太陽さんさん、壁はぴかぴか

太陽さんさん、壁はぴかぴか

新築ではないのにいつもピカピカ輝く家の外壁。そこには,太陽の光を使って汚れを落とすキレイ好きなお化けがいるよ。

必殺技は酸化力!

芝浦工業大学 工学部 建築工学科 教授 本橋 健司新築の建物の壁や屋根の仕上げに,塗料は欠かせない。単純に色をつけるだけでなく,建築材料をサビによる劣化などから守る役割があるからだ。最近では,夏の暑さを防ぐために太陽光を反射するなど,いろいろな能力を持った塗料が開発されている。洗わなくても自然に汚れが落ちる「光触媒塗料」もそのひとつだ。秘密は,配合されている酸化チタンにある。酸化チタンの原子には,太陽光を浴びるとマイナスの電気を帯びた電子が飛び出しやすいという特徴がある。電子が抜けた後の酸化チタンは,周りの物質から電子を奪ってもとの状態に戻ろうとする「酸化力」を持つため,壁についた排気ガスなどの汚れのもととなる有機物を分解することができるのだ。また,光触媒塗料は非常に水となじみやすい性質を持つため,雨が降ると壁面についた油汚れの下にもぐりこみ,洗い流すことができる。

お化けの世界も適材適所

しかし,原理はわかっていても,高速道路が近く空気の汚れがひどかったり,梅雨時期で湿度が高かったりするなど実際の建物が置かれる環境はさまざまで,それに合わせた使い方をする必要がある。芝浦工業大学の本橋健司さんは,排気ガス汚れのひどい高速道路の料金所に光触媒塗料を塗ったパネルを放置するなどの実験を行い,どんな条件で最も汚れが落ちやすいのかを調べている。成果のひとつとして,雨水が屋根から伝わってくる壁では汚れができやすいのだが,光触媒塗料を塗った壁では汚れにくいことがわかった。また,壁にどの程度の太陽光があたれば「光触媒塗料」の効果が発揮されるのかということもわかった。 こうした研究の積み重ねで,実際の建築現場で塗料の使い方や選択方法がようやく見えてくるのだ。「将来は,お風呂場では防かび,屋根には太陽光発電など場所に合わせた機能を持つ塗料の開発が進むでしょう」。お化けがたくさんいればいるほど,私たちは快適に暮らしていける。(文・ 熊谷 諭)

協力:芝浦工業大学 工学部 建築工学科 教授本橋 健司
【プロフィール】1981 年,東京大学大学院農学系研究科修了。農学博士,博士(工学)。建築研究所材料研究グループ長・建築生産研究グループ長を経て,2009 年より現職。

http://www.kk.shibaura-it.ac.jp/motohashilab.html
本橋研究室 – 芝浦工業大学工学部建築工学科

 

 

 

 



塗料に隠れているお化けを探し出そう!

ここで紹介した以外にも,さまざまな機能をもった塗料が開発されている。どんな種類の塗料があり,そこに,どんな化学物質が何のために配合されているのかを,図書館やインターネットで調べてみよう。

◆someone賞の詳細についてはこちらをご覧ください。
http://someone.jp/someoneaward01/

<研究課題テーマ一覧>
水の保冷剤で実験してみよう!
塗料に隠れているお化けを探し出そう!
高分子化合物ハンターになろう!
身近なもので「散逸構造」をつくってみよう!
成績が上がる!? 眠り方を調べてみよう!
霧箱で目に見えないものを見よう!
トノサマバッタの色を変えよう!

 

 

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