研究成果やナレッジで、 次世代の農林水産を 切り拓くために

研究成果やナレッジで、 次世代の農林水産を 切り拓くために

ここまでにアグリプレナーに必要な資質について押さえ、AgriGARAGE セミナーレポートでは次世代農業やスマート農業の実現による生産現場の変化からどのような展開が可能か、事例を紹介した。最後に、読者の皆さんの研究成果やナレッジを事業化へ結びつけるために必要なアクションを考えていく。

生産現場で課題をみつけ出す

 農林水産分野における社会的な課題が広がっており、その解決に向けて新たなチャレンジを開始するアグリプレナーが生まれ始めている。そして、彼らは過去に蓄積されてきた、またこれから生まれる農林水産分野の研究成果と、その根底にある研究者のナレッジに大きく期待している。アイデアがあっても、それを実現にまで押し上げる技術的バックグランドは不可欠だからだ。
しかし、本誌06 号のスマート農業特集でも言及した通り、研究成果は生産現場への活用まで到達しにくくなっている。研究成果とナレッジを現場に活用するためには、まずは研究者や学生の皆さんが、生産現場に直接足を運び、その実際を知ることが必要ではないだろうか。その場でしか感じられないことを感じ、どのような作業をどんな人が行っているか、それを踏まえてご自身のナレッジの活かし方を考えることが、スタート地点となるだろう。
 大学の地域連携機関や自治体窓口、圃場での実証研究に取り組む先生方、友人の実家など、探ってみれば意外と身近なところからも生産者へつながることが可能なので、ぜひ試してみてほしい。どのような応用が可能か考えるにあたって、有益な時間となるだろう。

異分野・所属にこだわらないコミュニケーションを

 また、ご自身のアイデアやナレッジにこれまでにない何かを付与したい、あるいは要素技術が足りず、実現への糸口がみえないと感じておられる方は、他分野の方や、違うアイデアをもっている方とのディスカッションを行ってはいかがだろうか。同じような課題に向けて、違うアプローチで研究や開発を行っている方、あるいは全く他分野だが、組み合わせることで課題解決が容易になる技術やサービスをもつ方など、分野や所属にこだわらず広く見渡せば、必ず有益なコラボレーションが生まれるはずだ。最近は、アイデアソンやハッカソンといった、グループワークでソリューションのアイデアや形を作るイベントも盛んに行われている。この7 月には水産分野で初めてハッカソンが開催されるなど、参加の機会は増えている。
 1つの企業や個人では、成せることは限られる。農林水産に限った話ではないが、外部との積極的なコミュニケーションとコラボレーションを生み続けることが課題解決に向けて今後非常に重要になる。アントレプレナーにとっては、研究者、学生の皆さんもそのコミュニケーションの対象であり、広く門戸を開いていただくことがその第一歩になると考えている。

 今号10 ページからは、これからアグリプレナーの活躍を支えるプラットフォームとなることをめざすアグリプレナーグランプリと、これに期待する企業の方の声も紹介しているのでご参照いただきたい。

出展:『AgriGARAGE』07号、8ページ

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