食の課題を解決し、 豊かな食の創造を目指して 三井化学

食の課題を解決し、 豊かな食の創造を目指して 三井化学

リバネス研究費三井化学賞設置の想い

世界の爆発的な人口増加に伴い食糧問題が深刻化し、農作物の安定生産やフードロス・廃棄削減は大きな社会課題となっている。国際連合食糧農業機関(FAO)の調査によると、世界全体で食料の約3分の1、量にして年間約13億トンが無駄になっている。三井化学は、自社の強みを活かしながら、このような社会問題の解決に取り組むべくフード&パッケージング室を立ち上げた。今回は、その事業を推進されているグループリーダーの昇忠仁氏にお話を伺った。

世界的な食糧問題の解決に挑む

 「フード&パッケージング事業は、世界的な食糧問題解決に貢献する領域、農作物の安定生産、フードロス・廃棄削減、食の安全、安心といった社会的なニーズに応えることを目指しています。」と昇氏。三井化学は、これまでに化学品の原料や素材を顧客へ提供してきたが、東南アジアをはじめとする新興国の台頭による環境問題の深刻化、途上国の人口爆発や先進国での高齢化といった社会課題に対し、事業活動を通じて貢献できるように事業変革を進めている。フード&パッケージング事業もそのひとつであり、食糧増産、新農業システム、フードロス低減、環境負荷低減に貢献すべく農薬や食物栽培システム、食品包装材料などの開発を行っている。目指すは、自社技術の強みと外部技術の組み合せによる食の課題解決だ。

外部技術の組み合せで新たな価値創造を

 これまでの事業では、食品用包装材料分野において機能性フィルムを素材として顧客へ提供してきたが、今後は素材単体だけでなく、外部の持つ機能性フィルムやパッケージ、システムを組み合せて、トータルソリューションとして顧客へ提供していきたいと昇氏は考えている。フードロス・廃棄を例にすれば、損失は生産から流通、保存さらには消費の各過程で起きており、単一の素材や原料でソリューションを提供するより、サプライチェーンの多様なステップで複数のソリューションを組み合せていくことで、効果的にフードロス・廃棄の削減ができるだろう。例えば、国内の一般家庭において賞味期限切れなどで廃棄されるフード廃棄量は年間200〜400万トンとされるが、そのようなフード廃棄削減のアイデアとして、食材に賞味期限情報が入ったタグと賞味期限管理システムが付いた冷蔵庫の組み合せが考えられる(図参照)。

図 農業食品分野における機能価値発現のためのソリューション例 上記以外に「鮮度」、「美味しさ」などの評価や検査技術についても新たな価値を創造していく上で必要なソリューションとなる。

図 農業食品分野における機能価値発現のためのソリューション例
上記以外に「鮮度」、「美味しさ」などの評価や検査技術についても新たな価値を創造していく上で必要なソリューションとなる。

情報タグが付いた食材は管理システム付の冷蔵庫に入れると同時に認識、管理され、状態が把握でき、賞味期限に近づくと冷蔵庫にアラートが表示されれば見落としはなくなるだろう。またその食材を使った料理のリコメンドができれば、無駄なく使うことができるかも知れない。「このような価値を創造していくためには、自社技術だけでなく、大学で得られた新たな技術を活用するオープンイノベーションが必要であると考えています。」と昇氏は産学連携にも期待を寄せている。

豊かな食の創造を目指して

 今回のリバネス研究費三井化学賞では、人々の健康で充実した生活を支える「食」を科学の力でサポートしたいと考え、「豊かな食を創造する」テーマを募集している。例に挙げた農業分野だけでなく、水産、畜産分野のサプライチェーン上のあらゆる技術、システムも対象となる。畜産現場で廃棄される糞を利用したバイオマス発電のような研究は、一見応募の対象分野外かと思われるだろうが、環境負荷低減や生産現場の課題解決にもつながることから対象分野にあたる。「サプライチェーンを改善するニーズは非常に大きいと同時に、コストをかけづらいところであると考えています。そのため革新的であるだけでなく、コストも加味した技術やシステムの研究テーマを期待したい。」と昇氏は語ってくれた。

リバネス研究費三井化学賞

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