東京工業大学と「人間中心デザイン」に基づく耕作放棄地における放牧牛管理手法に関する研究を開始

東京工業大学と「人間中心デザイン」に基づく耕作放棄地における放牧牛管理手法に関する研究を開始

株式会社リバネス(本社:東京都新宿区、代表取締役副社長CTO:井上浄)は、東京工業大学環境・社会理工学院助教の大橋匠氏と共に、COI(センター・オブ・イノベーション)若手連携研究ファンド デジタル分野・連携研究「スマート畜産実践の知識移転を支援するIoT/AIデバイス活用手法開発と農家の行動変容を促す制度設計」(以下、本研究)において、首輪型センサで得られた放牧牛の行動データを活用した、人の目が届かない耕作放棄地における放牧牛に適した管理手法に関する研究を開始しました。

株式会社リバネスは2020年9月に島根県益田市に益田実証ファームを開所※1し、食料生産の課題解決に繋がる複合分野での研究・技術開発に取り組む農林水産研究センター※2にて、耕作放棄地での肉牛飼育の研究を行っています。このなかで、IoTを活用した遠隔での放牧システムの実証にも取り組んでいます。
※1 益田実証ファーム開所式についてはこちらご参照ください。
※2 農林水産研究センターの取り組みについてはこちらをご参照ください。

牛の放牧は、耕作放棄地等の再生利用や、飼料コストの削減などの観点から、農林水産省も推奨する飼育管理法です。牛にとっても狭い牛舎内より、広々とした環境にいることでストレス低減効果が期待されており、動物福祉(アニマルウェルフェア)の観点からも注目されています。しかし、既存の集約管理と異なり、人の目が届かないところへ牛が移動してしまうことから、放牧中の牛の行動は十分に把握ができていませんでした。

また、農学・畜産学・獣医学領域を中心に、放牧牛の生産性向上に資する研究は盛んに行われていますが、良い研究成果が必ずしも現場に実装されるわけではありません。動物とともに365日休みなく働く生産者にとって、研究成果を活用するための新たな行動は、日々のルーティンに大きな影響を与え、負担になるためです。

そこで本研究では、益田実証ファームの放牧牛に、東京工業大学COI『サイレントボイスとの共感』地球インクルーシブセンシング研究拠点※3において開発された首輪型センサPETERを装着し、得られた放牧牛の位置情報や行動パターンのデータの活用方法をデザインします。具体的には、対象となる人々や現場のニーズを汲み上げて、ニーズに基づき問題を解決するプロダクト/サービスをデザインする「人間中心デザイン」という考え方に基づき、生産者にとって省力的な放牧牛管理手法のデザインを行います。本研究を通じて、放牧牛の管理を省力化するシステム開発に貢献することで、将来は、誰もが簡単に放牧牛を飼育可能な未来の実現を目指します。

 

◆大橋 匠 氏
2018年、東工大博士課程および技術経営専門職学位課程修了。博士(工学)、技術経営修士(専門職)。2018年より同大学環境・社会理工学院助教を務める(西條美紀研究室所属※4)。2019〜2020年度には、スタンフォード大学Center for Design Researchで客員助教を務めた。博士課程では、電子デバイス研究に従事した傍ら、技術を社会へ如何に実装するかに興味を持ち、現在では、畜産、介護、災害避難などさまざまな領域で人間中心デザインの実践と研究を行う。畜産関連では、アジアの食を支える持続可能なスマート畜産の普及を目指し、主に日本及びタイをフィールドに研究を行う。
※4 東工大・西條美紀研究室の取り組みについてはこちらをご参照ください。

 

◆株式会社リバネス
「科学技術の発展と地球貢献を実現する」という理念のもと、研究成果を社会に実装するための活動に取り組んでいる。地域の未利用資源を活用した飼料(エコフィード)の研究を通して自社を含む5つのブランド畜産物の開発に携わるほか、日本初の肉用山羊の経営技術指標の策定にも取り組んできた。農業や畜産業に限定されない分野横断的な研究を積極的に推進する農林水産研究センターでは、益田実証ファームにて、鹿児島大学とも共同研究を開始し、新しい肉牛生産モデルの構築を目指している。

 

【益田実証ファーム概要】
・所在:益田市喜阿弥町
・面積:10,938平米(約1ha、約11反)
・設備:スタンチョン、水飲み場、電柵、KAKAXI(リモートセンシング機器)
・放牧牛の頭数:2頭(黒毛和種・雌)
・運営体制
運営:株式会社リバネス、株式会社アグリノーム研究所
監修:鹿児島大学、京村牧場、松永牧場、益田大動物診療所

 

【お問い合わせ先】
株式会社リバネス 農林水産研究センター(担当:尹(ゆん)、宮内)
E-mail:[email protected] TEL:03-5227-4198