「私たちは世界初」。研究の醍醐味を高校生へ【沖縄県立開邦高校】

「私たちは世界初」。研究の醍醐味を高校生へ【沖縄県立開邦高校】

沖縄県内でもトップクラスの進学校である沖縄県立開邦高校。科学作品展で入賞するなど課題研究が盛んに行われている学校だ。課題研究の授業では、理数科の2年生を対象に先生1人につき2〜5の研究プロジェクトを受け持っている。自らの研究経験を活かして生徒に向き合っている宮城仁志先生にお話を伺った。

研究テーマは教室の隅に

現在、生徒と行っているのが、「オキナワコカブトを用いた甲虫類の生活環のモデル化」の研究だ。身近な昆虫にもかかわらず、基礎的な情報が解明されていないオキナワコカブトの生活環を明らかにし、甲虫のモデル生物としての活用を目指している。将来的には沖縄の希少種ヤンバルテナガコガネなどの甲虫類の生態を明らかにすることにつながると宮城先生は話す。この研究は、ある生徒が教室の隅で頭部がないオキナワコカブトを見つけたことから始まった。その生徒は図書館の図鑑でこの昆虫について調べようとしたが、非常に情報が少なかったため、自分達で飼育し研究を始めることにしたのだ。この何気ない疑問から始まった研究は、現在、生物室で約70匹のオキナワコカブトを飼育するまでになり、成長や繁殖に関するデータを取りながら解析を行っている。生徒たちは、自主的に餌やりや飼育箱の清掃を行い、毎週の体重や体長の測定においては、より正確により早く測る工夫を続けている。

自らの研究経験が土台

宮城先生は、「教師になるためには、学生時代に様々な研究手法を経験することが重要だ」と考え大学院に進学した。そこではイネに関する研究を通し、穂の大きさを測る形態調査から肥料の効果を測る試験、プロテオーム解析などの分子生物学的実験まで様々な手法に挑戦し研究者のネットワークも広げた。この研究経験が現在の課題研究の指導の土台になっている。生徒たちから出る様々な疑問に答え多様な興味関心を伸ばすために、手軽に調べることができる形態調査・生態調査から遺伝子やタンパク質の動態を扱う分子生物学的な実験まで幅広い実験計画を組み立て、自らの経験とネットワークで生徒の好奇心に応えられることが、宮城先生の強みなのだ。

高校生が楽しむ、世界で唯一の研究

「課題研究は自由な発想ができるのが面白いので、生徒と遊んでいるような感覚。研究成果を求めるのではなく、課題研究を通して生徒が将来役立つものを、何か1つでも身に付けてほしい」と宮城先生は話す。研究チームの生徒は「オキナワコカブトについては図鑑よりも詳しい情報を、私たちは持っています。世界中で私たちだけ、そこがすごく面白い」と話す。研究には、地道な実験を繰り返した人だけ味わうことのできる喜びや、「世界一」の興奮がある。宮城先生が自ら体験したからこそ伝えることができる、研究の醍醐味だ。大学の研究室と同じように開邦高校でも、先生から生徒へ研究の面白さは確実に伝わっている。