【実施報告】 「ロールス・ロイスサイエンスキャンプ2019」を国立大学法人 島根大学にて実施しました

【実施報告】 「ロールス・ロイスサイエンスキャンプ2019」を国立大学法人 島根大学にて実施しました

株式会社リバネスは国立大学法人  島根大学(学長:服部泰直)にて、2019年10月5日(土)・6日(日)の2日間でホバークラフト開発のサイエンスキャンプを実施しました。本プログラムは、ロールス・ロイス ジャパン株式会社(代表取締役社長:露久保治彦)が航空宇宙産業を担う次世代の人材を育成する目的で主催し、島根県、島根県教育委員会の後援、島根大学の協力のもと、株式会社リバネスの企画運営によって開催されたエンジニアリング・エデュケーション・プログラムです。本プログラムには、島根県内の高校生17名が参加しました。

 

本プログラムは、今年で3年目を迎え、毎年、日本各地で開催してきました。今年もプログラムでは、高校生らがロールス・ロイスのビジョンに基づき、動力の「パイオニア」として、ホバークラフトの開発に必要なエンジニアリング講義を受け、ホバークラフト開発を行いました。プログラムの最後には参加者が開発したオリジナル・ホバークラフトの走行能力や、開発プロセス及び機体の特徴に関するプレゼンテーションで競いました。今年度はロールス・ロイス社のグローバル文化に触れるため、プレゼンテーションの一部を英語で行い、自分たちが作り上げた機体に込めたビジョンを世界展開できる形で伝えることに挑戦しました。また、島根大学の協力により、金属素材に関する研究を行う研究室の見学ツアーも行い、参加者は最先端の研究内容や環境に触れました。

 

・サイエンスキャンプ1日目
1日目は、ロールス・ロイス ジャパン株式会社代表取締役社長 露久保治彦氏による、ロールス・ロイス社の手掛ける事業や本プログラムから未来のエンジニアが巣立ってほしいという情熱的な挨拶からスタートしました。また、島根大学学長の服部泰直氏が、自身のこれまでの経験を交えながら、まずはやってみることの大切さを話すと、高校生たちは真剣なまなざしで聞き入っていました。次に、基本形となるホバークラフトを作りながら、その動作原理を学びました。その後、流体力学講座やロールス・ロイス ジャパン株式会社エンジニアリング&テクノロジーディレクター 小山大祐氏による技術講座を受け、開発に必要な基本情報を得ました。また、4〜5人でチームを組み、その機体開発によってどのような世界を作りたいのかを表すビジョンを話し合いました。

午後にはチームごとにホバークラフト開発を行いました。基本設計を形にするのに集中するチームや、エンジニアリングを行う上で大切な、数値を元にした開発を行うチームなどそれぞれ異なる作戦で臨んでいました。ロールス・ロイス社のエンジニアによるアドバイスを受けながらモーターやプロペラの条件を変化させて風速を調整したり、午前中の講義をヒントにプロペラの吐き出し側に筒を付けて圧力を強めることに試みるなど様々な工夫を凝らしていました。


開発の様子

モーターに筒を取り付ける様子

 

初日の終盤には、教室の一角に設置された全長3mの試験走行空間を使って試験走行を行うグループも現れ、その場で検証したり、試行錯誤をしながら、開発を進める様子が見られました。1日目の開発時間を終えた後、コンテストのリハーサルを行い、その中で経過報告のプレゼンテーションを行いました。最後には、プレゼンテーション講座を行い、プレゼンテーションの意義や考える上でのポイントを学び、露久保氏も交え、英語ならではの表現方法のコツを対話形式で楽しく学びました。1日目は、プログラム終了後も残って作業をする班もおり、参加者がいかに夢中になっているかが感じられました。

 

・サイエンスキャンプ2日目
2日目は、島根大学次世代たたら協創センター副センター長 北川貴一氏による地域を支える金属材料産業の講義から始まりました。各チームとも試験走行を頻繁に行うようになり「コース上で回転してしまう」「途中で摩擦などで止まってしまう」「電池が持たない」などの現実的な課題とぶつかりながらも、ロールス・ロイス社員と議論しながら、解決に向けて試行錯誤しました。ロールス・ロイス社員や島根大学の教員も技術的な議論やプレゼンテーションのアドバイスに参加するシーンもありました。刻一刻と開発終了時刻が迫る中、プレゼンテーション作成の時間配分も考え、各自で進捗戦略を立て、あるところは「〜時までは本体の製作、そのあとはプレゼンテーションの作成」と時間を配分したり、役割分担を行い、プレゼンテーション作成部隊と本隊開発部隊の2チームに分かれるなど、計画的に進めていました。


機体の工夫を説明する様子

途中経過を発表する様子

 

