魚醤の高温発酵過程における 微生物叢遷移の解析【宮城県水産高等学校】
水産高校名物、魚醤『宇田川乃露』に潜む微生物を探す
魚醤とは、魚と塩を混ぜて発酵させて作る調味料のこと。日本では、穀醤より歴史が古く、紀元前3世紀頃にはすでに食されていたという記録があります。魚醤を作るうえで最も重要な発酵の過程は、魚自身がもつ消化酵素に加え、酵母・麹などの微生物の働きで行われており、通常は、30℃で約1年かけて熟成させます。一方、同校が作る「宇田川乃露」は、油谷教諭が開発した特殊製法を用います。それは、酵母や麹を加えずに、製造実習の際に発生するサンマの残さに30%濃度の塩を混ぜ、50℃の高温条件下で熟成させ、1ヶ月間という短期間で魚醤が作れるというもの。ひょっとしたら、この発酵過程で働く特殊な微生物がいるのでは?そんな疑問から、未知の研究が始まりました。
『宇田川乃露』の高品質化を目指して
研究のスタート地点は、一般的な製法と水産高校の製法でできた魚醤に何か違いがあるのか?ということ。10月30日に実施した研究教室では、微生物とアミノ酸の解析を進めるべく、温度、塩濃度、酵母の使用条件を振り分け(表1)、6通りの製法で魚醤を仕込みました。これらを1ヶ月間発酵させた後、アミノ酸成分分析にかけてアミノ酸含量を測定します。さらに、発酵の過程において、各魚醤中の微生物の有無を判定するため、1週間ごとに微生物培養用の培地にサンプルをまいてコロニー形成を観察します。果たして、高温高塩濃度で作った魚醤には微生物が存在するのか?!そして、アミノ酸含量の測定結果はいかに?!水産高校の研究はまだ始まったばかりですが、この研究が魚醤の高品質化・高ブランド化の第一歩となります。