〔リバネスセンシズ〕海の深い魅力を探究するひと(後編)
リバネスセンシズでは、リバネスメンバーのインタビューを通して、そのパッションを紐解き、実現しようとする個々の未来像をお伝えします。
滝野 翔大(たきの しょうた)
修士(農学)
専門分野:海洋生態学、同位体生態学
(聴き手:津久井 雅美)
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津久井:リバネスに入社して、実験教室を運営する側になってみてどうでしたか?
滝野:昔の自分は、科学は好きだけど、暗記ばかりの(と勘違いしていた)生物学は嫌いでした。それが、実験教室を受けて生物学のイメージが変わり、自分の進路にも大きな影響がありました。生徒さんたちにも、自分たちが組み上げた実験教室に参加して、「この分野面白いな」と感じてもらいたい。受講した生徒さんのその後の人生を選択するきっかけになってくれれば、というのを意識しながら実験教室を企画しています。
それに、受講した生徒さんが、将来、私たちの仲間になってもらえたらなとも思っています。
津久井:最近の実験教室は、以前のものと比べて違いがありますか?
滝野:最近は、リバネスに様々な分野のメンバーが加わったことで、新しいテーマでの実験教室を開発したいという話がたくさん出てきています。それは、実験教室を希望する学校や先生方、生徒さんにも選択肢を増やすことになるので、とても良いことだと考えています。
ただ、実験教室を企画するうえで重要なのは、どんなメッセージを伝えたいか、面白さはどこにあるのかを明確にすることだとも思います。自分の専門分野にこだわり過ぎずに、それぞれの観点からメッセージや面白さ、その分野の魅力を伝えることができる。それこそが、リバネスのメンバーに求められることなのだと思っています。実験教室を通して、「身近なところからの発見にワクワクする機会」をもっとたくさんつくりたいですね。
津久井:静岡雙葉高校の企画では講師(ティーチングマネージャ:TM)をやっていましたね?
滝野:はい。高校の近くにある駿府城のお堀をフィールドにして、プランクトンの研究体験を実施しました。生物、環境(地学)、化学、社会的背景など、融合した分野として、多様な視点でものを考える教室だったのですが、結構好評でした。普段見ていた風景が、研究対象になるという発見を与える機会となり、実際にプランクトンの研究で「マリンチャレンジプログラム」にエントリーした生徒さんもいました。
津久井:教育に熱心な印象がありますが、今後も教育を中心に活動をしていくのでしょうか?
滝野:そうですねぇ。私は、「海」の仲間を増やしたいと思っているので、教育だけでなくてもよいと考えています。まだ、未知のことだらけの海の研究を、次世代に伝えていくことで、海に興味を持つ仲間が増えるかもしれないし、教育だけではなく、分野融合的な研究においても、仲間を増やすことができると考えています。
たとえば、船上での海水の採水(サンプリング)はバケツで重い水を引き上げる作業でした。大変な重労働でしたが、工学分野の技術者は簡単にその課題を解決できるかもしれません。海の研究者がその魅力を他分野の研究者に伝え、興味をもってもらい、合わせて課題を伝えられれば、コラボレーションの可能性が見えてきます。
津久井:最後になりますが、海って、我々人類にとってはどんな存在なのでしょうか?
滝野:「人類にとって・・・」という風に、我々はどうしても自分を中心に考えがちですが、地球にとっては表面の7割も締める海の方を中心に考えるべきかもしれません。海が変化すれば、我々なんて一瞬で消えてしまうような存在とも言えます。私たちは海と上手に付き合っていかなければいけないでしょう。
その割に、我々人類は海について知らなすぎる。もっと海を理解していくべきではないでしょうか。海にしてみれば、もともと大した存在ではなかった人類が、今や、汚染などで海そのものを変えてしまう力を持ちつつあるんです。そのことを我々人類は、改めて、認識しないといけないのではないでしょうか。