アサヒ飲料株式会社・株式会社リバネス、CSV活動が社員に与える心理・行動的影響に関する共同研究を実施

アサヒ飲料株式会社・株式会社リバネス、CSV活動が社員に与える心理・行動的影響に関する共同研究を実施

アサヒ飲料株式会社と株式会社リバネスでは、社会心理学者 正木 郁太郎氏(東京女子大学 専任講師)とともに、アサヒ飲料社におけるCSV活動(CSV=creating shared values)が同社の社員にどのような影響を与えるのかに関する共同研究を実施しています。
アサヒ飲料は、「三ツ矢」「ウィルキンソン」「カルピス®」と3つの100年ブランドを持つ日本で唯一の飲料会社であり、CSV活動を次の100年を担う将来世代に対する未来へのギフトと位置づけ、全社をあげて取り組んでいます。
リバネスは、同社のCSV活動のうち「サイエンスキャッスル研究費」、「カルピス®こども乳酸菌研究所」、「三ツ矢サイダー水の未来と環境教室」等の企画開発や実施などに携わってきました。これらの活動を通し、CSV活動に参加した社員が「仕事の意義を改めて見出した」、「この会社で働くことを誇りに思えた」など、ポジティブな影響を及ぼすことが、現場において経験的に認知されていました。この変化を今回、インタビュー調査ならびにアンケート調査を通じて、社会心理学的に可視化することを目指しました。

方法
調査対象 アサヒ飲料株式会社の研究部門を対象として、予備調査(インタビュー調査)と本調査(アンケート調査)を実施しました。予備調査では、13名の社員に対してインタビュー調査を行いました。本調査では、ウェブ上から質問紙に任意で回答する形式で実施し、最終的に97名が回答し(回収率約87%)、平均年齢は39.14歳でした。

変数
以下の項目などについて調査を実施しました。
CSV活動参加(参加数):アサヒ飲料株式会社で過去数年以内に実施されたCSV活動16を個具体的に挙げ、自身が参加経験があるものを複数選択で回答
ワークエンゲイジメント:仕事に対してポジティブな感情を持ち、充実している状態
プロアクティブ行動:先々の特に環境に変化を起こすことを目指して自ら起こす行動
仕事の意義の知覚:自分の仕事が意義深いもので社会に良い影響を与えることができると感じる、また自身の仕事に働く意味を見出すこと
会社のCSV貢献の理解:自社がどの程度CSV貢献ができているか、またそのことを自分自身がどの程度理解しているか

結果
CSV活動参加数は、仕事の意義、CSV貢献理解の両方に統計的に有意な正の効果を持っていました。また、ワークエンゲイジメントに対しては仕事の意義の知覚を介し、プロアクティブ行動に対しては会社のCSV貢献の理解を介して、統計的に有意または有意傾向の正の間接効果がみられました。
また、これらの効果を高めやすいCSV活動の特徴を探索したところ、社会貢献性が感じられる、参加者や関係者等からのフィードバックがある、能動的に関わることができる、社員同士の交流がある、等が示唆されました。

考察・今後について
分析の結果は単一企業の横断調査から得られたものであるという限界はありますが、少なくともCSV活動への積極的参加とワークエンゲイジメントやプロアクティブ行動の間には正の相関関係があることが明らかとなりました。CSV活動参加は仕事の意欲や主体性と深く関わることが指摘できるほか、CSV活動は参加した社員のワークエンゲイジメント等を高められるといったような因果関係の存在を明らかにできれば、CSV活動はブランディング的な価値だけでなく、社員の仕事のやりがいを高め、多種のさらなる主体的行動を促す点で、人材開発上の価値もあると考えられ、ひいては人的資本経営にもつながる知見となる可能性があります。

※本研究成果は、2023年9月2日3日に実施される産業・組織心理学会第38回大会にて発表される予定です。

関連資料:
「社会をよくする」を通じた人づくり・組織づくり〜ワクワクする職場を目指して〜<2023年開催・超異分野学会大阪大会ダイジェスト>
本研究に関わった企業担当者・大学研究者の現場の声をまとめています。

<本研究に関するお問い合わせ>
株式会社リバネス ひとづくり研究センター 立花([email protected]