ミドリムシから環境に優しいプラスチック!?

ミドリムシから環境に優しいプラスチック!?

「ミドリムシ」といえば、小学校の理科で顕微鏡を通して一度は見た頃があるかもしれません。
べん毛を使って動く動物でもあり、光合成をする植物でもある、ユニークな生き物です。
近年このミドリムシは人間にとって有用な栄養素が豊富に含んでいることや、大量に培養して二酸化炭素の吸収にも活用できると期待され、注目を集めています。ユーグレナ
そして今度は、なんと「プラスチック」を作れる事がわかったのです。
そもそも、プラスチックはなにから作られているのでしょうか。
プラスチックは全世界で年間約2.3億トン(日本では約1300万トン)も作られており、そのほとんどの原料は石油です。
石油を高温・高圧で化学反応させることでプラスチックが作られます。
そのため、発生する二酸化炭素の量や必要なエネルギーは膨大なものになっています。
ところが、産業技術総合研究所とNECで開発したプラスチックはミドリムシを原料とする画期的なものでした。 
ミドリムシはパラミロンという独特の多糖類を体内に作ります。
これはグルコースがβ1-3結合で数百から数千個連なった食物繊維のひとつです。
このパラミロンに、同じくミドリムシから採れる長鎖脂肪酸ミリスチン酸や、食品ゴミとして捨てられる「カシューナッツの殻」から採れるカルダノールを化学反応で付加することで、プラスチックを生成できることがわかりました。
このように、石油でないものからプラスチックを作ることで、二酸化炭素の削減につながります。
それどころか、ミドリムシは逆に光合成によって二酸化炭素を吸収して増殖するため、環境にやさしい生き物としてとても注目されているのです。
誰もが一度見たことある生き物を、興味をもった研究者が何十年も研究した結果、予想を超える成果が出始めているのが「ミドリムシ」(学名:ユーグレナ)です。どんな生き物にも、まだ知らない可能性が秘められているのかも知れませんね。

ミドリムシ研究の第一人者、大阪府立大学の中野長久先生の講演を聞いた事があります。
食糧問題と環境問題の両方を同時に解決できるということを、研究データを元に情熱的に語る姿は、本当に感動しました。ぜひ、多くの人に聞いて欲しいですね。(伊地知 聡)