魔法使いになれる部屋!?|梅田 和昇

魔法使いになれる部屋!?|梅田 和昇

中央大学 理工学部 精密機械工学科 教授

指をパチンと鳴らせば,ほうきが掃除をしてくれる。映画のように,自分が動かなくても思ったことを実現できてしまう魔法が実現したら……。中央大学の梅田和昇さんが開発する「インテリジェントルーム」では,そんな魔法もお話の世界だけではなくなるかもしれません。

20××年の君の部屋

「あの番組を見たい!」と急いで戻ってきたのにリモコンが見つからない!そんなときでも,未来の君の部屋では大丈夫。テレビのある方を指させばスイッチオン。君は動かずして見たい番組が見られます。ここでは,環境や空間そのものがロボットなのです。人のサインを読み取り,人に代わって操作することで,便利な生活を実現しようという「インテリジェントルーム」の研究がつくる,未来の君の部屋です。

君のサインを見逃さない!

では,どうやって自分の意思を示して,家電を動かすのでしょう。梅田さんの研究のユニークな点は,この「ロボットと人との意思の伝達」のしくみにあります。カギとなるのは,部屋の目となるカメラの存在です。梅田さんは,カメラで撮った映像で特定のものを見分けたり,認識したりする「画像処理」の研究者。インテリジェントルームと人との意思伝達に「視覚」を用いることにしました。インテリジェントルームのどこにいても,カメラは手を振っている人を見つけてくれます。わざと画像を粗くした,複数台のカメラが,空間を色々な方向から撮影し,データは常にコンピュータに取り込まれています。手振り,すなわち周期的に動く点がカメラに映ると手を認識します。そのカメラはその区画に向かってズームアップし,指の方向や数をとらえることができるようになるのです。誰でも簡単にできる「手を振る」という動作から人を見つけるという方法で,人の意思の読み取りに成功しました。

これも,あれも実はロボット!?

研究のきっかけは,空間の中の点滅を検出する技術の発明でした。「得意な技術を活かし続けていたら,今の研究に行きつきました」。今後,自動車など空間が人の意思表示を読み取って動いてくれる製品が多くつくられることでしょう。これらもロボットのかたちのひとつ。未来のロボットは,実は小さなひらめきから生まれるのです。未来の部屋に,実は自分のひらめきがかくれている,なんて考えたら,わくわくしませんか。(文・環野真理子)

梅田 和昇(うめだ かずのり)プロフィール:

中央大学 理工学部 精密機械工学科 教授。1994年東京大学大学院工学系研究科精密機械工学専攻博士課程修了。博士(工学)。中央大学理工学部精密機械工学科専任講師を経て,2006年より現職。画像処理による空間認識を研究している。