「総合的な探究の時間」の実施事例と評価手法の紹介
学習指導要領の改訂により、2022年度から高等学校で「総合的な探究の時間」が始まりました。教科の垣根を超えた教育指導が必要となり、また、「探究」について指導する上で学校教員が必ずしも研究経験があるわけではなかったりと、これまでと大きく異なる教育手法が求められ、学校現場も対応に追われています。そんな中、リバネスでは手探り状態で探究の授業に尽力する先生方から多くのご相談をいただいています。
そこで、リバネスが企業や大学などと連携して学校と取り組む「総合的な探究の時間」に関連する取り組みの事例と、その成果をどのようにして定量的に可視化して評価する手法、そして科学教育に関わる最新情報などを掲載した学校教員向けに配布している冊子の紹介をします。
「総合的な探究の時間」とは
「総合的な探究の時間」は、2022年度から開始された高等学校学習指導要領の改訂に伴い導入された新しい指導科目です。この科目は、従来の「総合的な学習の時間」を発展させた形で設計され、社会の急速な変化に対応できる力を育成する必要性から生まれました。
高校1年次から3年次まで実施されるこの時間では、各学校が創意工夫を生かした独自のカリキュラムを設定し、教科の枠を超えた横断的・総合的な学習を行います。その主な目標は、探究の見方・考え方を働かせ、自己の在り方生き方を考えながら、よりよく課題を発見し解決していく力を育成することです。さらに、生涯にわたって探究を継続できる力を養うことも重要な目的とされています。
- 具体的には以下のような探究の過程に沿った学習の設計が必要とされています。
- 【課題の設定】体験活動などを通して、課題を設定し課題意識をもつ
- 【情報の収集】必要な情報を取り出したり収集したりする
- 【整理・分析】収集した情報を、整理したり分析したりして思考する
- 【まとめ・表現】気付きや発見、自分の考えなどをまとめ、判断し、表現する
- 【振り返り】学習の過程を振り返り、次の学習に生かす
「総合的な探究の時間」の実施事例
リバネスでは、主に企業とともに中学生・高校生を主な対象とした教育プログラムを開発し、未来の仲間づくりの一環として、学校現場へ提供してきました。ここでは、学校現場における探究活動や、科学部等の部活動に活用いただいているリバネスと企業の取り組みについて、「総合的な探究の時間」に関連する実施事例としてご紹介します。
実験教室
株式会社リバネスは、創業から22年間にわたり、サイエンスとテクノロジーのおもしろさを伝
える出前の実験教室を提供しています。「身近なふしぎを興味に変える」をコンセプトに、プログラムを通じて研究者的な考え方に触れてもらうと同時に、一人一人の生徒に「それまでは知らなかった新たな世界のとびらが開く」という体験を設計します。「総合的な探究の時間」の一環として、生徒らが探究活動を開始する前のイントロダクションの機会に活用いただき、研究経験をもつリバネススタッフが研究活動への興味喚起を促し、研究サイクル(疑問→仮説→検証→考察)を体験を通して学んでいただいています。
詳しくは「出前実験教室」「【創立記念特別実施】2024年度の出前実験教室実施校を募集中」のページをご覧ください。
「ゆめちから」栽培研究プログラム
「ゆめちから栽培研究プログラム」は研究に初めて挑戦する中学生を対象に行っているプログラムです。北海道で生まれた国産小麦「ゆめちから」をそれぞれの学校にてプランター栽培し、収穫量やタンパク質含有量が多い高品質な小麦を栽培するために、生育状況の観察、データの分析、実験を行い、最適な栽培方法を研究していきます。この取り組みは、敷島製パン株式会社とともに2012年から始まり、のべ341校、44都道府県の学校が参加しています。
詳しくは「「ゆめちから」栽培研究プログラム」、これまでの参加校については「これまでの参加校一覧」をご覧ください。
TASUKI -襷- Project
「TASUKI -襷- Project」は、中学生・高校生を対象とし、次世代が水圏の生物多様性評価に挑戦するプロジェクトです。東京湾につながる河川・琵琶湖をフィールドとし、普段触れる機会の少ない環境DNA技術を取り入れながら採水サンプルからの網羅的な生物種解析を行っていきます。このプロジェクトを通して、多様な生き物たちが生息する地球環境の現状と人間社会とのつながりを探究することで、自然の豊かさに気づき、行動することのできる次世代を育むことを目指していきます。
