外部資金活用のススメ
~研究開発を加速させ、産学連携を成功に導くために~
第1回 補助金活用を視野に入れよう!
研究費の獲得は、研究を進めるためだけでなく新たな分野へのチャレンジに必要不可欠です。もちろん得られた研究成果を社会に還元するにも資金が必要になります。民間企業においても新事業創出のために研究開発を怠ることはできませんし、大学の先生方との連携は不可欠な時代となっています。新コーナー「外部資金活用のススメ」では、研究者も企業もお互いにWIN-WINとなる関係を構築し、産業へと発展させていくポイントについて、外部資金の活用という切り口から3回の連載予定でお届けします。
獲得可能な外部資金は3,000 件以上
研究者にとっての外部資金は文部科学省の競争的資金、いわゆる科研費等が良く知られたところかと思います。事業化という色が強いところでは、研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)も挙げられますが、産学連携においては、経済産業省の研究開発関係の補助金が活用されることが多いと思います。そのほかにも各自治体や関連する外郭団体、財団等、企業が交付する補助金もあり、その数は3,000 を超えるといわれています。研究開発費はもちろんのこと、外注加工費、調査費用、人件費などにも活用できる補助金も多く、連携する企業にとってもありがたい内容です。いずれの外部資金を活用するにも、その補助金が交付される意義や目的をしっかりと理解することが必要です。
活用にあたっての留意点
これら補助金は、年に1~2回の公募であることが多いです。ときには2次募集、3次募集が行われることもありますが、毎年どの時期にどのような公募があるのか傾向を前もって調べておくと良いでしょう。そのとき、金額や補助率の他、何に使えるのかも十分に確認することを忘れてはいけません。またこの手の補助金の多くは、事業実施後に支払われる形が一般的ですので、資金の先出しができる体制や企業体力が必要です。なお、使った後の検査で、経費として認められなかったということも少なくないので、何に使えるのか、どのような手続きで使用できるのかについては、特にしっかりと注意したいところです。
ホンネのトコロ 研究開発補助金の担当歴がある行政職員 Tさん
事業者と行政の間に立って数多くの事業に接してきたTさんは、補助金をより良く活用して欲しいという思いも強い。担当者目線での産学連携事業の成功ポイントについて話を伺った。
産学連携の体制でのぞむ研究開発事業は、民間企業単独では解決が困難でかつ時間もかかる課題に対して取り組み、事業化を目指すものです。一朝一夕に連携相手を見つることは困難なので、交流会などの活用や日ごろのお付き合いも大事かと思います。
補助金の活用にあたって、まず重要になるのが適正な計画です。想定する課題さえ解決できればすぐにでも事業化できると見込んでも、その課題解決が思うように達成できずに途中で止まってしまうことが多々あります。何をどこまでやるのかを明確にし、資金計画、スケジュールをしっかりと立てることが非常に重要なポイントです。そうすることで、その先の事業化や展望もわかりやすくなり、結果、採択もされやすいのです。また、技術だけの話にとどまらずに、その先の儲けがわかるように計画して欲しいと思います。
事業の実施期間中には、常に計画と現状を確認しながら進めて欲しいと思います。これは必ずしも計画通りに実施することが目的ではありません。2~3年の事業ですと、当初の計画どおりに進めても成果が出ないこともあります。それがわかった時点で柔軟に計画変更して欲しいのです。補助金の交付元や担当者によっては難色を示すかも知れませんが、計画通りに実施したという結果よりも、事業化できる実質的な成果を望むのは、どのような交付元においても総意としてあると思います。当初の計画に縛られ過ぎずに、本来の目的に向かって事業を推進して欲しいと思います。
出口においては、3年程度の研究開発期間を経て市場が変化していることも少なくないのが現状です。当初に目標とした結果が得られたとしても実用化せずに終わるような例もあるので非常に残念です。事業実施期間中の計画変更もそうですが、出口のターゲットも柔軟に考えていただき、想定とは異なる分野での展開も視野に、その成果の活用を広げて欲しいと思います。
最後に、行政機関内で度々議論される補助金の賛否についてです。本当に事業化して売っていく意思があるなら自費であってもやるはずというのが否定派の論拠です。リスクをあまり取らずに補助金活用を考えるのは、売って儲けるという本気度が低いという見方がされてしまうのです。上手に補助金を活用して、その結果、しっかりとした成果が得られたという事例が、お手本として増えていって欲しいと思います。