本への「熱」と科学技術への「熱」が融合するとき3:株式会社フライヤー代表取締役CEO 大賀 康史さん

本への「熱」と科学技術への「熱」が融合するとき3:株式会社フライヤー代表取締役CEO 大賀 康史さん

maru-ohga

リバネス丸幸弘の「熱」×「熱」対談、第一弾は株式会社フライヤーの大賀社長です。今回はその最終回、3人の「熱」が起業へと結びついた瞬間をお届けします!

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1−3 3人の「熱」が起業へと結びついた瞬間

:フライヤーの事務所にもお邪魔しましたが、たくさんの本がうずたかく積まれて、社員がひたすら読書をしている。一見、仕事をしているようにはみえず、まるで喫茶店のような雰囲気で、本当に楽しそうでした。

大賀:大好きな読書を仕事にできて、とても幸せなんです。起業をしたメンバー3人も同じで、すばらしい本や、新しいアイデアが思いついたら、その瞬間、ディスカッションが始まります。

:大賀さんも私と同じ理系なんですよね?

大賀:機械工学系の修士を修了しました。そのときの私の「熱」は、本ではなく、「世界のエネルギー問題」でした。いつか枯渇するものを、ほうっておけなかったんですね。それで、大学時代に専門だった機械工学関係、とくにエンジンやガソリンの流体力学の研究経験を活かして、最初は自動車メーカーに就職するつもりでした。しかし、研究の過程で最先端の世界を知るうちに、ガソリンエンジンはいずれなくなり、いずれはすべて電気になるという未来を確信してしまったんです。実際今、電気自動車がどんどん増えている。そう気づいた瞬間、自分がこれまで専門としてきた機械工学、ガソリンエンジンの研究者として生きていくことはやめました。

:それで、コンサルの道に進んだんですね。

大賀:コンサルの仕事は10年やっていました。もともと、知的好奇心が刺激されること、仲間とチームを組んで取り組むことが好きでした。学生時代を振り返ると、思い起こされるのは、サークル活動や研究などで、チーム一丸となって動いたことばかりなんです。それはコンサルの会社でも同様で、チームをくみ、クライアントのためにクライアントの社員以上にその会社のことを調べ上げる。この知的好奇心+チームという組み合わせが自分にあっていました。とくに、事業が立ち行かなくなった企業の再生に関われたことはとても勉強になりました。人を観察し、動かない人をどう動かしていくか、インセンティブをどうすければよいか。そればかりを考えていました。

:やはり人なんですね。

大賀:しかし、10年間従事し、ある程度仕事もパターン化してくると、知的好奇心の刺激、という点で、物足りなくなってきたことも事実です。もちろん、どんな仕事でも学ぼうと思えばいくらでも学ぶことはあるとは思いますが。そんなとき、転機が訪れました。きっかけは、同期3人とのおしゃべりだったんです。3人とも「本」が好きで、読書の文化をもっともっと、ビジネスパーソンに広げれば、きっと良い影響がでるだろうと思ったのです。とくに、企業の人材育成に、良質な書籍は欠かせないと、コンサルの経験から確信していました。3人の意見が一致したとき、当時勤めているコンサルティング会社は辞めて、起業をしようと決めました。3人がそろって退職したのは、そのあとたった1週間後でした。

:それが昨年のことなんですね。

大賀:私は社長をやりたかったわけではないですし、会社をつくりたかったわけでもありません。儲かることをしたかったわけでもありません。ただ読書のすばらしさを世の中に伝えたかった、目指す社会のかたちがみえたから、仲間と一緒に起業しました。

:まさに本への「熱」がフライヤーをつくったと。

大賀:でも今、出版業界は斜陽といわれていて、なぜこの儲からない業界にベンチャーとして参入したのかと、よく問われます。ベンチャーだったらもっと儲かることをやれ!と。

:リバネスも設立当時はそうでした。学校への出前の実験教室なんて儲からない。だって学校って基本、お金ないじゃないですか。どう考えてもビジネスモデルは崩壊していました。でも「儲からない」とか言われると逆に「絶対ものにしてやる!」と思って、奮起しちゃいますよね。他の人がやらないことにチャレンジすることが大切だと思うんです。他の人がすでにやってたら面白くない。研究でもそうじゃないですか、世界初の発見がないと論文はかけないわけですから。

大賀:リバネスの初年度の売上が128万円で喜んだ!という話は、他のベンチャーにとって希望ですよ。それで12年間も続いている。やっぱりキャッシュフローって、経営者の一番の頭痛の種じゃないですか。

128万円でも「行ける!」と本気で思って口に出していれば、投資家も「あ、この会社行けそうだな。」と思うものですよ!

大賀:自分がイメージしたものに、現実がついていくんですね。

:そうです、そうです。

大賀:リバネスの事例を知ると、勇気が出ます!

:またディスカッションしましょう!

おわりに…
フライヤーとリバネス、サービスの内容は異なりますが、そこにある理念や文化には、とても近しいものを感じました。両社とも「熱」から生まれた会社だと言って過言ではないと思います。これからのビジネスのヒントが、ここにあるような気がしました。(取材者)

リバネス丸幸弘の本…フライヤーでは丸の著書の要約も読めます! http://flierinc.com/