シロイヌナズナとミヤコグサの種が宇宙へ!

シロイヌナズナとミヤコグサの種が宇宙へ!

『リバコミ!宇宙特集』では、過去に宇宙へ行った様々な生き物たちについて紹介してきました。1957年、初めて宇宙に行った生き物「イヌ」から始まり、「リスザル」、「チンパンジー」、「ネズミ」、「モルモット」、「ヒョウガエル」、「ヒト」、「ハエ」、「コマユバチ」、「リクガメ」、「ニワトリ」、「メダカ」、「カイコ」、そして昨年、宇宙へ行った「クマムシ」。昆虫から霊長類まで、また、生長段階も受精卵から成体までと、実に多種多様な生き物たちが宇宙へと旅立っていたのですね。

これらの生き物は、私たち人類にとって大変有益な情報を宇宙から届けてくれました。なぜなら、苛酷な宇宙環境が生き物にもたらす影響を知ることは、人類が宇宙へとその生活の地を広げようとする夢の実現のためには、欠かすことのできない大事な一歩だからです。 連載を続けてきた宇宙特集も、今回がいよいよ最終回。最後にここで登場するのは、2008年11月14日19時55分(日本時間では15日の朝9時55分)、つまりもうすぐケネディ宇宙センターから宇宙へ旅立とうとしている生き物です。それは、2種類の植物、「ミヤコグサ(Lotus japonicus)」と「シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)」の種です!

宇宙教育プロジェクト、ついに本格始動!

シロイヌナズナとミヤコグサは、共に日本でも見られる植物です。シロイヌナズナは小さな白い花を咲かせるアブラナ科の植物、ミヤコグサは小さな黄色い花を咲かせるマメ科の植物です。なぜ、このようなかわいらしい植物が宇宙へ行くのか、不思議に思われた方もいるでしょう。
2つの植物の種が向かう先は、はるか400km上空に浮かぶ国際宇宙ステーション(ISS)、ここに設置されている日本の実験棟「きぼう」です。これからの約半年間、種はこの「きぼう」の中に大事に保管されるのです。そして来年の5月、再び地球に戻ってきます。つまり、種は半年間にわたって宇宙環境に置かれることになるのです。
この宇宙から戻ってきた種は、なんと全国の高校に配布されます。そして、それぞれの学校で高校生のみなさんに種から植物を育ててもらい、その過程の中で、宇宙環境が種にもたらす影響を調べるのです。この壮大な試みは、宇宙教育プロジェクトとして日本の宇宙開発を担うJAXA(宇宙航空研究開発機構)と最先端科学教室を行ってきたリバネスが協力し、様々な企業の協賛を得て、来年から実行されようとしています 。このプロジェクトの貴重な実験材料として抜擢されたのが、現在モデル植物として世界中の生物学研究に使われているシロイヌナズナとミヤコグサの種だったのです。

宇宙にいった種はどうなるだろう?

植物にとって、「種」は一生の始まりです。生きる上で必要となるすべての遺伝情報と栄養分をその細胞内に蓄え、周囲の環境に対する強い抵抗力を持って、これからの一生を始める準備をしています。つまり、寒冷や乾燥の時期など自身が成育できないような環境にあるときには種の状態で過ごし、水分、温度、光、酸素といった環境が適切な状態になると、発芽を始めるのです。
それでは、このような状態にある種が、宇宙へ行くとどうなるのでしょうか。そこには、発芽に必要な適切な量の水分、温度、光、酸素はありません。むしろ、無重力、高真空、そして宇宙放射線が飛び交うといった、種にとってはとても過酷な世界が広がっています。もしかしたら、このような宇宙環境が、地上では考えられないような影響を種にもたらすかもしれません