探究の授業で、少人数グループで動いている場合や、探究の授業や科学部等の活動で研究初心者チームの取り組みとしてご活用いただけます。詳しくは「TASUKI -襷- Project」のページをご覧ください。
サイエンスキャッスル研究費
サイエンスキャッスル研究費は、独創的な研究に情熱を注ぐ中高生を支援する助成制度です。
2012年に教員の要望から始まったこの取り組みは、生徒たちに発表の場を提供するだけでなく、専門家による指導や研究コーチと少額の資金助成をすることで、これまで諦めていた研究や、思いつきもしなかった研究に漕ぎ出せるよう背中を押しています。探究の授業で始まった生徒の活動や、授業の枠を飛び出して生徒が活動する際に、個別に支援する取り組みとなります。
詳しくは「サイエンスキャッスル研究費」のページをご覧ください。
評価手法の紹介
学習指導要領の改訂により、2022年度から高等学校で「総合的な探究の時間」が始まり、学校現場では探究活動をはじめとする新しい取り組みが求められています。
その一方で、それらの取り組みの成果を測定する指標がこれまでは存在しなかったため、その成果をどう判断すれば良いのか、手探りの状態が続いています。
リバネス教育総合研究センターでは、2018年から、社会心理学者の正木郁太郎氏と共同で研究を重ね、学力偏差値では表せない学びを定量化することを実現しました。
主体性や学びに向かう力「ワクワク」見える化
探究活動や行事を含めた学校の様々な取り組みが、 生徒たちの行動や考え方にどのように影響しているかを可視化することができます。
リバネス教育総合研究センターでは、心理学研究者や学校教員と連携し、子ども達の「ワクワク」から生み出される自発的な行動こそが主体的な学びを生み出し、革新的な価値を創造できる人材成長のの鍵になると仮説を立て、2017年より教育現場と協力して、児童生徒の自主性や行動促進に関連する要因と介入方法に関する研究を行っています。
この研究から得られた知見を基に作成した質問項目を活用し、各学校での生徒の特性、教師との関係性、学校環境などを数値化する指標を開発し、各学校の状況を客観的に評価することが可能になりました。
詳しくは「探究活動などの効果の可視化「ワクワク」見える化サービス」のページをご覧ください。
また、2024年9月6日(金)に熊本城ホールで行われた日本心理学会第88回大会のセッションで発表された内容の書き起こしは「リバネス教育総合研究センターのワクワクについて発表しました」をご覧ください。
導入の事例
・生徒の特性を把握した上で、学校の独自カリキュラムの効果を可視化(調査対象:中学校2年生、3年生全生徒合計 280名)
・学校全体の研究活動の取り組みのブラッシュアップのための取り組みのばらつきを可視化(調査対象:高校1年生、2年生、3年生全生徒合計 829名)
学校教員向け冊子「教育応援」
全国の先生へ新しい科学教育の情報を届けたい
冊子「教育応援」では、中高生の研究活動を支援すべく、大学や企業による研究紹介や先生方の参考になる科学教育に関わる最新情報、他校での取り組み事例の紹介など、情報提供を行っています。中高生向けの研究費募集や、学会の大会情報なども掲載していますので、探究活動や部活動での研究指導や日頃の授業での話題、学校の取り組み方針検討にぜひお役立てください。
<冊子概要>
発行部数:1.6万部
発行:年4回(3・6・9・12月)
配布:全国の中学校・高等学校へ無料のサンプル配布、取り寄せを登録している教員への配布
大きさ:A4変型判
- 主な内容:
- 企業や大学の研究者取材記事
- 学校教員による研究指導、カリキュラムの実施事例
- 中高生のための学会 サイエンスキャッスル大会情報
- サイエンスキャッスル研究費の申請募集、採択情報
- 企業と取り組む研究体験プログラムへの参加募集
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教育開発事業部
部長
齊藤 想聖