・コンテスト
プログラムの集大成として行われるコンテストでは、プレゼンテーションと走行実演の二部門が行われ、下記の4チームでその合計得点を競い合いました。
・1班 SUPUREME
・2班 CALM
・3班 えりまきトカゲ
・4班 ハヤブサ

審査員は下記5名によって行われました(順不同、敬称略)
・露久保 治彦(ロールス・ロイス ジャパン株式会社 代表取締役社長)
・秋重 幸邦(国立大学法人 島根大学 副学長)
・北川 貴一(次世代たたら協創センター 副センター長)
・小山 大祐(ロールス・ロイス ジャパン株式会社 エンジニアリング&テクノロジーディレクター)
・吉田 一寛(株式会社リバネス 取締役執行役員CRO)

最も合計得点が高いチームには、最優秀賞が授与されます。

<プレゼンテーション>
今回挑戦した英語によるプレゼンテーションでは、エンジニアリングの考え方として重要な機体の開発変遷をデータと共に示すだけでなく、開発機体のコンセプトやビジョンが実現された未来社会についても言及し、自分たちが作ったホバークラフトを審査員にアピールしていました。審査員からは、技術的な質問のみならず、チームワークやアイデアについて様々な質問が飛び交い、発表者と活発な議論がなされました。


参加者のプレゼンの様子

 

また、島根大学の教員が有志で結成した大人チームが飛び入り参加し、研究発表で鍛え抜かれた鋭い考察に裏打ちされたユーモアあふれるプレゼンテーションが英語で展開され、高校生とは異なる研究者視点の発表を聞くことができました。
※大人チームの得点は参考値として扱い、コンテスト対象には含みません。


大人チームのプレゼンの様子

 

<走行実演>
走行実演では、製作したホバークラフトにおもりを載せた状態で、3mのコースを5分間で何回往来できるかを競いました。バッテリーの消耗やモーターの過電圧などによって止まるトラブルが起きても、開発中に得た数値などを根拠にその場で対処するチームも多く、エンジニアリングの感性が芽生えている様子が見られました。
大人チームも機体を製作し、走行実演に参加しました。


走行実演の様子

 

結果は以下の通りとなりました:
・最優秀賞 チーム”CALM”


チーム”CALM”のホバークラフト

 

チーム”CALM”は、どんな時も落ち着いたチームメンバーの人柄をイメージして名付けられました。また、ホバークラフトを平和の象徴としたいという想いからハート型の機体を開発し、圧倒的な走行距離を叩き出し、最優秀賞となりました。

表彰式では、ロールス・ロイス社 小山氏からは、「困難にぶつかったときには考えすぎずに何でも試し、何とかして乗り越えようとすることが大切である」とエンジニアとしての心構えについて伝えました。島根大学 服部氏からは、「うまくいかないときに、なんでだろうと諦めずに考え続けることで、いつか解決できる。一緒に頑張ろう」と参加者の将来についてエールを送りました。ロールス・ロイス社 露久保氏からは、「日本と関わりの深いロールス・ロイスを知ったみなさんに、次はエンジニアとしてまた会いましょう」と期待を込めて激励を送り、本プログラムを締めくくりました。

 

参加した生徒からの声:
「なかなかホバークラフトが進まず、苦労しつつもわくわくしながら開発したことが印象に残った」
「チームの人と仲良くなれるか不安だったけど、すごく楽しかった」
「今まで一から他の人とチームを作ってものづくりをする機会が少なかったので良い経験になった」
「僕たちは他のチームと比べ、実験回数が多かった。回数を重ねるほど良い物ができたと思うので、実験は大事だと思った」
「エンジニアはあせりや不安をすごく感じる仕事でもあり、良い結果を出した時のうれしさは何にも変えられないと思った」
「技術ばかりが必要なイメージがあったけど、発想力もすごく重要だと分かった。今回とても楽しかったのでエンジニアという仕事に興味が湧いた」

 

本プログラムでは、参加した高校生がロールス・ロイス社員と関わることで、エンジニアリングの考え方やチームワークの大切さを学び、エンジニアという仕事の理解を深める機会を提供することができました。
リバネスでは、最先端の科学やものづくりのアイデアを用いた実験教室を様々な学校や学年を対象に実施しています。ご興味のある方は下記問い合わせ先までご連絡ください。

 

【本件に関するお問い合わせ】
株式会社リバネス 岸本・秋永
メールアドレス:[email protected]
TEL:03-5227-4198

 

【本実験教室概要】
日時:2019年10月5日(土)・6日(日) 両日ともに9:00-18:00の時間帯に実施
場所:国立大学法人 島根大学
対象:高校生 17名
実施テーマ:オリジナル・ホバークラフトの開発