【教員研修会】第17回天の川を見上げて授業をしよう(株式会社ビクセン)

【教員研修会】第17回天の川を見上げて授業をしよう(株式会社ビクセン)

長田先生

京都大理学部卒。同理学研究科博士課程修了、理学博士。ハワイ大天文学研究所PD 研究員、京都大理学部助手、名古屋大理学部助教授などを経て、現職に至る。専門は赤外線天文学、星間物理学、観測装置開発。口径3.8 mの新技術望遠鏡を建設するプロジェクトを進めている。

遥かむかしの天の川に、星の湧き出る泉があった

夏の夜空を横切るような帯状に見える天の川。1枚の円盤状に広がった銀河系の内側に私たちの地球は存在しているため、ちょうど円盤を内側から見た姿が見えているのです。天の川銀河の秘密が隠れていると考えられている銀河中心は、星が密集し、超大質量ブラックホールや大量のガス、強い磁場が存在するなど非常に特殊な環境といわれています。観測しようにも濃い星間塵で観測が難しく、未だ多くの謎に包まれています。今回その謎の一端を解明したのは、高校の教科書にも載っている「セファイド変光星」でした。

銀河系の中心を探れ!

セファイド変光星とは、太陽の約4 ~12倍程度の質量をもつ星が進化した姿です。重い星ほど明るくなり、2 ~ 100日の周期で明るさが変わります。周期と「星の明るさ(絶対等級)」および「年齢」との間に相関があるため、周期から星までの距離(見かけの明るさとの比較)と、その星が誕生した時期を推定できます。天体1つから多くの情報が得られるため、研究において重要な存在です。天の川銀河では、太陽系周辺を中心に多くのセファイド変光星が見つかっています。しかし、銀河中心では、セファイド変光星は見つかっていませんでした。

ついに、脈動する3つの星を発見!

星間塵の向こう側に隠れたセファイド変光星を探すには、星間塵の影響を受けない近赤外線による観測が必要です。しかし、もっぱら世界最大級(口径8mクラス)の望遠鏡にだけ近赤外線カメラがついており、特定のグループが専有して使うことができませんでした。そこで、京都大学の長田哲也先生は「小さな望遠鏡に赤外線カメラをつけ、銀河中心を連続撮影すれば、明るさの変わるセファイド変光星を発見できるのでは」と考えました。
研究グループは、名古屋大学と国立天文台が南アフリカに建設したIRSF望遠鏡(口径1.4 m)と、SIRIUS近赤外線カメラを用いて、銀河中心部方向を、2001 ~ 2008年になんと約90回にもわたって繰り返し観測しました。まず見つかってきたのは、1364個の長周期(ミラ型など)変光星で、そのうち143個の距離を測定することで、太陽から銀河中心までの距離が約8キロパーセク(1パーセク=3.26光年)と判明しました。さらには、8万もの星の撮像データを調べ続けたところ、ついに、周期性を持って明るさが変化する、3つのセファイド変光星を世界で初めて発見したのです。

「星」の発見から、「歴史」の発見へ

これまでに天の川銀河で見つかっていた数々のセファイド変光星の脈動周期はそれぞれバラバラでした。これは銀河形成の長い歴史の中で常に星が生まれ続けてきたことを示しています。しかし驚いたことに、今回銀河中心付近で見つけた3つのセファイド変光星の周期は、20 ~22日といずれも非常に近い値だったのです。この変光周期から、約2500万年前にそれらの星がすべて生まれたことがわかります。
つまりこの結果から、銀河の歴史の中で、「ベビーブーム」のように星が集中して誕生した時期があったという可能性が示されたのです。なぜ星の作られるペースが変化するのか、星を作る原料となるガスがどのように銀河中心に供給されるか、など多くの謎を投げかけたこの発見は、星形成の歴史が詳しく調べられた初めての結果として、2011年に科学雑誌『Nature』に掲載されました。長年観測され続けている星も、それを観測する方法や視点を変えることで、これまでにない新しい宇宙の姿が、次々と見えてくるのです。

 

注目!

8月5日に長田先生をお招きして教員研修会を開催します!詳細は下記をご覧下さい。

普段の授業、特別活動のネタ探しに! 第17回 天の川を見上げて授業をしよう(教員研修)

日 時: 8月5日(月)13:00 ~ 17:00
締 切: 8月3日(土)
対 象: 中学校・高校・高等専門学校の教員 20名
場 所: 追手門学院大手前中学校高等学校 理科室(教育応援vol17の「追手門学院中学校高等学校」は誤りです。誠に申し訳ございませんが、お間違えのないようお願いします。)

〒540-0008 大阪府大阪市中央区大手前1-3-20
※大阪市営地下鉄谷町線 天満橋駅から徒歩7分
主 催: 株式会社ビクセン
企 画: 株式会社リバネス
協 力: 国立天文台

申込:こちらから