東南アジアのジャングルで考えた事…

東南アジアのジャングルで考えた事…

オーストラリアの修士課程を終え、ユーカリの森で時間を過ごすエクスパートになった私は、日本へ帰国する前にバンコクに寄り道をした。何故か?大学院に通っている間に両親は再びタイへ戻っていたのだ。「バンコクで就職活動してみれば?」という何の気なしの母の言葉に「そうだねぇ~」と調子を合わせてしまった。

タイ語も出来ないのに、就職なんて出来ないだろうと高をくくっていた私。とりあえず、自然保護団体や大学などメールアドレスを見つけた人へ片っ端からメールをした。履歴書を送り面談をお願いし続けた結果、3か月後にはKing Mongkut’s University of Technology ThonburiのResearcherとして仕事に就いた。

この面談の時も私は、面接官に「熱帯雨林のジャングルですか?大丈夫です。一人でも怖くないですよ」。経験したことはなかったが、ユーカリの森とそんなに違うことはないだろう、どうにかなるという変な自信に充ち溢れた私は、ジャングルでの仕事を引き受けたのだ。普通なら断っていてもおかしくないのかもしれない。しかし、私はなんだか面白そうだなと思っていた。

もちろん、ジャングルがそんなに甘いところではないということを私は調査1日目に知ることになる。ユーカリの森と違い、熱帯雨林のジャングルの中では鳥の姿を見ることが難しい。そこで、泣き声、さえずりを覚える必要がある。双眼鏡を覗きながら、もしかして珍しい鳥を見ることができるかもという期待をしながら倒木の上に座っていた。

暫くすると視線を感じた、というか第六感だろうか・・・なんか気になって双眼鏡を下してみると蛇がこちらを見ていた。毒蛇かどうかも分からないまま、反射的に倒木から立ち上がった。と、同時にどう見てもこれは図鑑で見た事のある種類の蛇だということが分かった。そう、私の目と鼻の先にまぎれもないコブラが立ちはだかっていた。

その時初めて、誰も森でコブラにあったら何をするか教えてくれなかったっ!と思ったがもう遅い。何の根拠もないが、とりあえず相手の動きを見られるようにコブラを見つめた。そして心の中で叫んだ、「私はあなたに危害を加えるつもりはありません!!!!!」。その願いが届いたのか、興味を失ったのかは分からないがコブラは頭を大きくふくらせたまま、バックしていった姿は今でも目に焼き付いている。

この時、人間一人になった時の無力さを実感した。そしてまた、この命の危機ともいえる状況を乗り越えたことで今後どんなことがあっても言葉の通じる相手であれば乗り越えられるのではないかと確信をもつようになった。