元フィールド研究者 キホコの留学放浪記#1
今回から始まった『元フィールド研究者 キホコの留学放浪記』。
このコーナーでは4回にわたって学部生から博士号取得まで海外で研究をしてきたフィールド研究者、徳江紀穂子が研究者の留学にまつわる疑問に答える。
その1留学前 ~フィールド研究者トクエキホコの場合~
海外留学はなぜするの?
私は、中学生の時に英国へ語学留学、高校はインターナショナルスクールに通った。学部はアメリカ、修士はオーストラリアでミツスイの行動生態学を研究し、研究者としてタイのジャングルでクロエリヒタキの繁殖行動を3年間観察したあと、オーストリアのマングローブ林に生息するカッコウの研究をしながら、日本の大学で博士号を取得した。それぞれのステージで異なる国の研究者と共に研究してきた。留学に興味があるけれどもなかなか踏み出せない人の頭にもたげてくるのが、「日本で研究者になるのであれば留学は必要ないのでは?」という疑問。留学の目的は英語の習得?泊がつくから?トップ研究者の
下に身をおきたい?様々あるが、たしかに留学しなくても研究者にはなれる。私が留学してよかったな、と思えたことは、多様な価値観に触れられたことだろう。どんな国の人、考え方の人とでも仲良くできるようになり、「どこへ行っても大丈夫」という自信がついたのだ。ベンチャー企業で世界中の研究者とのネットワーク構築に邁進している今、その多様性を許容できるマインドは自分の武器になっている。
他人と違うことがしたい私の留学先の選び方
指導教官の推薦、論文の著者にアタック、国際学会での出会い、学費の安さ、など留学先の選び方は様々だろう。動物の研究をしに大学院に行くぞと意気込んでいた私にはどの国で研究しようと大差はなかった。他のインターナショナルスクール卒の日本人学生が帰国子女枠で日本へ帰るのを見て、人と違うことをと思って留学したのだ。行動生態学の研究ができる大学の中で、アメリカだったら東海岸という憧れから母校に進学した。
修士進学時の留学先を決めた動機はさらにいい加減である。1年目に1つの大学院しか受験しなかった結果、見事に失敗。1年後の再受験ではアメリカ・オーストラリアの両国の大学へ申請書を提出した。アメリカ以外で研究をしてみたかったし、英語圏ならやっていけそう、という根拠のない自信があった。ニューイングランド大学に決めたのは、審査結果の知らせがいち早く届いたからだ(笑)。それが後に私の指導教官になる人からの直接オファーである。その教員の人柄も感じられ、田舎に留学する日本人はきっと少ないだろうという天邪鬼な性格も相まった。実際、その大学には日本人が1人もいなかったのである。
星の数ほどある世界の大学の中から留学先を選ぶのは難しい。最終的には直感を信じていいのではないだろうか。他の人とは違う経験ができそうな留学の道を選ぶのもアリだ。そんな私が留学先でどんな研究生活を送っていたのかは次回をお楽しみに。
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