生産現場レポート―有機農業の現場から 三つ豆ファーム山木幸介氏

東京から車で約2時間。千葉県の山武市に有機農業に取り組む三つ豆ファームはある。代表の山木幸介氏(35)は、もともと大学院で微生物を用いた環境浄化について研究しており、修士号を持つ。研究をするうちに、生態系の中での農業のあり方を考えるようになり、環境負荷をできるだけ軽減した農業を実現したいとの想いから、有機栽培を行う生産者になることを決意した。

農業生産法人での研修を経て、3名の新規就農者同士で「三つ豆ファーム」を立ち上げ、千葉県山武市で生産を開始したのは2005年1月だ。科学的素養を持ちながら、農業に取り組む山木氏に、実際の現場について伺った。

ノウハウはやりながら貯める

三つ豆ファームの圃場を訪れたのは、4月中旬。ミニ大根の出荷が佳境を迎えていた。11時頃から、作業を手伝いながら話を伺った。「花芽が出ているものや、形が悪いものは出荷できないね」。そういいながら、生育状況を確認し、出荷するダイコンを決めていく。手際よく収穫されたダイコンは、次々とコンテナに収められていく。ダイコン120本の収穫を終え、隣の圃場にあるスティックセニョールの株元に雑草を抑えるための土寄せを行ったところで午前の作業が終了した。

現在の栽培品目は年間で30品目以上。稲作は行わず、野菜に特化して栽培している。これでも有機の生産者では少ない方だという。出荷方法は生産法人を通じて市場に出すか、生産者仲間で届けている野菜パックだ。「多い人だと100品目やっているところもあります。野菜パックをやっていると、季節によっては出荷できる品目が限られてしまうので、品目を増やしてカバーできるようにしています」。そこまで多くの品目を栽培するのに、栽培ノウハウはどのように獲得するのか。「栽培ノウハウは、一から作り上げます。まずはやってみること。行き詰ったり、わからないことが出てきたりしたら、先輩の生産者に聞く。そうやってノウハウを蓄積しています」。

 

環境モニタリングシステムを活用したい

昼食が終わったら、午後は5月初旬に作付するサトイモの種イモづくりだ。親イモから子イモを手で外し、大きさで選別しながらコンテナに入れていく。この子イモが、今年作付するサトイモだ。今、山木氏が注目している農業技術はどんなものなのか。「ICT技術には興味がありますね」。実際の生産現場では、栽培に関わる要素が多すぎて、ただ生産をしていただけでは、何が良かったのか、あるいは悪かったのか、フィードバックすることは不可能だという。「知っておきたいのは、天候、温度、湿度、地温あたりですね。そのデータを、各圃場で毎日蓄積し、栽培が終わった後に見返して、その年の出来と比較できるととても助かります。そういった、手軽に環境をモニタリングできるシステムがあれば、とても助かると思います」。

就農して、今年で8年目を迎える。当初は生産だけでは十分な収入が得られず、アルバイトをしたり、農業体験イベントを開催したりすることで、じょじょに安定してきた。そろそろ、また何か新しいことをしたいと考えているという山木さん。科学的な視点を持ちながら取り組む生産活動に期待したい。