サイエンスブリッジNews:ノーベル医学・生理学賞に大村智さん!中高生向けに解説します。

サイエンスブリッジNews:ノーベル医学・生理学賞に大村智さん!中高生向けに解説します。

リバネスの教育応援プロジェクト事務局では、毎週火曜日、中高生向けに、最新のサイエンスニュースをわかりやすく解説する『サイエンスブリッジNews』を配信しています。本日は、ノーベル医学・生理学賞に日本人研究者の大村智さん!ということで、いち早く解説記事を配信いたします!

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朝ごはんは何を食べましたか?和風に納豆と味噌汁という人もいれば、洋風にパンとヨーグルトなんていう人もいるでしょう。さて、これら4つの食べ物に共通することはなんでしょう?それは、すべて微生物の力を借りて作られていることです。北里大学特別栄誉教授の大村智さんとドリュー大学のウィリアム・キャンベルさんは、微生物が作りだすエバーメクチンを発見し、昨日、2015年ノーベル生理学医学賞を受賞しました。

大村さんは日本の様々な土壌を集め、微生物の性質を調べました。その中で、エバーメクチンを作る微生物Streptomyces avermitilisを発見しましたエバーメクチンが特に貢献したのはオンコセルカ症の治療です。オンコセルカ症は、ブユに刺された際に糸状虫という寄生虫に感染し、糸状虫の成虫から生まれた幼虫が目や皮膚などに移動して起こる病気で、激しいかゆみや失明につながります。エバーメクチンは、糸状虫の神経や筋肉の細胞の膜にある特定のタンパク質にくっつき、神経や筋肉をマヒさせることで糸状虫を死に至らせます。さらに調べてみると、同じタンパク質でも哺乳類のタンパク質にはくっつかないため効果はなく、糸状虫などの寄生虫とダニのような節足動物にも効果があることがわかり、薬として高い効果をもつことがわかったのです。1995年からはアフリカオンコセルカ症対策計画(APOC)が発足し、エバーメクチンから生まれた薬を集団投与することで、現在までに19カ国で年間9000万人を治療し、毎年1.1億人を感染のリスクから救い、4万人を失明の危機から救っています

最近では腸内細菌が健康だけでなく性格や感情にも影響を与えている可能性を示す研究も報告されています。花粉症も、現代社会では清潔すぎて微生物に触れる機会が減ったために患者が増加しているという説も挙がっています。ごく最近、人工物であるプラスチックを分解できる微生物も発見されました。地球に誕生して40億年もの間、微生物は実に様々な環境に対応して進化し、多様な性質をもつものが生まれてきました。人類の歴史はたかだか20万年、目に見えない微生物が本当に大きな存在に見えてきますね。あなたの身近にも、だれも知らない微生物がきっといるはずです!