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電子を調べて、物性の本質を探る 今田真

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理工学部 物理科学科 今田真 教授
理工学部 物理科学科 今田真 教授

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理工学部 物理科学科 今田真 教授

固い物質ややわらかい物質。力をかけるとポキリと折れるもの,ぐにゃりと曲がるもの。世の中にはさまざまな物質がありますが,その性質はどのようにしてつくられるのでしょう。今田先生は,物質内部の電子の状態を調べることで,性質を決める根本的なしくみを解き明かそうとしています。

今田先生

精密機器は温度管理が命

半導体を製造する機械など,現在世界中で活躍している精密機器は,厳重な温度管理のもとで使われています。さまざまな部品を組み合わせてつくられているため,ちょっとした温度の違いで起こる熱膨張によって部品同士の噛み合わせが悪くなってしまい,動作に大きな影響を与えてしまうのです。「もし温度が変化しても体積が変わらない物質ができれば,今ほど温度管理を徹底しなくても,もっと精密な加工ができるようになります。空調を使わなくて済むため,省エネにもつながるでしょう」。今田先生の研究成果から,そんな夢の素材が生まれるかもしれません。
世の中に存在する物質の多くは,温度が上がるとともに体積が大きくなっていきます。しかし,温度が上がると体積が小さくなる(負の熱膨張率を持つ)ものもまれに存在します。研究対象としているMn3XN(逆ぺロフスカイト型マンガン窒化物。XはGa,Zn,Cu,Fe,Geなど)もそのひとつです。このMn3XNは,Xが銅(Cu)のときは温度上昇とともに体積が大きくなりますが,銅とガリウム(Ga)が半分ずつ入ったMn3Cu0.5Ga0.5Nにすると,ある温度領域では逆に収縮していくのです。
「Mn3Cu0.5Ga0.5Nは一気に体積が減少します。そのしくみを解明し,徐々に体積が小さくなるように改良する研究が進んでいけば,温度上昇とともに膨張する物質と組み合わせることで,まったく体積が変わらない素材をつくれるはずです」。

電子の性質が膨張率を決める

わずかな原子構成の違いによって熱膨張率の正負が逆転するこの現象には,電子の「スピン」という,磁石のように磁場を発生する性質が深く関わっています。物質によっては,スピンは温度が下がると決まった並び方をします。−127℃以下という低温状態のとき,Mn3CuNは結晶内のスピンの向きが揃った強磁性という状態になっています。一方Mn3Cu0.5Ga0.5Nでは,反対向きのスピンを持つ電子が交互に整列した反強磁性という状態です。これらの温度を–127℃以上にすると,どちらもスピンがランダムに並ぶ常磁性という状態へと変化します。その過程で,もともと反強磁性だったMn3Cu0.5Ga0.5Nは,体積が減少するのです。
今田先生は,なぜ2つの物質が低温で強磁性と反強磁性という異なる性質を持つのか,そしてなぜMn3Cu0.5Ga0.5Nだけが負の熱膨張率を持つのか,電子の状態に注目して調べることにしました。兵庫県の播磨科学公園都市にあるSPring–8という大型装置を使い,電子の持つエネルギー状態を調べたところ,違いの元となるわずかな差を見つけ出すことができました。この観測結果がどのようにして性質の違い,そして膨張率の違いにつながるのか。それを突き止めることが,これからの研究課題です。

「調べられる」ことが研究者の魅力

Mn3XNに出会ったのは5年前,20名ほどで開催された,金属に関する研究会に参加していたときでした。ある研究者が,負の熱膨張を示す物質について発表していました。当時から,金属内部の電子状態とさまざまな性質の関係に興味を持っていた今田先生が声をかけてみると,ちょうど相手も同じように内部の電子状態を調べたがっていたのです。それを聞いて,思わず「よっしゃ!」と心の中でガッツポーズをしたそうです。そんな出会いから共同研究が始まりました。
「ふしぎなものがあって,“なぜだろう?”と疑問を持っても,その根本的な原因まで調べていくのは大変なことです。でも,研究者であれば,専門性を持って興味を深く追及できます」と研究者の魅力を語る今田先生。注意深く見渡せば,私たちの身の回りには,ふしぎなものやできごとがたくさんあります。「何かに興味を持ったら,ぜひそれを追求し続けてほしいですね。そして,研究の魅力を感じてください」。

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