【実施報告】光泉カトリック高等学校にて、株式会社フォーカスシステムズ・龍谷大学 生物多様性科学研究センター共催のもと、「コップ⼀杯の⽔から考える、琵琶湖の⽔圏環境と⽣物多様性」をテーマとした出前実験教室を実施しました。
株式会社リバネス(代表取締役社長COO 髙橋修一郎)は、2023 年 1 ⽉ 28 ⽇滋賀県草津市にある光泉カトリック高等学校にて、高校2年生を対象に、⽔質調査・DNA 抽出実験を通して琵琶湖の生態系について考察し、未来の琵琶湖の在り方をディスカッションする出前実験教室を実施しました。リバネス講師に加え、特別講師として、⿓⾕⼤学先端理⼯学部の⼭中裕樹准教授(⽣物多様性科学研究センター・センター⻑)に参加いただきました。
⼭中裕樹准教授は、環境DNA研究における第一人者の一人であり、一般社団法人環境DNA学会の専務理事も務められています。また、2017年にはリバネスも参画する、滋賀成長産業発掘・育成コンソーシアム主催の滋賀テックプランターにエントリーし最優秀賞並びにヤンマー賞を受賞し、同年リバネス主催で実施された第1回マリンテックグランプリにおいても最優秀賞を受賞しました。その後も環境DNA技術が生物多様性の保護に繋がる世界を実現するため、多くの活動を共に実施しています。
2021年度からは滋賀県の協⼒のもと、「びわ湖 100 地点環境 DNA 調査」という、市⺠参加型の全県⼀⻫調査を開始しています。本活動は、⿂類等の⽣物が環境中に放出した DNA を利⽤した⽣物調査技術である「環境 DNA 分析」を⽤いた国内最⼤規模の観測であり、琵琶湖の⽣物多様性の保全に役⽴て、SDGs の達成に寄与することを目標に開始されました。2022年度より株式会社フォーカスシステムズが本活動に協賛しています。我々は本活動の意義を広く伝えるため、次世代教育活動に取り組んで参ります。
▲琵琶湖に関する講義を行う山中准教授の様子
当日は講師より、なぜ生態系の調査が重要なのか、山梨県、東京都、神奈川県を流れ東京湾へ注ぐ多摩川の水圏環境を例にレクチャーが行われました。川や湖の環境は、見た目が綺麗だとしても、生活排水を初めとしたヒト由来の化学物質は目に見えない形で蓄積され続け、それらが様々な形で生態系に悪影響を及ぼしています。
そこで、実際に学校の近くを流れる琵琶湖、草津川、そしてミネラルウォーターの3種類を水質調査、プランクトン観察の2つの方向性から琵琶湖の水質環境を調査しました。生徒たちは、目に見えない水環境のわずかな違いが、生き物たちの種類や量に大きく影響していることを学びました。
▲水質調査の様子
▲プランクトン観察の様子 | ▲顕微鏡で観察された琵琶湖のプランクトンの様子 |
実際の調査では、多数の地点を膨大な時間をかけて調査する必要があります。後半では、より短期間で簡便に調査を行うことができる可能性を秘めた環境DNA分析技術について、実際に第一線で研究を進める山中准教授よりレクチャーいただきました。
▲DNAへの理解を深めるための抽出実験の様子 | ▲口腔内細胞から抽出したDNAを観察する様子 |
▲環境DNAに関する講義を行う山中准教授の様子
環境DNA分析とは、生物を直接サンプリングせずに、水や土などの環境媒体に含まれているDNAの情報(生き物が糞や粘液として放出したもの)を基に、そこに生息する種の分布や多様性、量を推定する分析手法です。従来型の生態調査では専門家が現地に赴いて観察・同定する必要がありましたが、この調査手法では「水を汲むだけ」です。生物を捕獲することなく「水から」検出できる簡便さから、生物多様性の観測や水産資源の管理に革命をもたらすとされます。
最後に、グループディスカッションを通じて、2022年に行われた「びわ湖100地点環境DNA調査」の結果をもとに、①琵琶湖のどんな地点にどんな魚が生息しているのか。②結果を琵琶湖は今どんな環境にあるのか、自分たちが琵琶湖の環境を守るためにはどのような活動が必要なのか。を議論し共有しました。
▲どんな生物が生息しているのかディスカッションする様子 |
【生徒のアイデア】
– 資料によると湖南ほど固有種の出現数が減少していることから、生物が棲みにくい環境になりつつあるのかもしれない。 だからこそ、私達は将来の琵琶湖を考え、自分たちの生活を見直していく必要があると考える。
– 外来種の生息域が広いことから、外来種を減らす事が重要であり、アイデアの1つとして、外来種だけを認識して捕獲する機械を開発することを提案したい。また、殺すだけでは可愛そうなので、捕獲した個体は、他の生物のエサとして利活用できるようにしたい。
– 外来種自体に罪はない。一方で固有種を守るためには外来種を減らさなければならない。だからこそ、外来種を捕獲しておいしい料理の食材として活用するようなアイデアをもっと考えるべきなのではないか。
ディスカッション後のまとめでは、講師より「環境課題の解決には、過去と今をしっかりと見つめ、未来を考えていくことが大切。それを今日皆と一緒に体験・共有できたと思う。今後は自分が興味を抱いたものを様々な角度から見つめ、考えを深めていって欲しい。」また山中准教授からは「大学には皆さんが想像している以上に面白い研究をしている先生がたくさんいる。だからこそ、少しでも面白いと思ったらぜひその大学に訪問し、直接話しを聞きに行って欲しい。」とメッセージが送られ、実験教室が締めくくられました。
【実施概要】
名 称:環境 DNA 実験教室
テーマ:「琵琶湖を中⼼とした⽔圏環境と環境 DNA 分析」
⽇ 程:2023 年 1 ⽉ 28 ⽇(⼟)9:30〜12:00
会 場:光泉カトリック⾼等学校(滋賀県草津市野路町 178)
対 象:同⾼校 2 年⽣(⽣物クラス)
内 容:⼤学教員による講義、⽔質調査実験、DNA 抽出実験、ワークショップ
共 催:株式会社フォーカスシステムズ 、⿓⾕⼤学 ⽣物多様性科学研究センター
企画・運営協⼒:株式会社リバネス
リバネスでは、答えのない課題に挑戦できるような出前実験教室を全国の小中高校でオンサイトまたはオンラインにて行っています。実験教室の実施をご希望の方は以下のお問い合わせ先にご連絡ください。
本件に関するお問い合わせはこちら:
株式会社リバネス 担当:小玉・中嶋