Tech Planグランプリ 異分野、異世代とともに ものづくりの限界を超える

Tech Planグランプリ 異分野、異世代とともに ものづくりの限界を超える

株式会社板垣製作所アールエスエフ事業部代表
板垣宗太郎さん

商品企画からデザイン、製造までを一気通貫でプロデュースする板垣製作所。2011年には新しい車の楽しみ方を提案する新ブランド「アールエスエフ」を立ち上げるなど、墨田区ではひと際異色を放つ町工場だ。いま、時代の激しい変化に対応すべく、単独のものづくりからの脱却を図ろうとしている。

ひとりで考えることの限界

板垣製作所の3代目板垣宗太郎さんは、無類の乗り物好き。峠コースやサーキットを走行し、タイムを競い合うモーターレースに本格的に参戦していたことも。趣味が高じて、バーチャルの世界で車のレースをいかに楽しむかを追求するアールエスエフブランドを立ち上げた。近年若者の車保有率が低迷する中、「本当は車が好き!」という思いを抱く人はむしろ増加傾向にあると考え、彼らの欲求を満たす新たな打ち手として、Driving Force GTというレースゲーム用のハンドル型コントローラーアップグレードパーツ「Paddle shift System」の開発に着手した。現在までに1万1千台を販売しており、同ゲームユーザーの25%が使用する商品に成長した。マニアックなまでに趣味にのめり込む板垣さん自身が欲しいと思うものを形にしたことが、同じマニア層にうけ、口コミで広がっていったのだ。車以外にもロードバイクなど多彩な趣味を持つ板垣さん。「一つのところに隠っていては、時代の動きは感じられない。趣味や遊びの中から新しいアイデアが見つかることがあるんです。」という。アクティブという言葉がピッタリ当てはまる板垣さんだが、自身の年齢も40歳に近くなり、時代の変化が激しくなっている中、ひとりで時勢を読むのも限界が来ていると感じているという。

モノの価値がなくなった時代を経て

板垣製作所は、創業当時から日用雑貨・日用品の開発、製造を主事業として営んできたが、マス広告からセールス・プロモーションへという業界の流れが起こり、 ノベルティや販促品が出回るようになったため、2000年〜2009年は自転車操業以上に苦しい時代を過ごした。販促品の品質はどんどん上がっていく一方、普通は500円〜1000円で売れるようなものが100万個単位で無料配布されていた。「ストラップやコースターなんかはただでもらえた時代。ここ10年で急速にモノの価値がなくなっていった。何かやらなきゃ、世の中にないものを作らなければと思いました。」しかし、一定レベルの生産体制とものづくりの水準を保ちつつ、新しいものを生み出していく場所はいくらあっても足りない。「ものづくりの現場では経験がありますが、突き詰めた専門知識は持ち合わせていません。自分たちだけでやるのでは限界だと感じました。」

異分野の若者たちに寄せる期待

何度か他の町工場と組んで商品開発に挑戦したこともあったが、うまく進まなかった。「ものづくりはかなりのエネルギーが必要で、最初の一歩が出ない人と一緒に組むのは難しい。同じ歩調で歩いていけない。」そんなとき、リバネスと出会い、自分にないソースを持っている異分野の人材に可能性を感じたという。リバネスを基軸に集まってくる若いエンジニアや研究者、アクティブな人・会社と接点をもち、今までにないイノベーティブな空間に身を置くことで、多様なアイデア、豊富なソースを活かしたチームでのものづくりが推進できるのはないかと期待している。「若者の知に触れることで、自分ひとりでは限界だったことができるようになるかもれない。いまの若者が何を考え、何に興味を持ってものづくりをしているのかを知りたいです。」日本のものづくりの行く末を真剣に考えるからこそ、異分野の考え方を尊重し、互いの持てるソースを最大限に活かす環境作りに余念がない。

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