕事をしようと思ったんです。
多くの研究機関に広報や産学連携、技術移転などを担う仕事があることは知っていましたが、私は研究所をもつ民間企業に就職することにしました。それまではずっと、アカデミアにいましたからね。民間企業の方が視野も広がると思ったんです。
数年間働いてみてわかったのですが、やはり企業だと、社会実装しやすくてニーズの明確な分野にしか投資できないんですよね。私が取り組みたかった数学研究などへの注力は、当然難しいわけです。
佐野:まぁ、普通はそうですよね。
岸本:悶々していたときに、知人からリバネスを紹介して頂いたのです。
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